K馬日記

映画や美術、小説などの作品鑑賞の感想を徒然なるままに綴っていきます。

バイロン・ハワード/リッチ・ムーア『ズートピア』

2017年02月13日 | 映画
こんばんは。新年明けてから仕事がなかなか落ち着かないただけーまです。

今更ですが、昨年公開されたディズニーの『ズートピア』の感想をば。もう遠い記憶だけど。
アカデミー賞の長編アニメーション部門ですノミネートされていましたね。日本からはジブリの『レッドタートル』がノミネートされていましたが、ディズニーはなんと『モアナと伝説の海』もノミネートされてますから、流石としか言いようもありません。




<Story>
『ズートピア』――それは、動物たちが人間のように暮らす楽園ズートピアを舞台に、“夢を信じる”ウサギの新米警官ジュディが、“夢を忘れた”キツネの詐欺師ニックとともに、楽園に隠れた驚くべき秘密に挑むファンタジー・アドベンチャー。(「ディズニー映画『ズートピア』公式サイト」より)


下馬評通りの傑作。メルティングポットからサラダボウルへ、多様性を尊重するとしながらも差別意識の残るアメリカ社会を描いた作品です。
ニックとジュディがかわいらしいのは言わずもがな、性別不明のガゼル(LGBTの象徴?)やナマケモノの公務員、マフィアのネズミに女性蔑視のスイギュウなどなど、魅力的なキャラクターがたくさん出てきます。







公開された当時は初の黒人大統領オバマが任期中でしたが、そのことを踏まえるとこの作品が民主主義の孕む危険性に警鐘を鳴らしているようにも思えます。
まず、ズートピアでは市長をライオン(=肉食動物)が務め、ヒツジ(=草食動物)が副市長の役職についています。なお、その前提として、民主主義によって選出されたという事実があります。
これを当時のアメリカ社会と照らし合わせるのであれば、ライオン=オバマであり、少数派である肉食動物が黒人だと捉えることができるでしょう。肉食動物の方が力は強く身体も大きいが、民主主義によって社会的に統制されている世界。それがズートピアなのです。
数々の肉食動物の失踪事件と相次ぐ暴走という事件は、肉食動物であるライオン市長にも及びます。メディアでの展開に扇動される多数派の草食動物たち。肉食動物たちは冷遇され、引責辞任のような形で市長は失脚してしまいます。代わりに政権を握るのが、か弱い羊の副市長なのですが、実は彼女こそが一連の事件の黒幕。ディズニー・ヴィランズだったのです。



民主主義で勝てないからと、事件を起こして失脚させる。昨年末に観たパトリシオ・グスマン監督の『チリの闘い』を思い出してしまいました。民主主義で選出され続けるアジェンデ政権に対し、何度もブルジョワジーによる運動を誘発させたアメリカ派閥。しかし、それでもアジェンデを支持し続けた民衆。止むを得ず武力蜂起をして成立したピノチェト軍事政権。
扇動されるブルジョワジーと労働者。民主主義の上では、いざこざがあっても大統領を支持する労働者が勝利していました。(武力蜂起を要したかどうかという点で)ズートピアとは対照的な在り方です。

まあ、そんなややこしいことは考えず、普通にディズニー映画として純粋に楽しめる映画ですね。失礼つかまつりました。
あと、ズートピアの住人たちは何を食べていたのかというのも面白い話題ではあるのですが、ジュディのかわいさに触れたらそれももうどうでもいいことですね。



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