K馬日記

映画や美術、小説などの作品鑑賞の感想を徒然なるままに綴っていきます。

ドン・ハーツフェルト『きっと、全て大丈夫』

2016年10月26日 | 映画
先日の友人夫妻の結婚式で、幸せオーラを吸収したただけーまです。

今回も今更ではありますが、ドン・ハーツフェルト監督の 短編アニメーション作品『きっと全て大丈夫』の所感を書かせていただきます。




<Story>
どこにでもいる中年のビルの日常が、ふとした瞬間から少しずつ歪んでいく。彼を蝕む病魔は、ビルに対し、彼の人生、家族との関係、未来の姿について考えさせる。


本作品は主人公ビルを巡る3つの短編アニメーション『きっと、全て大丈夫』『あなたは私の誇り』『なんて素敵な日』から構成されるトリロジーです。
最近は『君の名は。』や『聲の形』『傷物語』など、所謂サブカル系のアニメーション作品が増えてきましたが、本作はファインアート系のアニメーション作品になります。テーマもどちらかというとジブリの『レッドタートル』に近く、人類に遍在する死生観に迫った哲学的な作品のように感じました。



病に侵されていくビルは死と対面し、より深い精神世界(自己洞察のようは語り)へと突き進んでいきます。死は恐ろしいものではなく、死後もビルという存在は生き残り、宇宙が終わるまで世界を永遠に見届けていくという、曼荼羅のような世界観と死者の柱化という仏教的観念が壮大に描かれています。



死に向かうビルの首が取れて、まるで精子(おたまじゃくし)のようになって泳いでいく様は、即ちそのまま輪廻転生の概念を表しているようでもあります。

この人類史的な描写はビル個人のものではなく、人類総じて永遠に生き続けていくことの壮大さをも感じさせます。
冒頭に流れるスメタナの交響詩『わご祖国』は、まさしくコスモポリタニズムを意識したものでしょう。


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