K馬日記

映画や美術、小説などの作品鑑賞の感想を徒然なるままに綴っていきます。

ミシェル・ゴンドリー『グッバイ、サマー』

2017年07月04日 | 映画
最近蒸し暑いですね……不快指数が高まって夏の到来を感じつつあるただけーまです。

今回は、そんな夏にぴったりの映画、ミシェル・ゴンドリー監督の『グッバイ、サマー』をご紹介します。




14歳。子供でもない、大人でもない狭間の時期。画家を目指すダニエルは沢山の悩みを抱えていた。
中学生になっても女の子のような容姿で、クラスメイトからミクロ(チビ)と呼ばれて馬鹿にされており、恋するローラにはまったく相手にされていない。おまけに母親は過干渉で、兄貴は暴力的なパンク野郎だ。誰も本当の自分を理解してくれる人はいない……。
そんなある日、ダニエルのクラスに変わり者の転校生がやってくる。名前はテオ。目立ちたがり屋で、自分で改造した奇妙な自転車を乗り回し、家の稼業のせいで身体からガソリンの匂いを漂わせている。周囲から浮いた存在のダニエルとテオは意気投合し、やがて親友同士になっていく。学校や家族、そして仲間達、みんなが二人を枠にはめて管理しようとしてくる。息苦しくて、うんざりするような毎日から脱出するため、彼らは“ある計画”を考え付く。それは、スクラップを集めて〝夢の車”を作り、夏休みに旅に出ることだった―。(「映画『グッバイ、サマー』公式サイト」より)


思春期のガーリッシュな男の子ダニエルが、一夏の友人との経験を通して成長する青春ロードムービー。
まず一言言えるのは、ショタコン好きは絶対に観るべき作品。ダニエルのとてつもないかわいさはさることながら、思春期男子の初々しい友情に思わず萌えてしまいます。



手作りの小屋型車(謂わば木製キャンピングカー)で旅をするという無茶な設定も、ツッコミどころ満載ながら、少年時代の素朴なイノセンスを象徴するアイコンのようにも感じられます。彼らは「大人の乗り物」を作り、自由に冒険の旅をする。



男子三日会わざれば刮目して見よ、とはよく言いますが、ガーリッシュな男の子が青年へと変わるその「少年性」の尊さをここまで描き切れたのは、この映画の主演を務めたアンジュ・ダルジャンくんの透明なまでの美しさのおかげでしょう。
見目の幼さとは裏腹に、まだ発現してない性欲をその身体に宿す少年という非常に難しい役どころを見事に演じ切っていました。









他人に影響を受けやすい恋愛体質の少年だったダニエルは、友人テオとの(少年にとっては)危険な夏の冒険を経て見事に変身します。
片想いしていたローラに心を振り回される少年は最早そこには居らず、ダニエルは他人に影響を受けないテオの姿勢に学んだのでした。そこに居るのは自らの人生を切り開く青年の卵です。



テオの居なくなった校舎で、ダニエルが堂々とした足並みで肛門を出るラストシーン。そこでダニエルの背中を目で追うローラの心情が、初めて「ローラの主観で」描かれます。
しかし、ダニエルは振り返るよう視線を送るローラの方を振り返らず、足早に校舎から出ていってしまう。少年少女の心のすれ違いを描いた素晴らしい青春映画でした。


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