K馬日記

映画や美術、小説などの作品鑑賞の感想を徒然なるままに綴っていきます。

トム・ムーア『ソング・オブ・ザ・シー 海の歌』

2017年06月27日 | 映画
こんばんは。このところ、異常なほど飲み会が多いただけーまです。誘われている内が花と思ってがんばります。

今回は隠れた名作アニメ映画『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』の感想です。アイルランドの魅力がふんだんに詰まった名作でした。




【Story】
小さなベンは、いつもいろいろなおとぎ話や歌を教えてくれる心優しい母親ブロナーと、父親コナーと共に海沿いにある灯台の家で暮らしていた。赤ちゃんの誕生を心待ちにしていた彼は、ある晩、母に海の歌が聞こえる貝の笛をプレゼントされ、大喜びして笛を抱きしめたまま眠りに落ちる。翌日彼が起きると、妹のシアーシャを残したまま、母の姿はなく……。(シネマトゥデイより)


アイルランドに伝わるシルキーというあざらしの精をテーマにした作品。そのほかにも、精霊ディーナシーやフクロウ魔女マカ、伝説の巨人マクリルなど、アイルランドの伝承がギュッと詰まっていて、特にアイリッシュ音楽が非常に心地よい作品でした。
ビジュアルで想像していた物語より何十倍も良くて、思わずパンフレットを買ってしまいました……くそ〜かわいいっ!!!





人間の父親とシルキーの母親を持つ兄ベンと妹のシアーシャ。ベンは「人間の子」として順調に育つも、シアーシャはシルキーの血が強く、海の呪縛を受け言葉が話せない少女でした。





異類婚姻譚特有の幻想的な構造の中で、ベンは兄として成長し、シアーシャはシルキーと人間の狭間で揺れることになります。種族を超えて互いを思いやる姿に普遍的な家族愛を感じられる、心温まる作品でした。

アイルランドの民謡が物語の重要なキーとなっていて、言葉の話せないシアーシャが民謡を歌い出すラストシーンは圧巻です。あまりにも美しく、思わず見惚れてしまいました。
トム・ムーア監督はジブリにとても強い影響を受けているようで、特にトトロともののけ姫、かぐや姫など、日本の文化に根付いた作品に強い影響を受けたそうです。確かに、マカの両面性のある姿は湯婆婆と銭婆に重なりますし、シアーシャの天真爛漫な動きはかぐや姫を想起させます。





それにしても、アイルランドのシルキー伝説(あざらしの衣を奪った男性と結婚し、取り返すと海に帰るという伝承)と天女の羽衣伝説が非常に似通っていて、異類婚姻譚という文化の普遍性に驚きを隠せないのでした。


最新の画像もっと見る

post a comment