カラヴァッジョ展

絵画史の中でも異端視される画家、カラヴァッジョ。上野の国立西洋美術館にて展覧会が開催されていたので行ってまいりました。
なんと日本にて世界初公開となった幻の作品『法悦のマグダラのマリア』を鑑賞。非常に貴重な瞬間に立ち会えて感激でした。


カラヴァッジョ≪法悦のマグダラのマリア≫

カラヴァッジョと言えば、癇癪持ちの破天荒な私生活で有名(ローマ教皇から死刑判決も受けており、その裁判の記録も展示されていました)ですが、その性格とは一転張り詰めた瞬間を切り取ることに長けている画家です。

ある特定の瞬間を彼が絵画として切り取ると、どういうわけか突然ドラマチックな瞬間になってしまう。特にトカゲに噛まれた青年の絵画は、その最たるものとも言えるでしょう。


カラヴァッジョ≪トカゲに噛まれる少年≫

近い時期でドラマチックな演出が得意なのは、レンブラントやエル・グレコ、ティッツィアーノが挙げられますが、彼らに共通しているのはいずれも光源を巧みに操っていたという点です。
光源には点光源と面光源の二種類がありますが、彼らの絵は点光源による陰影のメリハリがはっきりと表れているのが特徴的です。そして、カラヴァッジョの多用したそういう作風がバロック絵画(レンブラント)やカラヴァジェスキ(カラヴァッジョの追従者、今で言うとアムラーみたいな感じです)へと継承されていくわけですね。
因みに、こうした明暗の強烈なコントラストを利用する手法をテネブリズム、単純な明暗法はキアロスクーロと言うんだそうです。知らなかった…メモメモ。

では、なぜ彼はこうした技法にたどり着いたのでしょうか。それは彼が固執した「ヴァレントゥオーモ(有能な働き手)」という理念に由来します。彼の定義によると、ヴァレントゥオーモとは「上手に事をなす者、すなわち十分にその腕を振るうことができる者」や「上手に絵を描くことができ、自然を見事に模倣できる者」であると、『芸術家列伝』には記載があるようです。
即ち、彼の考えでは「自然を見事に模倣できる」手段こそが、テネブリズムだったのでしょう。単に写実的に描くのではなく、三次元を意識したリアルさ(光源による凹凸など)がこの手法の特長でもあるわけです。

作風も気質も破天荒だった彼は、確かに絵画における大事件と言える存在でしょう。