今月17日霊園契約者さまに夏行事「霊園施餓鬼法要」のご案内をさせていただきました。今回は毎夏、施餓鬼法要と同時に建立いただくお塔婆についての解説文も添えさせていただきました。
◆お塔婆のお話あれこれ
和 田 寺
法事などで故人の霊を供養するために、塔婆(とうば)を建てて回向(えこう)します。回向とは仏事を営みその功徳を故人の霊に廻(めぐ)らすことをいいます。
塔婆(とうば)は別名、卒塔婆(そとば)ともいわれ梵語(サンスクリット語)のストゥパという語を音写したものです。お釈迦さまがお亡くなりになった時、その仏舎利(お釈迦さまのご遺骨)を八等分し、縁の深かった地方に埋葬しその上に大きな塔(ストゥパ)を建ててお釈迦さまを供養したのが塔婆の起源とされています。お釈迦さまのご遺骨が舎利(シャリーラ)とよばれていることからストゥパを舎利塔(しゃりとう)ともよばれます。
その後、次々に塔を建てて供養することが行なわれ、インドの阿育王(アショーカ王)は、八万四千の塔を建立したと伝えられています。タイ・ビルマ・中国・日本等では種々の経典(法華経など)に基づく多宝塔(たほうとう)・相輪橖(そうりんとう)や宝筐印塔(ほうきょういんとう)、五輪塔(ごりんとう)など様々な様式の塔が造られました。日本各地の寺院に見られる三重の塔や五重の塔もこのお釈迦さまのストゥパ、舎利塔に起因しています。すなわち、ストゥパという発音の変化形が塔、塔婆(卒塔婆)になったといわれています。
また、日本で一般に塔といえば、五輪塔のことをいいますが、五輪とは「地輪」「水輪」「火輪」「風輪」「空輪」のことをさし、
それは「大地が一切のものの依り所」であるように、
仏の智慧もまた衆生(しゅじょう:生きとし生けるもの)の依り所に
なり、
「水が清涼で暑さに苦しむ者の熱悩を取り去る」ように、
仏の智慧も衆生の苦悩を除き、
「火がすべての薪を焼きつくす」ように、
仏の智慧も一切の煩悩という薪を焼き滅ぼし、
「風があらゆるものを吹き飛ばす」ように、
仏の智慧も衆生の煩悩を吹きはらい、
「虚空(大空)が何者にもとらわれない」ように、
仏の智慧も一切のはからいを超越して、何者にもとらわれず自由自在
であることを象徴しています。
つまり、五輪(五大/ごだい)は仏の悟りの内容を譬喩的に説明したものです。
また五輪(五大)それぞれは形で表されています。「地大」を方形、「水大」を円形、「火大」を三角形、「風大」を半円、「空大」を宝珠形で象徴し、下から「地水火風空」と積み上げたのが五輪塔や塔婆です。五輪石塔や塔婆の先端をご覧いただくと形の特徴がよくわかります。
また、仏の智慧そのものを「識大/しきだい」としてこれを加えて「六大/ろくだい」という場合もあります。このことから五輪塔や塔婆を建てるのは仏像を造るのと同様に尊いこととされています。敬虔(けいけん)に礼拝、供養致しましょう。合掌【参考図書】「わが家の宗教 天台宗」(刊 大法輪閣) ※ ご案内文書(施餓鬼法要及び塔婆について)は宗旨・宗派を問わずご案内させていただいております。文面につきある契約者さまから信仰宗派では塔婆の建立しないのに今回案内をいただいたのはいかなる理由によるものですかとの問い合わせがございました。当寺からの案内は有志の方の申し込みを募るもので施餓鬼法要の申込み、塔婆の建立についても強制するものではないことをご理解下さい。合掌