暑い夏に美味しい冷涼和菓子、わらび餅。
柔らかくてもっちりしていて、ぷるぷるした独特の食感、
香りも味もほんのり甘く、冷やして食べると美味しさ倍増。
きな粉や黒蜜をトッピングして、さらに甘みを増してもいい。
スーパーなどでよく見かけるわらび餅。
これらは、わらび餅といえど・・・。
わらび餅の主原料は、わらび粉。
あの春の山菜として有名な、わらび。
そのわらびの地下茎に含まれる澱粉を精製して作られるのが、わらび粉。
シダ植物のわらびは、地下に数十メートルにも及ぶ地下茎を張り巡らせる。
それを掘り起こし、とてつもない手間暇かけて澱粉が精製される。
しかも数十キロの地下茎から、たった数百グラムのわらび粉しか作れないという。
古来より貴重なタンパク源としてわらび粉は重宝された。
ワラビ
右:福岡県行橋市 馬ヶ岳城址にて
左:福岡県嘉麻市 益富城址にて
そんなわらび粉から作られた、わらび餅。
平安時代より貴族に愛されてきた。
醍醐天皇も好物だったとか。
冷蔵庫などない時代に、夏に涼を呼ぶお菓子。
しかも貴重なわらび粉で作られており、
到底 庶民が口にできる代物ではなかったろう。
わらび粉の含有量によって値段が変わる。
風味や食感もガラリと変わる。
同じメーカーが製造・販売していても、
わらび粉の含有量でまったく別の形状に。
値段もまったく違う。
わらび餅が現代の我々が食べている形になったのは、江戸時代に入ってから。
本来、わらび粉のみで作っていたのだが、葛粉を混ぜて作られるようになった。
葛粉は、マメ科の植物、クズの根から作られる澱粉。
くず餅やくずきり、くず湯の材料となるあの粉だ。
これで色が白っぽくなり、より弾力が増した。
原料も安くなり、一般庶民も味わえるようになった。
わらび粉が含まれると、色が濁る。
さらに時代は進み、現代のわらび餅。
わらび粉はほとんど使用されず、寒天に澱粉を混ぜて作られるものがほとんど。
その澱粉も、わらびや葛由来ではなく、サツマイモやキャッサバ(タピオカ)が使用され、
透きとおった透明でプルップルの、実に涼しげなわらび餅に。
きな粉や、黒蜜をかけて食べる。
よくスーパーなどで売られている透明なわらび餅。
100円前後と値段も安い。
わらび粉は使用されていないことがほとんど。
もちろん、本来の主原料であった、わらび粉を使用して作られている商品もあるが、
わらび粉100%の、わらび餅には出会うことはできない。
奈良や京都の限られた店舗で、ごくわずか作られているらしく、
すぐに劣化するため、賞味期限も短く、
わらび粉の特性から、冷蔵保存も冷凍保存もできないため、
本当の作りたてしか供されないという。
色も透明ではなく、黒ずんで澱んだ色をしている。
そして、何よりも値段が凄いという・・・。
和三盆を使用したわらび餅。
香川県高松市の和菓子屋さんから取り寄せた。
化粧箱に入れられているかのような梱包で、桶状の容器に入れられた、見た目も豪勢なわらび餅。
きな粉が添付されていたけれど、そのままで充分美味しくって、そのまま食べた。
同じ高松のお菓子屋さんから取り寄せた、ふつうのわらび餅。
ひとくちサイズに小さくカットされていなくて、
プラ容器にゴマ豆腐のように、でん!と入っていた。
まあ、そんな希少で高価な代物、とても食べる機会はなさそうだが、
わらび粉100%に拘らなければ、この時期、いろんなわらび餅を味わうことができる。
暑い夏、アイスクリームやかき氷もいいけれど、ちょっと冷やしたわらび餅を味わうのもいい。
同じく夏に美味しい和菓子、くずまんじゅうや、水ようかんよりも重たくないので、
ひとパック、ペロリといけてしまう。
そういえば十数年前、広島に居た頃、わらび餅の移動販売を見たことがある。
軽ワゴン車で、石焼イモみたくスピーカーで放送しながら売り歩いて(走って?)いた。
あいにく仕事中だったので利用できなかったが、どんななのか食べてみたかった。
昔は、わらび餅の移動販売、日本各地でよく見られたそうで、
今も一部、営業している場所があるらしい。
高いのも安いのも、わらび粉が含まれようが含まれてなかろうが、
どっちもそれぞれ美味しい!
梅雨が明け8月に入り、まだまだこれから暑い日が続く。
蒸し暑い日に、麦茶とわらび餅がたまらない。
あえて熱いお茶でいただくのもアリ。
扇風機の風で、きな粉がっ!!ってならないように注意。
よくやってしまうのよね・・・。
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