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ジョーカー

2020-02-12 22:07:38 | 映画

※本記事、“ジョーカー”は、映画の内容に関するネタバレを含みます。

これから映画を鑑賞予定の方は、お読みになる際、ご注意ください。

 

昨年の秋に観た映画、DCコミックシリーズの実写映画、“ジョーカー”。

主演はホアキン・フェニックス、監督はトッド・フィリップス

キャッチコピーは、“笑いの仮面をかぶれ”。

先日開催された米アカデミー大賞では、11部門にノミネートされ、2部門で受賞。

ホアキン・フェニックスが見事、主演男優賞を受賞した。

 

 

誰もが知っているDCコミックのヒーロー、バットマン

その宿敵として描かれ、シリーズにも多数登場するジョーカー。

数年前に観た映画、スーサイド・スクワッドにも、

ヒロイン、ハーレイ・クインの恋人として、ジャレッド・レト演じる、狂気に満ちたジョーカーが登場した。

作品によって、それぞれキャラクターの設定が異なったりするものの、

共通しているのは、その道化者の振る舞いと、完全なる悪ということ。

 

以前からちょくちょく書いてはいるが、

バットマンに限らず、アメコミ作品にはまったく興味がない。

アベンジャーズとか、X-MENとか、地上波で放送されていても まず観ない。

だが、この作品は なぜか観ようと思った。

バットマンの宿敵、ジョーカー。

その誕生秘話を描いたドラマ。

心優しい青年が、いかにして悪の親玉、ジョーカーへと変貌したのか?

絵描きを志す真面目な青年が、いかにして大量虐殺を行う独裁者へと変貌したのか?

あの、ナチスドイツの最高指導者、アドルフ・ヒトラーに通ずるものを感じ、興味を抱いた。

 

アメリカ、ゴッサム・シティ。

行政が機能しなくなって久しい大都会。

市の衛生局が長期ストライキに突入し、街じゅうにゴミが散乱していた。

貧富の差は大きくなる一方で、貧困層は犯罪に走り、街は混沌としていた。

 

 

ピエロのメイクをしながら涙する青年の姿。

病気の母親と暮らす、アーサー(ホアキン・フェニックス)。

貧しいながらも、コメディアンになることを夢見て、ピエロの仕事をしながら、

母の看病をし、その日暮らしの生活を送っていた。

「どんなときも笑顔でいなさい、人を楽しませなさい。」

母の教えを守り、彼は今日も惨めな環境に屈せず、必死に笑顔を作る。

 

アーサーは幼い頃から脳の病気を患っていた。

緊張状態に陥ると、笑いが止まらなく発作を起こすという精神疾患だった。

市から支給される薬で発作を弱めていたものの、

福祉政策の切り捨てによって、週一のカウンセリングも薬の支給も途絶えてしまう。

 

 

それでもアーサーは、コメディアンの夢を諦めることなく、

母のため、夢のため、懸命に仕事をしようとする。

だが、勤務中にストリートギャングの子ども達に襲われ財布を奪われるわ、

看板を破壊されたことを店側から責められ、所長にひどく責められるわ、

同僚から護身用にと手渡された拳銃が裏目に出て、ついには解雇されてしまう。

 

絶望のまま、ピエロの格好のまま地下鉄に乗り来んだアーサー。

同じ車両内で、酒に寄った富裕層の若者三人が女性を執拗にからかう。

三人の若者を諌めようとするアーサーだったが、笑いの発作が出てしまう。

それに激昂した若者たちに、袋叩きにされてしまうアーサー。

咄嗟にアーサーは所持していた拳銃で若者たちを撃ち殺してしまう。

 

三人の若者が射殺された事件はゴッサム・シティに広がる。

貧困層が政治と富裕層へ向けた怒りは頂点に達しており、

富裕層の若者三人を射殺したピエロは一躍ヒーローとなる。

アーサーはこのとき、罪悪感よりも高揚感の方が勝っていた。

新聞やテレビのニュースで取り上げられるピエロ姿の容疑者。

人を殺めてしまったことよりも、社会から黙殺されていた自分が、

初めて注目を浴びたことに、自分の存在感を味わい、言い知れない快感を得ていた。

そんな彼を残酷な現実が待ち受けていた。

 

警察は若者三人を殺害した容疑者として、アーサーに目星を付けていた。

その捜査が自宅に及んだとき、母が過呼吸で倒れ入院する。

そんな母が若い頃からの虚言癖で、ずっとアーサーの生い立ちのことを偽っていたこと、

笑いの発作が起こる病気の原因にも、その母が加担していたこと。

母への愛情は憎しみへと変わり、病室でアーサーは自らの手で母親を殺してしまう。

恋人の元へすがりに行くも、実際は交際などしておらず、ただの隣人だった。

恋人関係は、薬の切れたアーサーが勝手に抱いていた妄想だった。

 

 

憧れのコメディアン、マレー・フランクリン(ロバート・デ・ニーロ)の番組に出演依頼が来るも、

それはマレーが自分を笑い物にするために呼んだに過ぎない・・・。

それを悟っていたアーサーは、意を決し番組出演を決める。

髪を緑に染め、ピエロのメイクを施す。

 

そんななか、母親を亡くしたアーサーを心配して元同僚が訪ねてくる。

だが、この同僚が自分に拳銃を持たせたことが、

失業するきっかけになり、さらには殺人を犯すことにもなった。

庇ってくれるどころか、逆に自分を陥れたこの元同僚は、

警察への口裏合わせにとアーサーを訪ねてきた。

アーサーはためらいもなくこの元同僚を惨殺する。

 

 

「俺の人生は悲劇だと思っていた・・・いや、人生は喜劇だ。」

真っ赤なスーツに緑の髪、そしてピエロのメイク。

殺人を犯した直後にもかかわらず、アーサーは意気揚々と家を出て、軽快なステップを踏む。

憧れだったマレーの番組に出演するため、出かけるアーサー。

しかし張り込んでいた刑事二人がアーサーを追いかける。

街中にはピエロのマスクを被った者や、メイクをした者であふれかえっていた。

貧困層の生活困窮者達が、ヒーローであるピエロの格好をして、

デモのために街の至る所に集結していたのだった。

 

 

どさくさに紛れ、まんまと刑事から逃れられたアーサーは、念願のテレビ出演を果たす。

放送前、マレーに注文を付けるアーサー。

「本名ではなく、“ジョーカー”と紹介して欲しい。」と。

コメディアンを夢見て、憧れのマレーの番組に出演できたと喜ぶアーサーではなかった。

生放送で、若者三人を殺害したのは自分であると告白。

それを諌めるマレーに、格差社会の不条理と報われない自身の人生への怒りをぶちまける。

マレーと口論になり、隠し持っていた拳銃でマレーを射殺。

そこに居るのは、悪のカリスマ、ジョーカーそのものだった。

 

 

同じ頃、街じゅうで火の手があがっていた。

デモを行っていた貧困層のピエロ達が、暴徒と化して暴れていた。

皆、富裕層へ反逆したジョーカーを称えていた。

時期市長にもっとも有力だった富豪、トーマス・ウェインも、

暴徒の手によって、妻ともども射殺されてしまう。

その幼い息子、ブルース・ウェインは両親の遺体の脇で茫然と立ち尽くしていた・・・。

 

 

面白かった。

アメコミの実写映画と侮ってはいけなかった。

派手なアクションとCGで見せるだけの、それら映画と同一視してはいけない。

社会弱者の心情を描いた、ヒューマンドラマだった。

 

純粋で真面目な青年が、これでもかというほど悲劇に見舞われる。

元より抱えた精神疾患も仇となり、孤立した青年は悪へと転落する。

しかしそれが果たして純粋な悪なのかどうかも、この劇中では判断できなくなる。

 

 

悲劇が重なって、善人だった者が悪に堕ちてしまうパターン。

ゲームでも、ドラゴンクエストⅣのデスピサロ,クロノ・トリガーの魔王,

ファイナルファンタジーⅦのセフィロスなどが思い付く。

それゆえに、それぞれの悪役にも同情の声があり、ファンが多いのも解らないでもない。

だが、自分は断固として、これらキャラクターに同情したりすることはなかった。

 

しかしこの映画のアーサーはどうだろう。

他作品で描かれているジョーカーは別として、

この映画のジョーカーには、なぜか同情してしまう。

劇中殺めてしまう人が、まったく罪も無いひとたちだと言い難いのもあるが、

それ以上に、哀れ過ぎるアーサーの境遇にどこか応援してしまいたくなる。

悪には悪にならざるを得なかった物語がある・・・。

そんなふうに自分の中の勧善懲悪を崩されてしまう。

バットマンを知らなくても、ジョーカーというキャラがどういうキャラなのか知らなくとも、

充分に楽しむことができた。

 

ホアキン・フェニックスの演技が素晴らしかった。

兄は、あのスタンド・バイ・ミーのリバー・フェニックス。

ジョーカーの役柄のため、背骨が露出するほどまで減量し、

貧しく、満足に食事も取れていない青年の体つきを再現。

緊張すると笑いの発作が出るという難病の演技や、

苦悩する中盤、狂気じみた終盤の演技、俳優魂を見せてくれた。

アカデミー賞主演男優賞受賞も納得の好演だった。

 

バットマンシリーズを知っているひとは、より楽しめたかもしれない。

最後に両親の死体の前で立ちつくす少年が、後にバットマンとなり、

ジョーカーの前に立ちふさがる宿敵になること。

ファンならば、劇中にそれを知ってグッと来るものがあったかもしれない。

自分は帰宅してパンフレットでそれを知る。

バットマンの寡黙で冷酷な雰囲気を、この劇中での少年時代でも再現していたのだろう。

 

アメコミ原作だからと敬遠しないで見てもらいたい作品。

R15指定なので、ショッキングな暴力シーンがある。

家族で鑑賞する際は注意が必要。

鑑賞後、自分のなかにある勧善懲悪は崩れてしまうはず。

だからといって、現実に起こる殺人事件などで、被害者に一方的な非がある場合をのぞき、

その犯人に家庭環境や経済的理由など、いかなる理由があったとしても決して許されることではない。

この映画は、それを肯定しているものでもないということも理解して鑑賞しなければならない。

 

 

スマブラ参戦決定が報じられたとき、世界中のスマブラファンが歓喜した、ペルソナ5の主人公、ジョーカー。

自分の反応はというと、「誰コイツ?しらね。」だった。

完全に知らないキャラの参戦は、ゼノブレイドのシュルクに次いで二体目だった。

厳密に言うと、マルス以外のファイアーエムブレムキャラも知らないといえば知らない。

 

極めれば強いんだろうが、自分は苦手キャラ。

そもそもペルソナ5のゲームの世界観というか、キャラクターのビジュアルが好きになれない。

あ、映画のジョーカーとはまったく関係ないな・・・。

 



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