よろず戯言

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謎のカエルと甥っ子の涙

2017-06-16 00:28:20 | 日記・エッセイ・コラム

看護師をしている下の妹。

2歳から小学校2年生まで、4人もの子どもが居るのだが、そこは看護師。

大きな総合病院で働いているため夜勤も多い。

そんなとき、うちの母に子どもたちが預けられる。

仕事を終えた母が、甥っ子たちの通う小学校や幼稚園へと直接向かい、4人を迎えに行く。

 

数日前のこと。

この日もまた、妹が夜勤のため母が4人の甥っ子たちを家に連れ帰っていた。

食事中、母と小学生の甥っ子とで、学校で捕まえたというカエルの話題に。

学校から帰ろうとすると、甥っ子の傘のなかに大きな黄緑色したカエルが居て、

カエルを傘に入れたまま母の車に乗り込んだら、車内でカエルが脱走。

うちのお母んも車内を探したけれど、カエルが見つからず、

今もまだ車内のどこかにカエルが居るとかなんとか。

 

 

そのカエル、母が言うに今まで見たことがないカエルだったという。

黄緑色していて、アマガエルみたいなんだけど、

体長が5cmくらいあって、アマガエルにしては、あまりに大き過ぎるという。

「トノサマガエルじゃない?緑色で斑模様とスジがあったら、トノサマガエルたい。」

「いや、きれいな黄緑色でツルツルしちょって、なんの模様もなかったばい。」

「じゃあ判らん、実物見てみらんと・・・。」

「やっぱり大きいアマガエルやったんかねえ?」

「いや、アマガエルもうっすら模様があるけんね。大体そげんデカくないっちゃ。」

いったい何ガエルなんだ?

自分もそのカエルが見たくなった。

 

食後、「ひょっとしたらカエル出てきちょうかもしれんき、車ん中、見てくる。」

そういって、お母んが外に出た。

すぐに戻って来た。

「おったばい!」

飼育容器をぶら下げて、家に入ってきた。

 

 

容器のなかを見ると・・・。

なんじゃこのカエル!?

これは見たことがない!

確かにアマガエルのような鮮やかな黄緑色。

だが、斑模様も筋も入っていない。

それに、アマガエルと比較して明らかにでかい。

確かに5cmくらいはある。

それに、けっこうずんぐりしている。

 

 

すぐに家にあった、いきもの図鑑を広げる。

自分の子どもの頃からあった年季の入ったやつ。

カエルのページを開いて、らしきやつを探す。

・・・。

探す間もなく、ページを開くと真っ先にそれが目に入ってきた。

コイツじゃないか?

 

 

よく似たイラストのヤツ、名前を確認すると、

“シュレーゲルあおがえる”となっていた。

なんじゃこの外来生物みたいな名前は?

どうせペットが逃げ出して自然繁殖したみたいな類だろう?

こいつじゃないんじゃ・・・。

簡単に書かれてある説明文を読むと、「日本にすむ」とある。

すごいアバウトだな・・・ここらにも分布しているのかな?

他に載っているなかに、らしきカエルは居ない。

体長も合致するし、どう見てもこれがソックリだ。

 

 

その後、ネットで調べてみたら・・・間違いない。

甥っ子の傘に入っていた謎のカエル、正体はシュレーゲルアオガエル

水辺の上にある木の枝や水辺近くの土の中に、泡に包まれた卵を産み、

卵から孵ったオタマジャクシは、そのまま池や沼に落っこちたり、流れ着いたりする。

その生態で有名な、モリアオガエルの近縁種だった。

モリアオガエルは知っていた。

しかし、コイツは知らなかった。

シュレーゲルってのはこれを新種発表した、ドイツ人学者の名を冠しているらしい。

日本固有種なのに、そんな名前付けんなよと。

 

 

しかし・・・このカエル、飼育することなどできない。

カエルの飼育といえば、昆虫の生き餌だ。

子どもの頃、ハエやガを生きたまま捕獲して飼育容器に投入したりして、

とにかくエサやりに苦労した覚えがある。

それにどうやらメスのようで、なんとなくお腹も大きく見える。

もし近く産卵でもするのならば、これは放してやるべき。

 

だが、甥っ子はこのカエルを飼育する気でいた。

しかも翌日学校へ持って行き、クラスメートや先生に見せるという。

いかん・・・。

先生はともかく、クラスメートはいかん。

間違いなく殺される。

甥っ子が通う小学校、この町全体がそうであるように、まあ悪い。

保護者もクソみたいな連中が多いが、それに輪をかけて生徒たちの悪いこと。

 

 

飼育が難しいこと。

学校に持っていったら悪ガキに殺されてしまうかもしれないこと。

一所懸命説明するが、飼育容器を抱きしめて、首を縦に振ってくれない甥っ子。

大粒の涙をこぼして、毎日お世話するからと飼育したいと懇願する。

甥っ子の気持ちは解らないでもない。

カエルはもちろん、アリ,テントウムシ,カマキリ,コオロギ,クワガタムシ,カブトムシ,

カミキリムシ,アリジゴク,カタツムリ,ヤモリ,イモリ,カメ,ザリガニ,タニシ,etc・・・。

自分も子どもの頃、いきものが大好きで、数々のいきものを捕まえては飼育した。

だが、その多くは、きちんとした世話ができなくて、死なせてしまった。

そのときに味わう、申し訳なさというか、罪悪感といったらない。

だからこそ、甥っ子にも解って欲しいと思って、飼育を諦めさせようと必死だった。

 

そのうち出勤準備を終えて、妹がやってきた。

夜勤のとき、うちで夕飯をとって風呂に入って、仮眠してから出勤している。

妹がカエルの件を聞いて、甥っ子に説得する。

とうとう甥っ子が折れて、カエルを逃がしてやることに同意した。

それでも別れを惜しんで、ずっとべそかいていた。

 

逃がすのは、うちの裏庭でいいだろう。

うっそうとしていて湿り気あるし、エサとなる虫だって豊富に居る。

ただ、天敵となるヘビも居るが、それはどこも同じだろう。

懐中電灯を手に、玄関を出てすぐ脇にある茂みへとカエルを放った。

ヤブランやユキノシタ,ドクダミなんかが茂っていて、よくアマガエルやツチガエルも居る場所。

ここなら、シュレーゲルアオガエルくんも暮らしていけるはず。

 

・・・。

逃がした後、さらにちゃんとシュレーゲルアオガエルのことを調べてみた。

鳴き声を聴いてみたら、よく聴く声だ。

わりと普通に居るカエルで、鳴き声もよく聴かれるが、

ふだん草の下や土中に身を潜めているため、姿を見る機会は少ないのだとか。

それで自分らも、これまで見たことがなかったのだ。

捕まえた個体はメス。

しかも、でっぷりと肥えていたので、おそらく卵を抱えている。

 

 

だが、卵を産むのは田んぼの畦や、池沼のほとり。

甥っ子の通う小学校のすぐそばに水田がある。

きっとそこから学校の傘立てに侵入したのだろう。

うちの庭には・・・湿気はあっても水辺がない!

下水の側溝、すなわちドブが流れているだけ。

しかも梅雨入りしたにも関わらず、ここ最近、雨がほとんど降っておらず、どこもここも渇き気味。

うわぁ・・・ちゃんと調べて、生活適応できる場所で放してあげるんだった・・・。

無事に生きてりゃいいが・・・。

 

 



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