先週、娘が16歳の誕生日を迎えた。
早いものでもう高校生。
元妻と高校で知りあったのが15のとき。
娘があのときの自分達と同じ歳になったのだ。
誕生日の数日前、メールで何が欲しいか訊いていた。
「お風呂で音楽が聴けるものが欲しいそうです」
元妻を介して、そんな回答が来た。
防水仕様のミュージックプレイヤーか・・・けっこうすんだろうな。
誕生日の前日くらいに、帰宅途中に家電店に寄り、それを購入することにしていた。
そして誕生日前日。
朝早くに元妻からメールが届く。
「まだプレゼントを買っていないなら、それをやめて、広辞苑が欲しいそうです」
!
広辞苑とな!?
こうじえんって、あの分厚い辞書だよな?
数年に一度改変して、新しく生まれた言葉なんかが追加されてゆき、
数万語も掲載されているという、あの辞書のなかの辞書!
あれを、女子高生が欲するか?
勉強には普通の辞書で事足りるはず・・・。
娘はクイズ王にでもなろうというのか?
しかし欲しいというのならば、買ってやろうじゃないの。
たぶん高いだろうが、それでもミュージックプレイヤーよりは安いはず。
これを使ってガンガン勉強してくれればうれしい。
さっそく仕事帰り、職場近くのショッピングモールへと行き、そのなかの書店に立ち寄った。
けっこう大きな書店。
資格の参考書やビジネス書なども充実しているし、間違いなく置いてあるだろう。
・・・しかし、辞書のコーナーを探しても見つからない。
参考書とか、学術書のコーナーを見ても置いていない。
店員さんに訊いてみる。
「広辞苑ですか?たぶん置いてないと思いますが・・・少々お待ちください。」
やたらクリンクリンのパーマをあてている、メガネの若い女性店員さん。
在庫を確認しに行ったのか?
上司に訊きに行ったのか?
店の奥の方へと行き、しばらくして戻って来た。
「すみません、広辞苑は置いてないです・・・。」
「そうですか、ありがとうございます。」
クリンクリンパーマのメガネの店員さんに礼を言って、書店を後にする。
うーむ、広辞苑ってもしかして、書店で買い求めるものじゃないとか?
デカくて高価だしな、取り寄せてもらうのが一般的なのだろうか?
仕方がない、ネットで買って送ってもらうことにしよう。
ショッピングモールを後にして、自宅に帰ることに。
自宅のほど近く。
交差点で信号待ち。
そうだ・・・ダメ元で明屋(はるや)に行ってみるか。
自宅の近くに、明屋書店という、小さな本屋がある。
愛媛県に本社を置く、割と大きな書店チェーン。
中四国を中心に展開している。
そんな明屋書店にふらりと入る。
店舗面積は小さい。
さっき立ち寄ったショッピングモール内の書店の半分くらいか。
客もまばらで、静かな店内。
・・・この規模の書店じゃ、広辞苑なんてやっぱり置いてないだろう。
期待せずに、一番奥の辞書コーナーへと行ってみると・・・。
掲載項目25万て!
!
あった!
“広辞苑”と書かれた、ひときわデカい直方体の物体が!
白い箱カバーにオレンジの帯。
オニキスカラーの内カバー。
10kgもないと思うけれど、持つとずっしり重い。
A4サイズ(たぶん)で、この厚み!
いやまさか、こんなとこで見つかるなんて。
ダメ元で立ち寄ってみて良かった。
でかくて重たい広辞苑を手にレジに。
レジカウンターに広辞苑を乗せる。
店員のヘンな髪型のニイちゃん、一瞬ひるんだように見えた。
だが、値段を告げ、クレジットカードを受け取り、淡々とレジ業務をこなす。
「うっわ、このおっさん広辞苑なんて買っちゃって、なんの仕事しよんやろか?
てか、スマホでググりゃいいし、辞書とか要らなくね?」
そんなことを考えていたかもしれない。
字が小さいっ!
いつもはナイロンの袋に入れてもらうところ、紙袋に入れてくれた。
さすがにこのサイズの本を入れるのに、ナイロン袋はないか。
ギフトラッピングを頼もうかと思ったが、広辞苑とはどんなものなのか?
やっぱり自分も中を見てみたいので、そのまま持ち帰った。
帰宅して、さっそく広辞苑を開いて見てみた。
な・・なんて字が小さいんだ!
ふつうの辞書よりもページ面積が大きいくせに、字が小さくてびっしりと掲載されている。
こりゃ年配の方は、虫眼鏡がなきゃ読めないぞ。
それこそ、今流行りのハズキルーペとセットじゃなきゃダメだ。
自分が持っている辞書(左)と、広辞苑(右)との比較。
広辞苑は字が小さくて、ぎっしり詰め込まれているのが判る。
ペラペラとめくって、いくつか掲載されている単語を見てみた。
すげえな、政治用語やら学術用語、世界の民族風習やら宗教行事など、
通常の辞書にゃ掲載されていないような単語があふれている。
動植物の名前なんかも豊富に掲載されていて圧巻だ。
ううむ・・・ちょっと自分も欲しくなった。
翌日、娘の誕生日当日。
自分は休みだったので、朝から段ボールに広辞苑を詰める。
空いたスペースに、娘が好きなお菓子なんかを詰めて、
一筆箋にメッセージをしたため同封し、それを郵便局から発送した。
翌朝には届いたはず。
付録付き。
付録は開いていないので、内容は判らない。
数日後、娘からメールが届いた。
「思っていたよりも大きくてびっくりしました!大切に使います!ありがとう」
喜んでもらえて良かった。
それにしても、年頃の女の子らしく服とかバッグとかを欲しがるんじゃなく、
広辞苑を欲しがるなんて、娘も変わってるなあ・・・とつくづく感じた。
そこらへん、わしに似たのかも・・・なんて思ったり。
娘よ、誕生日おめでとう!
16のとき、自分も必死に勉強していたのを思い出した。
あのときの努力が報われたのに、
それをフイにして、何もかも失い、今の堕落した自分が居る。
娘には選択を誤らないで、光り輝く未来を歩んでもらいたい。
自分が高校時代から使用している国語辞典との比較。
それはさておき、今回思ったのが、辞書が書店から消えつつあるということ。
さすがに学生向けの辞書は充実していた。
国語辞典のみならず、漢和辞典や英和辞典、古文辞典など色々ある。
だが、一般的な辞書は、あまり置いてない。
コーナーも狭くって選択肢も少ない。
スマホやタブレットなどで簡単に検索できるようになってしまい、
辞書なんて必要なくなってしまったからだろうか?
息子も昨年プレゼントされた電子辞書を使っているし、
重くて持ち歩きに不便で、探すのに時間もかかる、掲載言語にも限りがある。
もう紙の辞書を使う時代じゃあなくなったのかもしれないなあ。
そんなふうに感じた。
明屋書店を見なおした!
やっぱり重みがあって、自分でページをめくって探すのが楽しいんだよなあ。
辞書ってそういうものなんだろうと思うのだが、それは時代錯誤なんだろう。
資源の側面から見て、ペーパーレス化は良いことだけど、
パソコンソフトやOA機器のマニュアルもほとんど電子化されてしまい、
とりわけゲームのマニュアルが無くなってしまったことが一番悲しい。
やっぱり慣れるまでは手元に置いて、それを見ながらプレイしたい。
スイッチ、未だに解らないことだらけなんだよ!
電源切っても、アダプター抜いていてもゲーム起動中みたいだし、
マリオカート8DXも、コースアウトしない仕様を解除する方法が解らん!
いや、マニュアル開けってことだろうが、そのマニュアルを呼び出しても解らない。
探しきれないだけ?
電子マニュアルは嫌いじゃ。
広辞苑に付いていたマーク。
この種を蒔いているっぽい人は何だろう?
娘は広辞苑を読んでいるとき、父親は写真週刊誌を読む。
グラビア目的じゃないぞ、ゴーンの記事が読みたくて買ったんだ!
でもって今日は自分の誕生日。
娘の誕生日の一週間後が自分の誕生日。
自分でケーキを買ってひとりで食べた。
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