不定期掲載ガンダム記事、"宇宙世紀に散ったキャラクターたち"。
今回は敗走中に立ち寄った村が不運にもゲリラの村、部下の醜態でゲリラに襲撃される悲運な女隊長。
"機動戦士ガンダム 第08MS小隊”より、トップ。
トップ(フルネーム不明)ジオン公国軍ヨーロッパ軍所属MS小隊長、階級は少尉。
宇宙世紀0079年11月、地球連邦軍による地球での大規模なジオン殲滅作戦、"オデッサ作戦”が開始された。
この戦いにより、ジオンはアジア・ヨーロッパにおける最大拠点を失い、その多くは宇宙へと後退した。
逃げ遅れた部隊は、地中海を抜けてアフリカへ逃げたり、ヒマラヤを抜けて東アジアへと敗走する。
このトップ率いる小隊もまた、オデッサの戦い後、ラサ基地を目指し敗走する。
何日ほど彷徨っていたのか?
東南アジアのとある密林。
補給も受けられず、食料も尽きたトップ小隊は、小さな集落の入口を発見する。
かつてジオンの勢力圏だったが、既に連邦の勢力圏。
村に立ち寄り食料を調達したいが、騒ぎを起こしてはいけない。
トップは穏便に事を進めようと、村への接触のしかたを綿密に計画する。
そうして部下のデルとアスに命令する。
「デル、食いもんを手に入れるために、上の村に陽動をかける。」
「いいねアス、私たちは無頼じゃないんだ。」
部下のひとり、デルは真面目で実直な男。
年齢不詳だが、コックピットには息子とおぼしき少年の写真が貼られている。
階級は軍曹で、トップの命令にも素直に応じる。
だが、小隊で最も若く、階級も伍長と最も低い新米パイロット、アス。
「能書きはいいからさ、とにかくなんか食わしてくれ、隊長さんよ。」
反抗的な態度で、トップにも文句を言う。
「いいね、殺すんじゃないよ!」
アスに対し、念を押して命令するトップ。
だがアスは、穏便に食料を調達しようとするトップに苛立ち、
わざとヒートホークを村人に向けて落とすなど、のっけから粗暴なふるまいを見せる。
「こっちはMS、下手に出ることはねえんだよ。」
そうつぶやくアス。
トップ小隊がやってきた村は、ゲリラの村だった。
バレスト・ロジータ率いる密林のゲリラ組織の村。
そうとは知らずに食料をもらいにやってきたトップ小隊。
バレストの娘、キキ・ロジータによって、
トップ小隊が村に侵入してくることは事前に察知されていたものの、
村人はジオン兵を警戒し、武器を携行して臨戦態勢を整えていた。
かつてジオンに占領されていたこともあるこの村。
そのため村人たちはジオンに対し尋常でない憎悪を抱いていた。
だがゲリラ頭目のバレストと、その娘のキキも、村人に手を出させないでいた。
MSを相手にここが戦場になると村は全滅してしまう。
「先に手を出した方が負け」そう考えていたからだ。
このゲリラの村と親密な協力関係を築いていたのが、
連邦軍の極東方面軍コジマ大隊所属のMS部隊、第08MS小隊。
08小隊の隊長、シロー・アマダ少尉は、
ジオンのテストパイロット、アイナ・サハリンと親密だったことが発覚し、
スパイ容疑がかけられ、謹慎中の身だった。
そこへ、ゲリラの村がジオンのMSによって占拠されたという情報が入る。
だが、ゲリラの村を重要視していない司令部は、ジオンMS排除の命令を下そうとはしない。
シローはジオンのアイナと解り合えたことをきっかけに、戦いに疑問を抱いていた。
軍務と理想・・・葛藤しながら、ゲリラの村占拠の報を聞き、
村とジオン兵の両方を救いたいと立ちあがる。
謹慎中の身ながら、部下に出撃命令を下し、
部下のカレン・ジョシュア曹長,テリー・サンダースJr.軍曹を陸戦型ガンダムで、
ミケル・ニノリッチ伍長をホバー・トラックで村の外に待機させ、
自身は単身、生身のままゲリラの村へと潜入する。
その頃、ゲリラの村では、トップたちが村人から食事をもらっていた。
「うまい飯を食わせてもらった礼だ!」
デルは食器を回収に来た少年に、空薬莢をあげるなど、子どもに対して気遣いを見せる。
「おっちゃん、ありがとー!!」
そういって喜ぶ少年。
微笑むデル。
そのやり取りをみて、アスが悪態をつく。
「ばっかじゃねえの!?子どもなんか手懐けたって何の特にも・・・。」
そうして自分に食事を届けにきたキキに、食欲とは別のさらなる欲を沸かせるアス。
「ちょっと青いが、贅沢は言ってらんねえかあ。」
キキに欲情したアスは、食事のみならずキキごとザクのマニュピレーターで掴む。
「アス、止めなッ!」
部下の下劣な行為を止めるトップ。
ザクマシンガンをアスの機体に向けて制止する。
「アンタにやれんのかよ?」
そう吐き捨てるアスに対し、トップは躊躇なくマシンガンの照準を合わせる。
「戦死にはしておいてやる・・・。」
トップが本気だと悟ったアスは焦る。
「解ったよ、降ろしゃいいんだろ。」
女は諦め、食事だけ受け取ろうとハッチを開いた瞬間、逆上したキキに顔面に食事をぶつけられる。
その反動で、思わずキキを放り捨ててしまうアス。
顔をぬぐったアス、だがその視界に入って来たのは、
自分に向けられた村人のロケット砲だった。
「死ね。」
村人の放ったロケット砲は、ハッチが開いたままのアスのコクピットに命中。
こうして粗暴なふるまいが発端となり、アスは殺されザクも破壊される。
自分の娘が乱暴を受けても、村人を制止していたバレスト。
だが、アス機の撃破によって、それは破られた。
「バカがぁ!早まりよって・・・こうなったら生きて返すな!!」
バレストの命令で、暴徒と化した村人たちが、トップとデルの機体めがけ一斉に襲いかかる。
四方から放たれるバズーカやロケット弾。
「コイツらゲリラだっ!とんでもないところに食いもんをもらいに入っちまった・・・!」
このままではやられてしまう。
焦るトップ。
すぐにデルに脱出するよう命令する。
「デル、長居は無用だ、脱出するッ!」
「はっ!」
トップの命令で、ブースターを吹かし、ジャンプして脱出を図るデル機。
だが、真後ろのバレスト邸から、ゲリラのひとりがロケット砲と共に飛び出す。
「逃がすかいっ!」
そのままデル機のバーニアめがけて、ロケット砲を発射。
「後ろからっ!?」
スラスターを全開にしていたデル機は回避行動がとれぬまま、
そのままバーニアにロケット砲の直撃を受ける。
全開のスラスター噴射を直に浴び、家人もろともバレスト邸は吹き飛んでしまう。
その頃、村に潜入していたシローも行動を起こしていた。
MSから落とされたキキを助け、村人に脱出するように言う。
後は自分ら08小隊で残った二機のザクを行動不能にし、この村もジオン兵も救おうというのだ。
だが、頭目をやられた村人たちはいきり立ち、復讐心で収拾がつかない状態だった。
「何ワケの解んねえこと言ってやがる!!」
シローの言うことなどに耳を貸すわけもなく、武器を手に脱出するザクを追っていく。
それでもシローは、ジオン兵を助けたいと、ひとり生身のまま走る。
「ビームライフル、スタンバイ!」
待機していたカレンとサンダースに命令するシロー。
自身はザクに待ち伏せし、対戦車砲でトップ機の股関節を破壊する。
脚部を破壊され、行動不能になり、そのまま崩れ落ちるトップ機。
「撃てええぇぇぇ!!!!」
シローがカレン達に命令する。
照準が合わない長距離からビームライフルで攻撃させる。
ビーム攻撃に反応したデルも、手にしたマゼラトップ砲で応戦するが、
サンダースのライフルが、デル機にヒット。
そのままデル機は撃破され、行動不能になる。
逃走するザク二機を行動不能にした。
「これ以上の戦闘は無意味だ!投降しろ!命は助ける!!」
倒れたトップ機に対し、そう必死に呼び掛けるシロー。
頭から血を流し、震えながら上体を起こすトップ。
「デルまで・・・ゲリラふぜいがっ!!」
そう言うと、投降を呼びかけた生身のシローに対し、躊躇なくザクマシンガンを放つ。
だが、そのマシンガンもシローによって破壊され使用不能になる。
万事休すとなったトップ機。
「投降しろ。」
再度そう呼びかけるシローだったが、彼の背後からトップ機に向けロケット砲が放たれる。
暴徒と化した村人たちが、行動不能になったザクに一斉に襲いかかる。
「やめろ!ダメだっ!!」
村人を制止しようとするシローだったが、到底無理だった。
「ひいいぃっ・・・!」
迫りくる村人、恐怖に駆られたトップは、恐れおののきながら対人兵器を放つ。
空中で炸裂したその対人兵器は、村人達に降り注いで致命傷を与える。
「もう・・いい!」
双方を制止しようと必死になるシロー。
「とどめえぇ!!」
だが、それも虚しく、トップは動けなくなった村人たちに、さらに攻撃をしようとする。
「やめてくれえぇ!!!」
シローは涙を流しながらトップに向けて対戦車砲を放つ。
こうして、ジオンの敗走小隊は全滅した。
立ち寄った村がゲリラの村だったことが不運だったが、
トップやデルの振る舞いだけならば、事なきを得たかもしれない。
暴走する部下を抑制できなかったのが運の尽きだったか。
けっきょくキキの村もジオン兵も守ることができなかった・・・。
敵対するジオンのアイナと出会ってお互い解り合って抱いた理想。
シローはこの戦いで、それが軍に居たままだと実現できないということを痛感する。
そして葛藤を抱えたまま、オデッサ作戦後のアジア攻略の任に赴くことになる。
トップ小隊。
ガンダムのなかでも、なんとも悲運な小隊である。
敗走中に食料調達に村に立ち寄ったのが運の尽き。
アスの場合は自業自得といえるけれど、
高潔だったトップと、紳士的で子どもに優しかったデル。
この二人はなんともいたたまれない。
デルだけは直接、死亡したような描写がない。
だが戦闘後のシローと村人たちとの会話のなかで、デルの話題が出なかったこと、
「デルまで・・!」と言ったトップの台詞などで、やはりデルも死亡したのだろう。
サンダースに狙撃されたデルのザクは両腕を失って吹っ飛ぶ。
ただ崩れ落ちただけで、けっこうな重傷を負っていたトップ。
あれだけ吹っ飛んだデルが無事であったとは考えにくく、
ザクは機体を起こすこともままならず、そのまま行動不能になっていただろうから、
いくら無事であったとしても、村人たちに襲われて命を落としていると考えるのが普通か。
トップ機は隊長機の証である、ブレードアンテナを付けた旧式のザク。
この一年戦争終盤において、未だ旧式のザクに乗っているあたり、
かなりの腕前のパイロットだったのだろう。
ジオンのなかには、新型のザクが配備されても、
それを拒否して旧式に乗り続けたパイロットが居たという。
トップもそのひとりだったのかもしれない。
ゲリラの村を脱出する際、「援護するッ!ジャンプできるか!?」と、
バーニアが生きているデルを先に逃そうとするなど、部下思いの一面を見せる。
民間人に対し卑劣を働く部下を、躊躇なく修正しようとするなど、
女性ながら、隊長としての才覚を備えた人物だったことがうかがえる。
年齢不詳だが、おっぱいのタレ具合と声色からして30半ば過ぎくらいか。
あ、でも同じ声でもハマーン様は22歳だったから、なんともいえないか。
右肩に巻いたブルーのリボンがおしゃれで素敵だが、
イアリングだかピアスだか、へんてこりんなアクセサリだけはいただけない。
また、アス機は鹵獲した連邦軍のシールドを装備していた。
飛び道具は携行しておらず、ヒートホーク一丁のみ。
この辺りの描写も、ヨーロッパ戦線が激しいものだったことを物語っている。
敗走するジオン兵は、各地で集結しては宇宙へと帰っていった。
オデッサを見捨て、さっさと宇宙へと去ってしまった、マ・クベに代わり、
敗走する兵をラサ基地で最後まで待つ、ユーリ・ケラーネ少将。
「ひとりでも多くの兵を宇宙にあげる!」
だが、ユーリ少将の思い虚しく、
マッドサイエンティストと化したアイナの兄、ギニアス・サハリンによってその望みが断たれるのである。
その暴走したギニアスの野望を打ち砕くのが、
敵味方でありながら解り合うことができた、シローとアイナの二人になる。
次回は、意地とプライドがその身を滅ぼす結果となった骨董品を蒐集する狡猾な策謀家。
トレカのトップ隊長と、専用機のザクⅠ。
いつからか"旧ザク”って名称から"ザクⅠ”って名称に変わったんだよな。
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