春の花壇を華やかに彩る花、サクラソウ“Primula siebodii ”。
上の学名が示す、本来のサクラソウは日本の野山などに自生するものであり、
園芸店に“サクラソウ”として並ぶものは園芸品種として改良されたものや、
海外から入ってきた西洋サクラソウなどの別種。
今回はこれらをいくつかまとめて、“プリムラ”(英名:プリムローズ)として紹介する。
プリムラ・マラコイデス
プリムラ・マラコイデス“Primula malacoides”
「サクラソウ」の代名詞として、プリムラ属でもっともスタンダードな品種。
ロゼッタ状の葉っぱの中央から次々と花茎を伸ばし、
その先端に放射状に無数の小花を付ける。
「サクラ」の名のごとく、ピンクの濃淡が主流だが、白色もある。
ちなみにサクラソウの“サクラ”は、桜とは無関係らしい。
これまでずっと、桜のような花を付ける草だから、桜草なんだと思っていた。
プリムラ・マラコイデス
12月くらいから園芸店に苗が出回り、年明けには開花する。
5月くらいまで咲き続けるが、暑くなると葉茎が黄色くなって見苦しくなる。
また風通しの悪いところでは、株の中心部に残った雨でカビが生えたりして、
株全体が腐ってしまうことも。
暑さに弱いため、夏には枯死してしまうが冷涼地では夏越しも可能。
プリムラ・ジュリアン
プリムラ・ジュリアン“Primula×juliana”
日本で比較的近年になって作出された園芸品種。
プリムラ属で、商品としてもっとも多く出回るのがこの種。
ずんぐりとした花姿で、伸びて高くならないため、
プランターや花壇では前景に植えられる。
プリムラ・ジュリアン
変わり咲きのジュリアン
色のバリエーションが豊富で、赤,青,黄,白,ピンク,オレンジ,紫・・・
主立った色はほとんどあり、また改良もどんどん進み、
花びらの形や、花の咲き方も多種多用になっている。
後述する、“プリムラ・ポリアンサ”との交配が盛んで、
最近の品種は、その区別が付かなくなってしまっている。
バラの様な花姿のジュリアン
花は蒸れと暑さに弱く、やはり風通しがよく水はけがよく、
なおかつ日当たりのいい場所に植えることが大事。
花期は福岡で4月下旬頃まで。
プリムラ・ポリアンサ
プリムラ・ポリアンサ“Primula polyantha”
(ポリアンサスとも)
ジュリアン作出の元となった品種。
世界的には、ジュリアンよりもこちらの方が普及し、新品種の開発も盛ん。
プリムラ・ポリアンサ
以前は、「ジュリアンと比べ大型で、花も葉も大きくて数が少なく、花茎がより長く伸びる」
ということで、見分けることが容易だったそうだが、
現在はジュリアンとの交配、交配種同士の交配などで、
もはやその区分が意味をなさなくなってきてしまっている。
この記事に載せている写真も、生産者の表記に倣って区分しているものの、
実際には、ジュリアンとポリアンサがごちゃごちゃになっている可能性も。
パンジーとビオラと同じように、区別が曖昧で難しくなってしまっている。
プリムラ・オブコニカ
プリムラ・オブコニカ“Primula obconica”
中国原産のサクラソウ。
大型で花も葉も大きく、花茎も長く伸びる。
伸びた花茎の先端に、淡く美しい色合いの花を十数輪つける。
ウンナンサクラソウ
ウンナンサクラソウ“Primula filchnerae”
こちらも中国原産の大型品種。
オブコニカよりもたくさんの花を付けて豪華さがある。
葉っぱは薄く切れ込みがあり、日本産のサクラソウにより近い。
ウンナンサクラソウ
少しだけ、プリムラ属の花を紹介したが、
このなかでは、マラコイデスが最も育てやすい、
桜の根本にマラコイデスが植えられている、なんとも粋な植え込みを見たことがあるが、
桜の開花時期に合わせて小花がいっせいに咲いている光景は見事だった。
ジュリアンとポリアンサは、色のバリエーションとインパクトから、春の花壇の主役となる。
大型の品種は単体で存在感があるので、鉢植えで楽しむのもいい。
プリムラ・ポリアンサス
いずれも病害虫の心配がほとんどなく育てやすく、安価に出回るものもある。
耐寒性があり、真冬から花を咲かせてくれるが、
暑さにはめっぽう弱く、5月のポカポカ陽気になる頃には、くたびれてしまっている。
西日本では夏越しはまず不可能なので、
大型連休~梅雨入り前までには、思い切って処分するべき。
東北以北や、海抜の高い冷涼地でならば夏越しもできるが、
やはり水はけと風通しのいい場所でなければならない。
花をたくさん咲かせるには、日当たりも必要なので、
どうしても夏越しさせたい場合は、プランターか鉢植えで育てること。
プリムラ・ジュリアン
なお、日本にあるサクラソウは、
準絶滅危惧種らしく、自生地では保護活動が推進されているところもある。
マニアによる盗掘被害もあるらしい。
野山で見つけた野生の株は、このサクラソウに限らず、
決して持ち帰ったりせずに、その場で鑑賞して楽しみたい。
プリムラ・マラコイデス
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