昨年秋に観た映画。
佐藤健主演のドラマ、“億男”。
原作は川村元気氏の同タイトルの小説。
キャッチコピーは、“お金とは何か?幸せはどこか?”。
なんとも目を引く、シンプルでインパクトのあるタイトル。
恥ずかしながら本を読まないので、原作の小説を知らないし、原作者のことも知らない。
高橋一生が気になるけれど、主演の佐藤健に特に思い入れもないので、当初スルーしていた。
だが、予告編を観てしまい、観に行くことに。
大金がテーマの殺伐としたドラマを予想していたが、
予告編に登場した藤原竜也の怪しいこと怪しいこと!
これひょっとしたらコメディなんじゃ・・・?
藤原竜也の怪演を見て、そんな気さえした。
高橋一生もなんだか薄気味の悪い雰囲気の役みたいだし、
主要キャストを見ると、高橋一生や藤原竜也以外にも、
沢尻エリカや黒木華,北村一輝に池田エライザちゃん!
スカした主演俳優にあまり興味がないが、よく見れば豪華キャスト。
お金が主題の物語。
奇しくも自分もお金に振り回されている者のひとり。
これは観に行くべきかも!?
そう思い、鑑賞した。
兄が多額の借金を抱えたまま失踪。
その借金を返済する羽目になってしまった、一男(佐藤健)。
昼は司書として図書館で働き、夕方から深夜までパン工場で働く。
借金が原因で愛する妻子とも別居。
朝から深夜まで働きづくめで、月15万円ずつ借金を返済する。
だが、そんな生活を向こう30年も続けていかなければならない。
一男は疲弊しきっていた・・・。
そんなとき、偶然手に入れた宝くじ。
それがまさかの高額当選!
一男は一気に三億円もの大金を入手してしまう。
人生一転、起死回生。
借金を完済して、また妻子と一緒に暮らすことができる!
興奮する一男だったが、換金の際、銀行から手渡された冊子。
高額当選者に配布されるという冊子。
その冊子には、大金を手にしたものの、すぐに破綻してしまった人たちの事例が、
脅し文句のような文章とともに紹介されていた。
ネットで調べてみても、高額当選者の多くが、
お金の使い道を誤って不幸になってしまっているという事実を知る。
借金を返済して残りはどうすべきか・・・?
急に怖くなった一男は、誰かに相談しようと思い、
大学時代の親友、九十九(高橋一生)をたずねることにした。
九十九は大学を中退して起業し大成功、億万長者になっていた。
大学以来、会っていない九十九におそるおそる連絡する。
九十九と久々に再会した一男。
一男との再会を喜ぶ九十九、お金の相談を持ちかけられると、淡々と説明する。
「見て触れて、それから使い道を考えた方がいい。」
とりあえず預金していた宝くじの当選金、三億円を全額、現金でおろして来させる。
一枚1gの一万円札。
それが30万枚で30kg。
その重みを一男に体感させ、紙幣のうんちくを語る九十九。
「みんなお金のことを知らない。だからお金に振り回される・・・
僕にできることは、お金というものを君に理解してもらうことだけだ。」
札束の上に座り、九十九はどもりながら喋る。
「そのためにまず使ってみよう。」
一男は大金を目の当たりにして唖然としたまま。
その夜、九十九のマンションで、一男のお金を使っての、どんちゃん騒ぎのパーティがはじまる。
誰とも知れぬ集まった男女が音楽に合わせ、飲んで踊り狂う。
DJやポールダンサー、バーテンダーなどが配されて、酒池肉林の様相だった。
借金生活を送っていた一男にとって、これまで見たことのない世界に戸惑う。
だが、九十九はその手を引いて、中央のお立ち台に招く。
ひとりの女性から受け取ったハイヒールに高級シャンパンを注ぎ、それを一気に飲み干す。
そして、同じものを一男にも手渡す。
パーティの主役は彼だとばかりに、はやし立て周囲を煽る。
意を決した一男は、それを飲み干す。
続けて一万円札をバラまき始める九十九。
手を伸ばしてそれに群がる人々。
すっかり気分が良くなった一男も、それを真似て、一万円札をバラまく。
気が付けば朝。
周りは誰もおらず、散乱したゴミでパーティがあったのだけは判る。
九十九の姿もない。
不安になった一男は、奥の部屋にあった金庫へ急ぐ。
だが、金庫にしまっておいた三億円はまるごと姿を消していた。
九十九ともに・・・。
九十九の携帯電話へ連絡するも繋がらない。
事業で大成功した親友の九十九が、自分のお金を持って逃げるとは思えない・・・。
何か彼なりの理由があるはずだ。
そう思った一男は、彼の行方を追うため、
昨夜パーティで知り合った女性、あきら(池田エライザ)に連絡してみる。
あきらはパーティに参加していたものの、九十九とは直接知り合いではなかった。
だが、九十九のことをよく知っているであろう人物を紹介してくれた。
九十九の立ち上げた企業でエンジニアとして最高幹部だった、百瀬(北村一輝)。
無精ヒゲを伸ばし放題の、怪しい関西弁を喋るデブ男。
今は別会社を複数立ち上げて大成功を収め、競馬のVIP席で遊んでいた。
だが、九十九とは袂を分って以降、付き合いがないらしく、行方を知るには至らない。
深刻な一男に構わずに、百瀬はお前らも賭けろと、
実際は購入していない馬券で一男とあきらをもてあそぶ。
「今あんたのなかで行ったり来たりしたもん、あれが金の正体や。」
九十九の立ち上げた企業は、海外資本の企業に買収された。
買収された後も九十九は新規事業を起こしたものの、うまくいってないらしいという。
百瀬から別の人物を紹介される。
やはり九十九の立ち上げた企業で最高幹部だった、千住(藤原竜也)。
現在は金儲けのためのセミナーを開催し、
マネーアドバイザーとして、起業家などを支援する事業を立ち上げ、
億万長者を夢見る者達を集め、怪しい集会を開いたりしていた。
意外にも一男を歓迎する千住。
自身が主催するセミナーやショーに一男を同席させるが、
千住のサギまがいでせこいお金の稼ぎ方に引いてしまう一男。
だが千住は、貧乏人をだまし巻き上げた一万円札を握りしめて言う。
「人類は皆こいつを崇める宗教に入ってしまう、生まれながらにね。」
千住から紹介されたのは、団地に住む人妻、十和子(沢尻エリカ)だった。
九十九の会社では秘書のような存在だった彼女。
彼女もまた、会社買収の際、巨額を手にした幹部のひとりだったが、
それがどういうわけか、ふつうの所得の男性と結婚し団地で暮らしている。
彼女は一男に淡々と語る。
若い頃、現金,アクセサリー,車,マンション・・・数多くの男性に貢がれた。
男どもは金でなんでも手に入ると思い、OKするまでいくらでも貢いでくれたと。
結婚相談所で今の夫を選んだのは、お金に執着心がないから・・・と言う。
だが彼女は一男にだけは見せてあげるといい、おもむろに壁紙を剥がす。
そこには札束がびっしりと詰め込まれていた。
「貯めて貯めて使わずに死んでいく・・・お金ってそういうことなの、あることが重要なの。」
不敵な笑みを浮かべながら語る十和子に唖然とする一男だった。
九十九に近い人物を当たってみたものの、けっきょく九十九の行方は判らないまま。
宝くじが当たり、借金を完済できて、また家族いっしょに暮らせる。
そう思っていたが、それがまた叶わないのか?
ひとときの夢・幻だったのか?
これまでに出会ってきた億万長者たち。
彼らのお金に対する執着と、それに群がる亡者たち。
借金によって奪われた自身のふつうの生活。
お金とは一体なんなのか?
一男のなかで、金に対する思いが複雑に交錯していく。
九十九との大学時代の思い出がよみがえる。
落語研究会、そして二人で行ったモロッコ旅行。
あのときから、九十九はお金に対して、視野が他と異なっていた。
大学を中退し起業したのも、旅行での出来事がきっかけだった。
そんな九十九が、なぜ自分の三億円とともに忽然と姿を消したのか?
まあまあだったかな。
ストーリーは予想していたものと全く違っていた。
藤原竜也のシーンだけがそんな感じで、まったくコメディではない。
概ねシリアスで、ちょっと哲学的な部分もあり、シュールでもある。
自分は大金を手にしたことも、多額の借金を背負ったこともないので、
いまいちリアリティを感じなかったが、実際にはこんななのかな?なんて思えた。
話の流れはいいのだけど、なんだろう?
オーバーな描写で、蛇足な部分があったといえばあったし、
なんだか味気なくて、何かが足りなかったといえば足りなかった。
モロッコの旅行シーンは盛大で良かったと思う。
一男と九十九のふたりの旅行のシーンでは、
お金を語るだけじゃなく、人生や友情,愛情など、金と相対するものも描かれている。
この映画のすべてを表しているといっても過言ではないかもしれない。
主演の佐藤健。
テレビドラマや映画をとおして、ひょっとしたら彼の演技を初めて見たかもしれない。
るろうに剣心で主演したりして人気なのは知っていたが、これまで不思議と見る機会がなかった。
いや、なかなかに巧かった。
イケメン俳優なんだろうが、借金を背負って妻にも逃げられ、
負のオーラ満載のダメ男の役を見事に演じていた。
ちょっと前まで亀梨和也と区別がつかなかった。
九十九役の高橋一生。
不気味な役をやらせたら、中堅俳優ではピカイチかもしれない。
数年前の大河ドラマ、おんな城主 直虎で演じた小野政次以上の、
何を考えているのか解らない、行動の真意が解らない役を淡々と演じる。
九十九は吃音症を抱えており、どもるセリフをうまく演じてた。
しかし落語を披露するときだけ、どもらずに流暢になるとか、そういうのあるのかね?
藤原竜也とは20年くらい前に観たテレビドラマ、L×I×V×Eのときに共演していた。
このときも高橋一生は、チョイ役ながら凄い役だった。
その藤原竜也。
この映画を観に行くきっかけになったのが、千住を演じた彼の怪演。
予告編のとおり、怪しさ胡散臭さ満載のキャラを気持ちよく演じてくれていた。
しかし・・・役作りだろうか?
なんだかでっぷりと肥えているように見えたのだが・・・気のせいか?
主演の佐藤健とは、るろうに剣心で共演していたな。
るろうに剣心は観ていないので詳しくは知らないけれど、
藤原竜也が包帯だらけのラスボス役だったはず。
十和子役の沢尻エリカ。
この映画のちょっと前に観た、食べる女に続き、短い間隔で彼女の出演作を観ることができた。
今回も美人で、ちょっと影ある謎めいた役。
出演シーンが短かったので、深いところまで読むことはできなかったが、
自宅に大金を隠し持ったままで、
お金に興味がない人と結婚し、それが本当の愛なのだろうか?
それもまた、これまで貢いでくれた男たちと同じく、ただの遊びなのか?
派手な生活はせず、質素な生活なままで、大金は近くに置いたまま。
登場人物のなかで、もっとも理解できないお金の使い方だった。
まず家が燃えたらどうするのかと。
池田エライザ。
金持ち男と交友関係を持ち、遊びまくる軽い女役。
携帯に登録した男を、「億男」と「雑魚」に振り分けて付き合うしたたかな女。
乱痴気パーティでのハイヒールシャンパンは、彼女が履いていたもの。
いや、いくら相手が美人で自身が脚フェチであっても、ハイヒールに注いだシャンパンは飲めませんて・・・。
新品でも抵抗あるな。
これまでロングのイメージだったけれど、
髪をバッサリ切っていて、どこかボーイッシュになっていた。
金持ちの男どもをもてあそぶ魔性の女っぽいけれど、
金銭感覚などは、もっとも庶民に近いので、一男を理解して協力してくれる役。
黒木華。
別居中の妻の役。
借金に追われ、お金のことしか考えられなくなった一男に嫌気がさして離婚を迫る。
だがさ、夫が多額の借金を背負ったら、ふつう娘のお稽古ごととか辞めさせるっしょ?
バレエとか、どこの上流階級の習いごとなのよ?
それを辞めさせようとした夫に憤慨して離婚って・・・。
返済に協力するつもりないのなら、借金背負った時点で、離婚ありきで出ていくだろ。
そんな冷酷な妻を黒木華が演じるから、怖さが倍増。
一男は恐妻家だった。
北村一輝。
ひげもじゃ関西弁のデブ男の役。
これだけがミスキャスト。
なんで北村一輝にしたかなー。
そんな風貌のキャラなら、ちゃんとデブで関西弁が似合う俳優さんを起用するべきだった。
勝矢とか駿河太郎とか、このキャラが似合いそうな俳優さん居るじゃん。
意外性を狙ってのキャスティングだったのかもしれないが、自分はこれは受け付けなかった・・・。
しかし、億ねえ・・・。
若い頃、金融機関に勤めていたが、現金で億までは見たことがないや。
数字上では億単位のお金も取り扱っていたけれど、現金では8千万くらいが最高だったかな?
それでも相当な量と重みだったのを覚えている。
単純に、百万円の束が80束だから菓子折の袋いっぱいだった。
そんな大金、これから先、扱うこともないんだろうなあ・・・。
まあ、仮に手に入れたとしても、この映画の主人公みたく、現金化して持ち歩くことはないだろう。
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