うすら寒いこの時期になると、あの絵が描きたくなる…
眠れない時期に始めたクレヨン画です。眠れないのを悩みにすると余計眠れなくなるので、自分に言いました。
「あなたは、寝る間も惜しんで絵を描いている」
何もない世界に手を伸ばして色をのせていく、すると形が現れる、これがおもしろくて夢中になりました。しかし家族は、
「身体をこわすからいい加減に…」
ということで私のクレヨン画は適当になり、つまり描きたいときに描くといった通常の趣味に落ち着いております。
絵を見るのも描くのも好きです。しかし絵を描く基本的な技術はまったくありません。学ぼうともしてません。うまくなりたいという欲がありません。
線を引くのが嫌いです。だから丸を描いて面にして、それを重ねていく自分流です。しかし描き始めて二時間が経つと飽きてきます。でも止められません。
ちょうどプチプチを潰しているような感じになります。止めたいのに止められない。全部潰さないと気がすまない、そういった感覚に似ております。
「ダメだ…こんなことしていたら絶対ダメだ。自分がやるべきことを、早くやらねばならないのだ」
そういった思考が表れてきます。で、食事の支度、お風呂、洗濯をたたむ、作業に流れます。流れるとすっきり、します。
そういったクレヨン絵です。
しかし今日、ある画家に感動しました。
「それって本当の話?」
「うんそうだよ。ほら…ここに」
サピオ(小学館)という雑誌に掲載された映画の紹介記事を見せてもらいました。
ポーランドの素朴派画家、ニキフォルの晩年を描いた映画です。
浮浪者のような老人が、観光客相手に自分の描いた絵葉書を売って歩いております。子どもの頃から言語障害で人とうまく対話が出来ず、その頃からそうして絵葉書を売って生きていたのです。
役所の美術係りに出会い、その絵は、思いがけなく世に高く評価されました。
ただ絵を描くためだけに生きているような人生。きっとその絵には人生のすべての時間がギュッと込められて深い味わいが…と思いきやその絵を見て驚きました。
きれいな色使いで素直な絵であります。老人の書いた絵とは思えない純粋な明るさがあります。
映画はニキフォル(男)役を女優が演じております。それも驚きです。
東京都写真美術館ホールにて「ニキフォル 知られざる天才画家の肖像」
公開中です。
素朴派ニキフォルの絵
20世紀の素朴派にはアンリ・ルソーがおります。
アンリ・ルソーとシャガール博雅堂出版このアイテムの詳細を見る |