若い頃、接待の席で焼酎を飲むのが私には苦痛であった。取引先の手前、息を止めて胃袋に流し込んでいた。ある人の助言で水割りにすだちの輪切りを浮かべるとかなり飲みやすくなることを知った。 安物の芋焼酎の臭いをマスキングするのにすだちの果汁はすこぶる有効であった。それから私は少しずつだが、焼酎に慣れていった。そして大学の同期が贈ってくれた黒木酒造の麦焼酎(熟成酒)の味を受け入れ海外のウイスキーも嗜むようになった。だから私はすだちを前にすると今でも手を合わせたくなるのだ。