雨が上がった後は蒸し暑い。日本酒の水割りを空にした私は棚の肥やしとなっていたブートレッグ「ALL MEAT MUSIC」を取り出してCDプレイヤーのトレイに乗せて再生ボタンを押した。
ローリング・ストーンズの古典的裏名盤として有名だが、若い人に「豚マーク(※)」と言っても分からないだろう。リアルタイムでブートを購入していた連中は既に60歳前後になっているのだから(笑)
ユニークなジャケット、レア曲収録、数々の伝説を生み出したコンサート会場での隠密録音(決してオフィシャル・リリースされない)などがブートの魅力である。バンドは絶頂期を迎えたと言っても過言ではなく、特にミック・ジャガーとミック・テイラーの活躍が光る。火を噴くようなテイラー節が最期まで堪能できるのがミソなのだ。残念なのはSTREET FIGHTING MANが盛り上がる所でフェイドアウトしてしまうこと。「アホか!」と叫びたくなるが、昔のブートレッグにこの手の欠点はつきものだったのである。
※ビートルズ海賊盤辞典 / 松本常男(講談社文庫 昭和60年 絶版)
TMOQ-Ⅱ(TRADE MARK OF QUALITY-Ⅱ)
トレード・マークのイラストは、葉巻きをくわえた豚である。そのためアメリカでは「シガー・スモーキング・ピッグ」、日本では「スモーキン」あるいは「スモーキンTMQ」(日本のファンは“O”を発音しないことが多い)と呼ばれている。
イラストはTMOQ系の一連のジャケットを手がけたウィリアム・スタウトによるもの。
カラー・ビニール中心だったTMOQ-Ⅰに較べ、Ⅱのレコードのほとんどはレギュラー・ブラック。カラー・ビニールものは73年初頭にプレスされた数種類のみである。ジャケットもⅠとⅡでは異なっている。TMOQ-Ⅱにはスタンプやステッカー・タイプはない。全てスリック・ジャケットである。両者のジャケットの地色はよく似ているが、紙質や色が微妙に違う。
TMOQ-Ⅱのオリジナル盤のマトリックス・ナンバーは1700番台と1800番台。73000番台は基本的にはリイシュー・ナンバーだが、73年に発売されたオリジナル盤のスリックにもこの73000番台は使用されている。また71000番台はTMOQ-Ⅰのリイシュー・ナンバーだが、TMOQ-Ⅱでも同一内容のレコードを同一番号で発売している。
ソースはTMOQ-Ⅰ同様、テレビやラジオのエア・チェックものが多いが、コンサート会場における隠し録りライブも数多い。隠し録りの常として、音質は悪くなる。しかし貴重性という付加価値によりある程度は売れたので、これ以降、他のブートレガーが真似をし、音の悪いライブ盤が出回るようになった。一時期「海賊盤のライブ盤は音が悪い」という定説があったが、このきっかけを作ったのはTMOQ-Ⅱなのである。
この会社は、海賊盤業界に長期間存在しているように思われているが、実際の活動は73年から75にかけての約2年半程度。その後はずっと沈黙していたが、83年にTMOQ-Ⅱ RE-ISSUEとして再登場した。