竹原市を通過する際に“とんど”をいくつも見た。田んぼに高く立てた“とんど”を焼く風習がこの地にはまだ残っている。 私は一度だけ“とんど焼き”に参加したことがある。東広島市の納屋で生活していた頃の話で、大家さんに「ちょっと顔を出してくれ」と頼まれて、隣のO君と暗闇の中を大儀そうに出かけた。 火をつけて餅を放りこんだ。真っ赤に燃える様はある種神秘的であった。案の定、頭と肩は灰だらけになったが、餅は本当においしかった。焼餅を食べるとその年は病気をしないと教えられた。