政府が国民の同意のないまま進める、核燃料サイクルが機能するためには、再処理工場から出る高レベル放射性廃棄物を処分する場所を、どこに押し付けるかが、これからの政府や電力会社の課題となってきます。
核燃料サイクルをあきらめさせるためには、政府の候補地がどこになろうとも、拒否することが必要です。もし、処分場が見つからないまま、再処理工場が稼動すれば、高レベル放射性廃棄物は六ヶ所村に溜まり続けることになります。核燃サイクルは破綻するのです。
逆に言えば、処分場が決まってしまえば、核燃サイクルが回りだすことになります。
ニンビー心理というのをご存知でしょうか?ニンビーというのは英語の頭文字で作られた造語ですが、「自分の裏庭には来ないで」Not In My Back Yardの略で、「施設の必要性は認めるが、自らの居住地域には建てないでくれ」と主張する住民たちや、その態度を指す言葉とされています。日本でも、こういう心理は、発電所や核施設、防衛施設や米軍基地、空港やダム、産業廃棄物処理施設などの建設の際に顕著になっています。
一方で、「自分たちだけ損害を被らなければいい」「住民エゴ」であるとして、反対運動自体が批判の対象になることもあります。これから注意しなければならないのは、国が高レベル放射性廃棄物処分場を決める際に、このニンビー心理を利用してくる可能性が考えられます。
例えば、ある県の過疎地が指定された場合、その地区の方々は当然、反対の意思を表すでしょう。しかし、処分施設は、地下に作られます。危険だという認識は、処分場から距離が離れるにしたがって、原発や基地などよりは、かなり低くなると思われます。
その施設を建設する場合、多額の補助金が県や市など自治体に入るとなれば、広域に、住民の意思の確認がされることになった場合、自分たちの居住地域から建設地域が一定程度離れてる住民が、「施設の必要性があるのだから」と、賛成に回ってしまうことも考えられます。近年の自治体合併で、全国の市や町は広域化しています。過疎地域は当然、住民の数が少ないわけで、広域の投票となると、分が悪くなります。
ですから、今までのように、迷惑施設ができる際に争点となったような、自分が住んでいる場所からの距離や、損得勘定に惑わされずに、放射性廃棄物を安全に保管する方法を議論していかなければならないと思います。
現在の技術では、日本で10万年もの間、動かない地層を探すのは不可能です。ましてや、他の国々に処分場を押し付けることなど、許されることではありません。高レベル放射性廃棄物を安全に未来に禍根を残さないように処分する方法などないのです。
2014年7月19日 「脱原発四日市市民の集い」2014年度第3回原発シンポジウム 園田淳
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます