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Más vale prevenir que lamentar.

核燃料サイクルとは? (2)  ~着々と進む、核燃サイクル施設~

2014年07月20日 | 原発ってなに?
 

本来の核燃料サイクルは、図の右側のサイクルを指します。国や電力会社は、もんじゅの度重なる事故により、この右側のサイクルの実現がいつになるかわからないと見て、むりやり、左側のサイクルを推し進めようとしています。

 

 

1・高速増殖炉もんじゅ    ~破綻した1兆円の実験施設~

 

右側のサイクルに、もんじゅが書いてありますが、もんじゅはじつは実用炉ではありません。実用化のための原型炉と呼ばれているもので、ただの実験施設です。ですから本来ならばここには、もんじゅの次に作られるはずだった高速増殖炉が書き込まれなければならないはずです。

 

つまり、右側のサイクルは、まだなんの施設もないわけで、実験施設であるもんじゅは1Wの電気も作ることができていません。すでに破綻しています。もんじゅは1兆円もの巨額の費用をかけ、日立・三菱・東芝・富士電機の4社が建設しましたが、結局はこの4つの原発企業をもうけさせるためだけの施設となってしまっています。この4社は、1兆円ものお金をかけて、まともな施設を作ることができなかったわけです。

全額、国民に返金して欲しいものです。

 

文部科学省は、このもんじゅを高速増殖炉として使うことをあきらめ、放射性廃棄物の低減のための技術開発をするとしていますが、放射性廃棄物の量を減らしたり、放射能の寿命を短くしたりする減容化の技術は、非常に危険で、実現するかどうかわからず、自民党の中からも、現実には数十年かけてもできるかわからない。文部科学省が狙う「もんじゅの延命策」にすぎないとの意見がでています。

 

 

2・高速増殖炉用再処理施設    ~稼動の目処が立たない研究施設~

 

また、右下の高速増殖炉用再処理施設の研究施設が茨城県の東海村に建設されています。リサイクル機器試験施設(略称RETF)という名前なのですが、もんじゅが破綻したため、800億円以上の費用をかけて建設したものの、まったく稼動する目処がたたないままとなっています。この7日に文部科学大臣が核燃料サイクル研究とは別の活用方法を検討する」と述べましたが、新聞報道によると、「特殊な研究施設のため別の用途がみつかるかどうか不透明だ」とのことで、もちろん、図にあります、高速増殖炉用再処理施設の建設など、計画すらありません。

 

3・再稼動を目指すプルサーマル発電   ~フルMOX大間も工事が進む~

 

つぎに、左側のサイクルは、現在ある軽水炉と呼ばれる原発でプルトニウムを燃やすというもので、事故を起こした福島第一の3号機や、関西電力の美浜3号機、高浜3号機、九州電力の玄海3号機、四国電力の伊方3号機で、実施されていました。プルサーマル発電と呼ばれているものです。

 

この中でも、年内にも再稼動しそうな原発が、玄海3号機と高浜の3号機です。

 

このプルサーマル発電は、軽水炉の燃料の3分の一から4分の一を、MOX燃料を使って発電すると言うもので、もともと軽水炉という原発を設計するときには想定されていない発電方法ですので、専門家からはMOX燃料を使うことによる危険性が指摘されています。

 

このプルサーマル発電とは別に、全ての燃料をMOX燃料として発電するという原発が、今、青森県大間に建設中です。現在、工事の進捗状況は4割程度で、函館市により指し止め訴訟が行なわれている中、着々と建設が進んでいます。このフルMOX原発と呼ばれている大間原発が完成してしまうと、核燃サイクルの実現に向けた政府の方針にさらなる口実をあたえることになりかねません。

 

現状ではプルサーマル発電や大間原発で使用されるMOX燃料を作る再処理工場やMOX燃料工場は完成しておらず、現在、プルサーマル発電をしようとして各地の原発に収められているMOX燃料は、さきほどお話したようにイギリスやフランスの再処理工場で加工されたものです。というわけですから、こちらの左側のサイクルも現状は目処はたっていません。しかしながら、どちらの工場も稼動に向けた準備が進んでいます。

 

4・試験運転中の再処理施設    ~着工から21年、運転可能なのか?~

 

 

青森県六ヶ所村・再処理工場

 

まず、左下の施設が、すでに建物は完成して、試験運転が行なわれている青森県六ヶ所村の再処理工場です。

この再処理工場は、1993年から2兆1900億円の費用をかけ、建設されました。原発で使用された核燃料からプルトニウムとウランを取り出す施設です。

 

上の写真を見ていただくと、いくつもの建物が見えると思います。用地の面積は380万㎡、四日市の緑地公園の13倍以上もの広い敷地に、35もの工場が点在し、各工場は地下のトンネルでつながっていて、高熱で溶かされた核燃料がトンネルの中の配管を通り、次の工程の工場に送られます。工程全体の配管の総延長距離は1500キロメートル、配管の継ぎ目は40万箇所に及びます。

 

原子力ムラの企業が2兆円もの費用をたがいに分け合うため、30社以上の原発企業が建設に関わり、まさにつぎはぎだらけの施設をつくってしまいました。また、うまくいかない理由の一つに、使われている技術が、すでに成功しているフランスの技術ではなく、すでに再処理を断念しているドイツの技術を使っているからではないか、との指摘もあります。

 

当然、トラブルが続出しています。現在、試運転をしていますが、当初、5年前の2009年に試運転が終わる予定でした。その後、20回も延期が繰り返され、昨年末にはさらに1年延長され今年の10月に完成時期が設定されています。産経新聞や読売新聞は、試運転は完了し、いつでも稼動できると報道していますが、これまで、さんざん失敗してきた施設です。稼動できたとしても、作業員の被ばくや環境汚染が心配です。

         

5・MOX燃料加工工場    ~3年後の稼動を目指し建設工事中~

 

最後に核燃サイクルの図の真ん中の施設が、MOX燃料加工工場です。さきほどお話ししました再処理工場で作られるMOX燃料の粉末を原料として、原発で使用するMOX燃料に加工する工場です。2100億円の費用をかけ、3年後の2017年10月の稼動を目指して、再処理工場の隣に建設されています。もし国産のMOX燃料が作られることになれば、各地の原発でMOX燃料が燃やされ、まだ技術が確立されていないMOX燃料の再処理も必要だと、政府や電力会社は言い出すに違いありません。

 

このMOX燃料加工工場の稼動は、プルトニウムを含んだ粉末を使用するため、臨界事故・火災、爆発によるプルトニウム漏洩事故、労働者の被ばくが懸念されます。

 

プルサーマル発電を予定している原発の再稼動、そして、大間原発・再処理工場・MOX燃料加工工場の3つの施設が完成すれば、日本の破滅に向かって、核燃サイクルが回り始めます。

なんとか、止められないものでしょうか?

 

2014年7月19日 「脱原発四日市市民の集い」2014年度第3回原発シンポジウム   園田淳


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