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ウィルス学を学んだのは、医学部の3年生のときでした。
講義をしてくださったのは、私が所属していたオーケストラ部の顧問でもあったM教授。
定期演奏会ではご自身も学生に混じってヴィオラを演奏されていた素敵な先生でした。
最初の講義で、「Virus」は一般的には「ビールス」と表記されることもあるが、学術的には「ウィルス」とするのが正しく、英語では「vairas」と発音するのだと教わったことを、あの日の講義室の光景とともに、いまでもはっきりと思い出すことができます。
私たちにもっとも身近な存在のウィルスといえば、まずインフルエンザウィルスがあげられます。
くわしい名前までは知らなくても、いわゆる「風邪」も、ウィルスによる感染症です。
クイーンのフレディ・マーキュリーの命を奪ったエイズやB型やC型などの肝炎も、そして、子宮頸がんの主な原因もウィルスです。
一方、傷が膿んだり、食物が腐ったり、食中毒を引き起こしている病原体は細菌(Bacteria)ですが、細菌がマイクロメートル(100万分の1)の大きさであるのに対して、ウィルスはナノメートル(10億分の1)と、桁違いに小さい病原体です。
ですから、普通の顕微鏡ではウィルスを見ることはできず、電子顕微鏡が発明されるまで、人類はその存在すら知り得ませんでした。
ちなみに、大気汚染物質で、吸い込むと呼吸・循環器系に悪影響を及ぼすことで近年話題になっている「PM2.5」とは、2.5マイクロメートル以下の微少粒子状物質のことで、タバコ煙も典型的なPM2.5なんですよ。
ウィルスと細菌とのあいだには、もうひとつ大きな違いがあります。
ウィルスは生物の特徴とも言える細胞を持たず、遺伝子のかたまりが膜でおおわれている物体で、単体では増殖できませんが、私たちの生体内に入り込むと、体内の酵素と反応して細胞内へ侵入し、遺伝子のコピーを繰り返して増殖していきます。
ですから、ウィルスに感染したくないのであれば(したい人はいないか・・・)、からだのなかにウィルスを入れなければいいのです。
けれども、電子顕微鏡でないと見えない相手です。
ですから、想像力を働かせる必要があります。
想像の世界で遊びながら、ウィルスという敵と闘う!
そんなゲームがあったらいいのに。
子供達は楽しみながら感染予防の達人になれるし、そんなゲームなら、親も子供を監視せずにすみます。
なにより、正しい感染対策のできる子供達ばかりだったら、学校を閉鎖せずにすみます。
そして、より健全な社会を作るための、頼もしい担い手になってくれるに違いありません。
何事も基礎が大切。
基礎力があれば、新型だろうと応用問題だろうと、解決できるはずです。