時々、病院の玄関先に立って、患者さんたちにご挨拶をしています。
ここだけの話ですが、院内ではこの役を「歩哨」と呼んでいます。
歩哨などと言うとまるで軍隊の見張り役みたいです。
が、実際、感染予防対策として、来院者に手のアルコール消毒とモニターによる体温チェックをしっかりと行ってもらうため、各部署の職員が協力しあって交代で人員を配置し、見張り役を務めています。
通りがかりに他の人が担当している様子を見てみると、たいていは真面目にモニター横に直立不動で立っているようなのですが、私は高級ホテルのドアマンやコンシェルジュになったつもりで、しゃかしゃかと動き回って、患者さんたちに対応しています。
人が来ないときは、玄関の外に出て爽やかな風にあたりながら、体操やストレッチをしたり、ベンチで車のお迎えを待っている患者さんがいれば、9世間話をしたり···
色々と発見や出会いがあるので、楽しいです。
病院職員というのは、その職務の性格上、昼食時さえも、勤務時間内は院外へ出ることはほぼないのですが、ある日、しょっちゅう「お出かけ」している職員がいることに気づきました。
彼は一度、アルコール消毒をしないで入館しようとしたことがあったので、以来、気にかけるようにしていました。
昨日も、彼がお出かけするのを見かけたので、戻ってきたときに声をかけてみました。
「ひょっとしてタバコですか?」
当たりでした。
「なんでわかるんですか?」
そりゃあ、わかりますよ。私、プロですから(笑)
折りしも、禁煙週間中です。
気になっていたことに触れてみました。
「お肌、カサカサして痒そうですね。」
「ああ、これ。尋常性乾癬なんですよ。皮膚科行って薬塗ってるけど、よくならないんだよね」
「やっぱりそうでしたか・・・タバコやめれば、だいぶ良くなると思いますけどねえ」
「えっ?そうなの?」
「はい、有名な話ですよ。皮膚科の先生に言われたことありませんでしたか?」
喫煙は尋常性乾癬を悪化させます。
論文はこちら。
玄関先でのほんの1-2分の会話でしたが、過去に禁煙補助薬を使ってみたことがあるけれど失敗したこと、いまでもタバコをやめたいと思っていることなどを話してくださいました。
「薬局でパッチやガムを購入してくれば、使い方のコツを教えますから、その時は声かけてくださいね」
タバコをやめるべき理由はいくつもあります。http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/essay/WHO20210222.pdf
でも、その人にとって何が一番の理由になりえるか?
そのことを一緒に考えてもらった、考えてくれる人がいる、と感じられる機会があると、禁煙への大きな一歩になるかもしれません。