きんえんSwitter

医者の心の目で日々を綴ります

子供たちと思い出を共有

2024年01月31日 | 喫煙防止教育
コロナ禍以降、ずっとリモートで行ってきた喫煙防止・がん予防教室でしたが、校長をやっている同級生から、今年は是非対面でと頼まれて、先日、4年ぶりに直接学校へ出向いて授業を行いました。

「最初にタバコを使い始めたのは?」という質問が子供たちから出ると、見せているお宝があります。
メキシコのパレンケ遺跡に残されているタバコを吸っている人の壁画レリーフです。

これは以前、私が担当した肺がん患者さんからいただいたものです。
今回は、子供たちに、この患者さんのことも話してあげました。

リモート授業でのパソコンの画面越しでも、このレリーフを子供たちに見せたことはありますが、患者さんについて詳しい話をするのは初めてでした。
直接子供たちと接している教室の空気感が、自然と私の口を開かせた・・・そんな気がしています。

今回はリモートのときのように子供達とのやりとりをビデオに撮っていなかったので、子供たちに話して聞かせた内容を以下に転記します。
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「メキシコに旅行したいんですが、いいですか?センセイがダメだというなら、あきらめます」

肺がんの手術をしたあと、がんが再発し、抗がん剤治療を行っていた患者さんからそんな相談をされたのは、2015年の8月のことでした。

メキシコには以前住んでいたことがあり、お友だちがたくさんいて、会いに行きたいのだとおっしゃいます。

そういうことならばと、旅行ができるように注射日やその後の副作用の出る時期などを逆算したりして、治療スケジュールをたてなおしました。

メキシコといえば、マヤ文明。
人類史上、喫煙のことが記録されている最初の文明であると聞いたことがありました。

『どこかの遺跡にタバコを吸っている人の壁画があるはずなんです。絵葉書でもあったらください』と軽くお願いしました。

幸い患者さんは体調もよく、旅行を楽しめたようでした。

メキシコには仕事で2―3年赴任していたことがある程度なのかと勝手に思っていたのですが、聞けばなんと、今から40数年前、空手の師範として23年間も住んでいたのだそうです。

メキシコ全土に弟子とその孫弟子がおり、毎年10月にはご自分の名前のついた大会が開かれ、1万人以上が集うのだとか。
帰国後も、大会の時期に合わせて毎年メキシコへ。
旅行は、その大会に最高指導者として参加するためであったと聞いて、ビックリしました。

私がうろ覚えだった喫煙レリーフのことを現地の弟子達に尋ねてくださり、パレンケ遺跡にあるものであることをつきとめ、お弟子さんがわざわざレプリカを取り寄せてくださり、お土産に持って帰ってきてくださったのでした。

「がんになってしまったし、先生にもきっと海外旅行なんてダメだって言われると思っていたので、今年は行けないと断っていたんです。髪の毛もこのとおりすっかり抜けてしまったし・・・でもどうしても来て欲しいって弟子たちはいうし、先生からも許可がおりたので・・・だけど、むこうで飛行機降りたらこの頭でしょう。迎えに来たみんながビックリして、俺だけが丸坊主だと目立つからって、弟子たちみんなが大会前日に丸坊主にしてくれたんです。開会式では羽織袴に丸坊主がずらーっと(笑)嬉しくて泣けてきました」

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