健康教育について新聞に記事を書くにあたり、昔の資料を色々と見ていましたら、禁煙外来を受診した中学二年生の女の子との会話を記録していたものが出てきましたので、ここに転記して共有いたします。
彼女のことは、私が禁煙治療に携わってきたなかでとても印象強く残っています。なぜなら、彼女のような子供の場合、数本吸っただけで依存症に陥ってしまうことを私に教えてくれたからです。
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私『初めて吸ったのはいつ?』
Aさん「今年の夏休み中。友だちに誘われて・・・」
『どのくらい吸ったの?』
「二箱くらいかな。」
『最後に吸ったのは?』
「三週間くらい前。もうやめた」
『やめるの、大変じゃなかった?やめられない感じってあった?』
「7本目くらいかな。ハマッタ感じがした」
『病院に行こうって言われて、どう思った?』
「もうやめたから必要ないって思ったけど、話聴くだけでもって言われたから・・・」
『じゃあ、せっかく学校早退してきてくれたんだから、何か訊きたいこととか、知りたいことある?』
「今まで吸ったタバコのせいで、将来、何か悪いことがおこる?」
『二箱ね・・・これからもう吸わなければ、からだには影響はないから心配ないよ。あ、でも、一度味知っちゃったでしょう?麻薬だからね。これからの人生でいろいろ誘惑はあると思う。味を知っちゃった人と知らない人とは、そこが違う。それが一番怖いことなんだよね。また、どうってすすめられたら、どうする?』
「高校卒業するまでは、友だちとか、仲のいい先輩から誘われたら、また吸っちゃうかもしれない」
『どうして?』
「そういう子なら、大人にばらさないだろうし・・・」
『子供だから吸っちゃだめで、大人なら吸ってもいいって思ってるの?』
「・・・」
『吸っていることは、担任の先生が気付いたの?』
「自分から言った。吸ってる子達がみんなバレ始めて、自分から言ったほうがいいと思って。そうしたら、そうか、吸ってるのかって。親が呼び出された」
『それで先生はなんて?』
「どなったりはしなくて、からだのことを心配して、いろいろ教えてくれた。がんになるとか、疲れやすくなるとか、集中力が落ちるとか・・・妊娠したときにもやめられないとか」
『がんとか心臓病は、何年も吸い続けた人がなるんだけど、1本吸っただけでも、体の血管が縮んで、血液のめぐりが悪くなったりするんだよ』
「あ、それ、わかる。足の裏とかが冷たくなってしびれる感じ」
『血の巡りが悪くなれば、集中力もおちるし、運動もできなくなるしね。ごはんもおいしくなくなる。受動喫煙でも、同じ変化がおこるしね。だけど、一番こわいのは、やっぱりハマッちゃうってことだと思う。お父さんやお母さん含めて、今吸っている人たちってみんな、そういうこと知らないで吸い始めちゃって、やめられなくなっているんだよ。でも、やめるための薬はあるから。学校の先生や親御さんと一緒なら、中学生だって必要なら出してあげられるよ』
「あたしのほかにも中学生来る?友だちに教えてあげたい。タバコはもう嫌。しわができるっていうし、長生きしたいし」
『自分のからだは、自分で守ってあげないとね。はっきりいって、お父さんやお母さんだって、あてにはできないから。自分が大切にしてあげなかったら、自分がかわいそうじゃない?自分を守るには、正しいことと正しくないことがちゃんとわかるようにならないとね。そのために今勉強してるんだよ。勉強、置いてきぼりになってない?』
「だいじょうぶ(笑)学校好きだし」
『冬休みあけたら、もう一回くらい来る?』
「ううん、だいじょうぶ。」
『じゃあ、おとうさんとおかあさんに、禁煙治療に来るように勧めてね』