幼少の頃、私は排便すると、水で流してしまう前に必ず親に見せるか、どんな便がどれくらい出たかを報告する習慣がありました。
便の性状は健康状態を把握するための大切なポイントのひとつなので、親がそうしつけたのだと思います。
母校の医大の教授たちは学生の目からすると、みな個性的でした。
消化器科内科の教授は学生たちに「うんこ大好き教授」などと呼ばれて親しまれていました。
うんこ教授の口癖も「自分の体から出たものは、よく観察すべし!」でした。
最近ちまたでもよく聞く腸内細菌の話題。
腸内細菌の働きと、脳の働きとの間には密接な関係があることが、明らかになってきています。
運動することは様々な病気の予防に役立ちますが、その意欲向上にどうやら腸内細菌が一役買っているらしいです。
抗生物質を使って腸内細菌を極端に減らされたマウスを運動させる実験をしてみると、彼らはとても疲れやすく、運動意欲が乏しくなることがわかりました。
これらのマウスでは、脳内のドーパミン生成も鈍っていました。
また、神経を阻害して運動中のドーパミン生成をさまたげると、運動能力は腸内細菌を減少・除去した場合と同じように劣ったというのです。
そして胃腸と脳をつなぐ神経を阻害すると、腸内細菌が正常なマウスでも、同様の運動能力の低下が認められました。
つまり、脳でのドーパミン生成が運動意欲に確かに貢献しており、腸の微生物の構成がその調節に大切な役割を担っていることを意味します。
さらに、2つの細菌・Eubacterium rectale(ユウバクテリウム レクターレ)とCoprococcus eutactus(コプロコッカス ユウタクタス)が生み出す代謝物・脂肪酸アミド(FAA)から作られる神経伝達物質が運動中に胃腸神経の受容体を刺激し、脳のドーパミン生成に至ることもわかりました。
素晴らしい人生を送るために、質の良いうんこを出しながら運動しましょう!
- 1)Dohnalova L, et al. Nature. 2022 Dec 14. [Epub ahead of print]
- 2)Mice With a Healthy Gut Microbiome Are More Motivated to Exercise / TheScientist