第34作品目は、”道化と愛は平行線”(78年6月24日 大阪サンケイホール)
矢代静一=作 戌井市郎=演出
出演者は、角野卓造・吉野佳子・宇都宮雅代・松下砂稚子・高橋悦史・倉野章子・
二宮さよ子・林秀樹・高原駿雄・清水幹雄・本山可久子・中川雅子・
若井俊治
この公演パンフレットに「アトリエの出来たころ」と題して芥川比呂志氏(文豪芥川龍之介の子息)が
文を書いている。書き出しの部分をすこし紹介します。
文学座のパンフレットに原稿を書く。十何年ぶりに書く。そのことで少し興奮している。
あのころ私は文学座のパンフレットを編集していた。あのころ、というのは、アトリエ
が出来たころ、という意味である。
加藤道夫や加藤治子といっしょに文学座へ入った年に、「アトリエの会」というものが
出来た。岩田豊雄先生の命名による。「勉強会」と「フランス演劇研究会」と二筋に
なっていた私演会を、一つにまとめたのである。
これは、有楽町駅前の毎日新聞社のホールでやっていた。地の利がいい。
矢代静一にはじめて会ったのも、そのころである。
・・省略・・
「ぼく、俳優座の矢代です」
「はぁ。文学座の芥川です」
両方とも、駆け出しだから、まず暖簾を出し合ったのを覚えている。
翌年、信濃町の稽古場が出来た。
本公演では上演しにくい前衛的、実験的な芝居をやり、兼ねて演技の練磨にはげむのが
アトリエの会の主旨であった。理念が先で、建物は後である。矢代が来た。
新しい稽古場もアトリエと命名された。
アトリエでの最初の稽古は『娼婦マヤ』であった。
・・・・・・・
第35作品目は、”日の浦姫物語”(78年10月3日 大阪毎日ホール)
井上ひさし=作 木村光一=演出
出演者は、杉村春子・菅野忠彦・金内喜久夫・新橋耐子・三津田健・宮崎和命・矢代寿子
安井裕美・三木敏彦・塩島昭彦・熟田一久・戸井田稔・青木勇嗣・七尾伶子・
神谷和夫・鵜沢秀行・藤堂陽子・赤司まり子・梅沢昌代
この公演パンフレットにも「四半世紀前のアトリエ」と題して劇作家・矢代静一氏が文を
寄せている。
その最初の部分を紹介します。
「道化と愛は平行線」を書きあげ、演出の戌井さんと配役について相談した。
肝心の主人公辻真一郎がなかなかきまらない。戌井さんが言った。
「いま、アトリエで、別役実君の『にしむくさむらい』というのをやっている。
角野卓造君という役者が出ている。見てくれないか」
早速見に行った。ほんとうに久しぶりのアトリエ見物であった。芝居が始まる。
四、五分角野君の演技をみただけで、よし、角野君にやってもらおうと心にきめた。
・・・・(省略)
つづく
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矢代静一=作 戌井市郎=演出
出演者は、角野卓造・吉野佳子・宇都宮雅代・松下砂稚子・高橋悦史・倉野章子・
二宮さよ子・林秀樹・高原駿雄・清水幹雄・本山可久子・中川雅子・
若井俊治
この公演パンフレットに「アトリエの出来たころ」と題して芥川比呂志氏(文豪芥川龍之介の子息)が
文を書いている。書き出しの部分をすこし紹介します。
文学座のパンフレットに原稿を書く。十何年ぶりに書く。そのことで少し興奮している。
あのころ私は文学座のパンフレットを編集していた。あのころ、というのは、アトリエ
が出来たころ、という意味である。
加藤道夫や加藤治子といっしょに文学座へ入った年に、「アトリエの会」というものが
出来た。岩田豊雄先生の命名による。「勉強会」と「フランス演劇研究会」と二筋に
なっていた私演会を、一つにまとめたのである。
これは、有楽町駅前の毎日新聞社のホールでやっていた。地の利がいい。
矢代静一にはじめて会ったのも、そのころである。
・・省略・・
「ぼく、俳優座の矢代です」
「はぁ。文学座の芥川です」
両方とも、駆け出しだから、まず暖簾を出し合ったのを覚えている。
翌年、信濃町の稽古場が出来た。
本公演では上演しにくい前衛的、実験的な芝居をやり、兼ねて演技の練磨にはげむのが
アトリエの会の主旨であった。理念が先で、建物は後である。矢代が来た。
新しい稽古場もアトリエと命名された。
アトリエでの最初の稽古は『娼婦マヤ』であった。
・・・・・・・
第35作品目は、”日の浦姫物語”(78年10月3日 大阪毎日ホール)
井上ひさし=作 木村光一=演出
出演者は、杉村春子・菅野忠彦・金内喜久夫・新橋耐子・三津田健・宮崎和命・矢代寿子
安井裕美・三木敏彦・塩島昭彦・熟田一久・戸井田稔・青木勇嗣・七尾伶子・
神谷和夫・鵜沢秀行・藤堂陽子・赤司まり子・梅沢昌代
この公演パンフレットにも「四半世紀前のアトリエ」と題して劇作家・矢代静一氏が文を
寄せている。
その最初の部分を紹介します。
「道化と愛は平行線」を書きあげ、演出の戌井さんと配役について相談した。
肝心の主人公辻真一郎がなかなかきまらない。戌井さんが言った。
「いま、アトリエで、別役実君の『にしむくさむらい』というのをやっている。
角野卓造君という役者が出ている。見てくれないか」
早速見に行った。ほんとうに久しぶりのアトリエ見物であった。芝居が始まる。
四、五分角野君の演技をみただけで、よし、角野君にやってもらおうと心にきめた。
・・・・(省略)
つづく
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