2022年12月16日に岸田文雄政権が敵基地攻撃能力の保有や5年間で43兆円もの軍事費をつぎ込む大軍拡を決めた「安保3文書」の策定から2年です。
15年9月に安倍晋三政権は、集団的自衛権の行使を可能にする安保法制=戦争法を国会で強行し、戦後日本の安全保障政策を法制面で大きく転換しました。
安保3文書は「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」から成り、安保政策を実践面から大転換するものです。国会での自公過半数割れの今、憲法を踏みにじり「戦争国家づくり」を進める企てを阻止することが切実に求められています。
■米の対中戦略追随
3文書決定に先立つ22年10月、米国のバイデン政権は、「国家安全保障戦略」を策定し、同盟国を動員して中国に対する軍事包囲網をつくる「統合抑止」を掲げました。3文書はこれに呼応し、「日米両国がそれぞれの戦略を擦り合わせ、防衛協力を統合的に進めていく」として策定されました。米国の対中軍事戦略に日本を組み込むものです。
3文書は「専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならない」などとごまかしています。しかし、敵基地攻撃兵器として調達が進むのは、中国の内陸部にまで到達可能だったり、音速の5倍以上で飛行したりする長距離ミサイルです。「専守防衛」とは両立せず、「他国に脅威を与える軍事大国」になるのは明らかです。
敵基地攻撃能力保有の狙いの一つは、米軍主導の「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)への自衛隊参加です。IAMDは、先制攻撃を含む敵基地攻撃と敵ミサイルの迎撃を組み合わせたものです。米国が先制攻撃などの戦争を始めれば、日本は集団的自衛権を発動して参戦し敵基地攻撃をすることになります。敵国の報復攻撃を招き、日本国土の焦土化につながります。
日米両政府は7月、在日米軍に作戦指揮権を持つ「統合軍司令部」を新設することで合意しました。陸海空自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」に対応する組織です。情報量でも装備面でも圧倒的に優越する米軍が自衛隊を事実上の指揮下に置くことは必至です。日本の主権を侵害する大問題です。
対中軍事包囲のため米軍と自衛隊の共同訓練が質量とも強化され、南西諸島を中心にミサイル部隊の配備など軍事要塞(ようさい)化が進んでいることも重大です。
■立憲主義壊す暴挙
歴代政府は「平生から他国を攻撃するような兵器」を持つのは「憲法の趣旨とするところではない」としてきました。安保3文書は敵基地攻撃能力保有を違憲としてきた政府見解を百八十度覆す立憲主義破壊の暴挙です。日本は英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の第三国輸出を解禁するなど、憲法の平和理念を投げ捨て「死の商人国家」へ堕落を始めています。
石破首相は3文書の推進を明言しています。しかし今やるべきは軍事的対応の強化ではなく、東アジアを戦争の心配のない地域にしていく憲法9条を生かした平和外交です。新しい政党配置の下、国民の声と運動を強め、「戦争国家づくり」を止めましょう。
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