公園や庭園、家々に広く植えられ、名所も各地にあるアジサイ。色合いや品種も多彩で、古くから親しまれてきました。
いま見頃を迎えているのが、福島・須賀川市の長沼地区にある藤沼湖自然公園に咲く「奇跡のアジサイ」です。ここは水不足に苦しんできた住民が農業用の貯水池として築き、後にダムが建設されました。しかし東日本大震災によって堤が決壊。下流地域に大きな被害をもたらしました。
内陸の津波といわれ7人が犠牲となり1人が行方不明になりました。その後、追悼の意味を込めて地元の人たちが湖底を歩く会を実施。そのときヤマアジサイの群生を発見したのです。
近くの畑に移植すると花が開き、いまは公園を彩るまでに。ダムの完成から数えれば、60有余年も湖の底で眠りについていたアジサイの復活。それは復興のシンボルとして、地域にとどまらず全国の人びとを勇気づけてきました。いまや北海道から沖縄まで、およそ3000本の「奇跡のアジサイ」が株分けされています。
植樹祭やコンサートも開き深めてきた交流。京都・亀岡市ではかつて決壊して多数の犠牲者を出した平和池のダム跡に植えられました。今秋には、同じ地名の長野市長沼の有志が持ち帰ったアジサイが“里帰り”するそうです。
こうした活動を支えてきた深谷武雄さんはいいます。「奇跡のアジサイは震災の伝承とともに、希望の象徴にもなってきた。結んだ輪を大切にしたい」。たくさんの心をつないできたアジサイに込めた思いです。
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