『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

映画 『インセプション』

2014-03-26 | Movie(映画):映画ってさ

『インセプション』
"Inception"
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
2010年・米英

++++

主人公コブは、他人の夢(潜在意識)の中に入りこみ、そこからアイディアを盗み出すという特殊な産業スパイ。

ロバート・H・コブというレストラン・オーナーの夢に入りこんだコブは、オーナーが夢の中で考案中だったサラダのレシピを奪う。

現実世界に戻ってレシピどおりにサラダを作ってみると、これがなかなか美味い。

偶然オーナーと同名だったのをいいことに、コブは現実世界でそれを

「コブサラダ」

として売り出してしまうが・・・。


++++



結局、ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』の何に痺れたかって言うとね。

主人公のケイスが、AIのニューロマンサーによって、あの虚無みたいな浜辺に閉じ込められるシーンなんですわ。


好きだった女の子(実際は亡くなっている)が蘇って、二人きりで浜辺に幽閉されるなんて、それはそれで悪くないじゃんかー。

食料はたまに都合よく砂浜に漂着するしー。

などと、言ってしまいそうになりますが。


砂浜のずーーーーーーーーーーーーーーーっと向こうに、たまに街みたいのが、見えたり見えなかったりするんだけど。

歩いて、歩いて。

近づくと、勝手に遠のいてっちゃって、その街には永遠に辿り着けない。


延々と歩きながら、気付くわけです。

あれは街じゃない。

俺がさっきまで居た掩蔽壕えんぺいごう/航空機の格納庫)が、蜃気楼みたいに投影されてるだけだ・・・。


この世界に出口はないんだ。

あそこが境界線で、そっから先はプログラミングがループして元の場所に戻るだけなんだ・・・と。


伝わりますかね?

この強烈な怖さと、甘美さと、寂しさがッ。


本作『インセプション』でナベケン(渡辺謙)が危うく取り残されかける(実際、夢時間で数十年放置された)虚無は、この世界に非常に近いですね。

砂浜。


そして、崩壊していくかつての構造物、現廃墟。


クリストファー・ノーランは、脚本の執筆にあたり、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの『伝奇集』から着想を得たそうですが。

でもノーランは、絶対に、『ニューロマンサー』にオマージュを捧げていると思う。

それどころか、

夢の一番深層の、あの世界の寂しさが表現したくて、この映画を撮ったとさえ思う。


要するに、

あんなふーな、


こんなふーな、

すんげー特撮シーンはおまけみたいなもんだと言うことです。



あー、しかし、やっぱ寂しいなぁ。

夢に置き去りにされて、独りぼっちで老いていくのは。



だから、コブ(レオナルド・ディカプリオ)がナベケン(渡辺謙)をリスク覚悟で連れ戻しに行く時。

ホッとすると同時に、

そりゃあ虚無に落としたまま置いていくって、ある意味それは殺人より何倍も重罪に思えるので、

当然と言えば当然やなぁと。


良かった。

無事、ナベケンが旅客機に戻れて良かった。

日本人であるという点を置いても、誰かが虚無に落ちて出られなくなる姿なんか見たくなかった。


しかし、搭乗した旅客機もファーストクラスだったから良いけど。

俺だったら絶対エコノミーなんで、寝てる間に隣の人の肘とか当たって。

それが「キック」判定になって、すごい変なタイミングで目が覚めちゃうであろう。

ややこしい。

 

それにしても、コブが何度も何度も見せられるあの幻影。

庭で遊んでる子どもたちが、振り返りそうで、振り返らなくて。

今生の別れを前に一瞬だけチラッとでも顔が見たいのに、見れなくて。

あの寂しさ・・・。

昔の自分なら全く分からなかったと思うなぁ。

寂しい、寂しいよ、この映画。

 
頼む・・・!

 
まじで・・・!! 



■おまけ

 
もとより、少数精鋭チームものに目がない俺ですが。

 
本作は俳優陣も俺好み。

まあ、ノーラン組ということですが。

 
エレン・ペイジの出演には驚かされました。

『老けロリータ』(勝手に命名)という唯一無二の魅力。

妻モル(マリオン・コティヤール)からコブを奪還するシーン。

効いてたと思う。

貴女は、男たちに

「この娘はなんかある!」

と幻想を抱かせてくれる女の子。


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レオナルド・ディカプリオ,渡辺謙,ジョセフ・ゴードン=レヴィット,マリオン・コティヤール,エレン・ペイジ
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ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)
ウィリアム・ギブスン,黒丸 尚
早川書房
原作って訳じゃないよ(笑)

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