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『インセプション』
"Inception"
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
2010年・米英
++++
主人公コブは、他人の夢(潜在意識)の中に入りこみ、そこからアイディアを盗み出すという特殊な産業スパイ。
ロバート・H・コブというレストラン・オーナーの夢に入りこんだコブは、オーナーが夢の中で考案中だったサラダのレシピを奪う。
現実世界に戻ってレシピどおりにサラダを作ってみると、これがなかなか美味い。
偶然オーナーと同名だったのをいいことに、コブは現実世界でそれを
「コブサラダ」
として売り出してしまうが・・・。
++++
結局、ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』の何に痺れたかって言うとね。
主人公のケイスが、AIのニューロマンサーによって、あの虚無みたいな浜辺に閉じ込められるシーンなんですわ。
好きだった女の子(実際は亡くなっている)が蘇って、二人きりで浜辺に幽閉されるなんて、それはそれで悪くないじゃんかー。
食料はたまに都合よく砂浜に漂着するしー。
などと、言ってしまいそうになりますが。
砂浜のずーーーーーーーーーーーーーーーっと向こうに、たまに街みたいのが、見えたり見えなかったりするんだけど。
歩いて、歩いて。
近づくと、勝手に遠のいてっちゃって、その街には永遠に辿り着けない。
延々と歩きながら、気付くわけです。
あれは街じゃない。
俺がさっきまで居た掩蔽壕(えんぺいごう/航空機の格納庫)が、蜃気楼みたいに投影されてるだけだ・・・。
この世界に出口はないんだ。
あそこが境界線で、そっから先はプログラミングがループして元の場所に戻るだけなんだ・・・と。
伝わりますかね?
この強烈な怖さと、甘美さと、寂しさがッ。
本作『インセプション』でナベケン(渡辺謙)が危うく取り残されかける(実際、夢時間で数十年放置された)虚無は、この世界に非常に近いですね。
砂浜。
そして、崩壊していくかつての構造物、現廃墟。
クリストファー・ノーランは、脚本の執筆にあたり、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの『伝奇集』から着想を得たそうですが。
でもノーランは、絶対に、『ニューロマンサー』にオマージュを捧げていると思う。
それどころか、
夢の一番深層の、あの世界の寂しさが表現したくて、この映画を撮ったとさえ思う。
要するに、
あんなふーな、
こんなふーな、
すんげー特撮シーンはおまけみたいなもんだと言うことです。
あー、しかし、やっぱ寂しいなぁ。
夢に置き去りにされて、独りぼっちで老いていくのは。
だから、コブ(レオナルド・ディカプリオ)がナベケン(渡辺謙)をリスク覚悟で連れ戻しに行く時。
ホッとすると同時に、
そりゃあ虚無に落としたまま置いていくって、ある意味それは殺人より何倍も重罪に思えるので、
当然と言えば当然やなぁと。
良かった。
無事、ナベケンが旅客機に戻れて良かった。
日本人であるという点を置いても、誰かが虚無に落ちて出られなくなる姿なんか見たくなかった。
しかし、搭乗した旅客機もファーストクラスだったから良いけど。
俺だったら絶対エコノミーなんで、寝てる間に隣の人の肘とか当たって。
それが「キック」判定になって、すごい変なタイミングで目が覚めちゃうであろう。
ややこしい。
それにしても、コブが何度も何度も見せられるあの幻影。
庭で遊んでる子どもたちが、振り返りそうで、振り返らなくて。
今生の別れを前に一瞬だけチラッとでも顔が見たいのに、見れなくて。
あの寂しさ・・・。
昔の自分なら全く分からなかったと思うなぁ。
寂しい、寂しいよ、この映画。
頼む・・・!
まじで・・・!!
■おまけ
もとより、少数精鋭チームものに目がない俺ですが。
本作は俳優陣も俺好み。
まあ、ノーラン組ということですが。
エレン・ペイジの出演には驚かされました。
『老けロリータ』(勝手に命名)という唯一無二の魅力。
妻モル(マリオン・コティヤール)からコブを奪還するシーン。
効いてたと思う。
貴女は、男たちに
「この娘はなんかある!」
と幻想を抱かせてくれる女の子。
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ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF) |
ウィリアム・ギブスン,黒丸 尚 | |
早川書房 原作って訳じゃないよ(笑) |