『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

夜間飛行氏、サンフランシスコでシティライツ書店を再訪する

2023-10-21 | Life(日常):書いとかないと、忘れちゃう

ひょっとすると毎回、同じセリフから書き始めているかもしれませんが・・・。


米国東海岸から西海岸への空路は、何故6時間45分もかかるのでしょうか・・・。

国内の空の便で7時間弱というのは、やはりこの国の巨大さを思い知らされます。

デルタ便が照明を落として我々乗客を寝かせようとしてきますが・・・、実際はお昼ですので。


さて、到着。

San Francisco の Nikko に居て、移動日だと言うのに本日の自由時間はたった1時間。


普通なら部屋でコーヒーでも飲んで、ちょっと横になって体を休めたりする感じの枠なんだろうけど・・・。


1985年、「シスコはロックシティ」とスターシップは歌いましたが。

私にとって、シスコはブックシティ。

勘の鋭い菅野美穂ならばお気づきのとおり、シティライツ書店に行きたい。

思えば前回の訪問から、あっという間に数年が経ってしまいました。


距離的にはホテルから徒歩で25分。

幸い私には『ちょこちょこダッシュ』という必殺技があり。

一見、普通に歩いているような見た目のまま、実際は両足が高速回転でダッシュしているという離れ業です。


ダッシュを始めて5~6秒の時点が最も早く、瞬間的ですが秒速9.7メートルの速度に達します。

100m走に換算すると10.3秒。

これは1930年にカナダの陸上選手、パーシー・ウィリアムスが出した世界記録(当時)に相当します。

どうでしょう。

私のちょこちょこダッシュのスピード感を理解していただけたでしょうか。


ちょこちょこダッシュを使えば往路に15分、帰路に15分。

1時間あれば、店内を30分は物色できよう。

さすればッ!


メイソン・ストリート、パウエル・ストリート、ストックトン・ストリート。

どの道を通るにせよ、まずは北上。

パウエル・ストリートならケーブルカーに乗れますが、飛行機移動の後だし少し体を動かしたい。

今回はメイソン・ストリートにしておこう。


道は間もなく住宅街に入る。

言うまでもなく、サンフランシスコは坂の街。

なんだ坂、こんな坂♪(ポンキッキーズ)


この街を歩くと、自然とアキレス腱が伸び切ります。

嗚呼、先ほどまで機内でちじこまっていたアキレス腱が、歩くだけでストレッチされていく・・・。


カリフォルニア・ストリートにぶつかると、ノブヒルのてっぺん辺り。

パシフィック・ユニオン・クラブが入っている、James C. Flood マンションが目印で、こっからは下りになります(ホッ)。

左奥の白い建物はグレース大聖堂。

元の大聖堂は1906年のサンフランシスコ地震で崩壊し、今見えているのは寄贈されたこの土地に建てられた、比較的新しい建物です。

さて、今度は坂道をとことこ下る。

このくだりも意外とあるのだ・・・。


到着。やったぜ、ベイビー。


国内外を問わず、小生にとって本屋とレコード屋ほどリラックスできる空間はありません。

リラックスしすぎて、うん〇が出そうになる。

そんな事さえあります。


ちなみに、棚の上、手間にある The Birth of Rock 'n' Roll: The Illustrated Story of Sun Records and the 70 Recordings That Changed the World (2022) は、エルヴィス・プレスリー、ジョニー・キャッシュ、ロイ・オービソンなど多くのスターを輩出したサン・レコーズの歴史を追った本。

とっても読み応えのある素敵な本です。


カポーティの『冷血』。

冷血は元は1965年に雑誌ニューヨーカーに4回にわたり連載され、翌66年にランダム・ハウスから出版されました。


これは Vintage が94年に発売したバージョンですが。

うーむ・・・、あの内容でこのジャケってどう思います?


小生が憧れて止まない、あの中二階のオフィスを見上げると。

手前の棚の上段に素敵な光景が・・・。


ルイーズ・グリュックの『マリーゴールド・アンド・ローズ』(2022)と、


バーバラ・キングソルヴァーの『デーモン・コッパーヘッド』(2022)に挟まれて、


村田沙耶香さんの短篇集『生命式』みっけ。

双方ピュリッツァー賞受賞の女性作家に囲まれている。

本邦の作家の活躍は、故もなく勝手に嬉しくなってしまいます。

たかが書店の配列と言うなかれ・・・ここ、シティライツですから。


なお、『生命式』のジャケットについては。

UK版(Granta Books)、US版(Grove Atlantic)ともにキャッチーさとグロさを上手にミックスした仕上り。

フィナンシャルタイムズの書評も好意的でした。




なお、つい3年前にノーベル文学賞も受賞したルイーズ・グリュック ですが・・・、

先週の金曜日にマサチューセッツ州ケンブリッジの自宅にて、癌でお亡くなりになりました。

80歳、米国が誇る桂冠詩人でした。



Hで始まる作家の辺り。(変な意味じゃない)

コロナ期間に、うちの本棚に眠ってた大量のヘミングウェイも読んだんですよね。

でも、あんまり集中できなかったね、コロナ禍では、なんだか。



面陳は The Hemingway Library Edition の『A farewell to Arms』(2012)と、


『The Short Stories of Ernest Hemingway』(2018)。

このヘミングウェイライブラリーというのが色々、オマケが付いてる事が多くて。序文とか。

内容的に本編は持ってても、編集し直して出されるとまた欲しくなります。

このトラディショナルなジャケもイイですね。


この辺(『S』の棚)も、とりあえず、面陳の作品は近年の話題作が多い。

スリランカ系米国人女性作家、SJ Sindu の Blue-Skinned Gods(2021)

サンフランシスコ・クロニクルで2012年のベスト100ブックスに選ばれた Robin Sloan の Mr.Penumbra's 24-Hour Bookstore (2012)

Anthony Veasna So の Afterparties: Stories (2021)

急に、John Steinbeck の The Grapes of Wrath (1939)

これは2002年にペンギンから出た、スタインベック生誕100周年エディションです。

John Elizabeth Stintzi の My Volcano (2022)

Emma Straub の The Vacationers (2015)


エマ・ストラウブ の ヴァケイショナーズは ジャケがすごく可愛くて。

結婚35周年でマヨルカにヴァカンスに訪れる夫婦と、その友人・家族をめぐるてんやわんやのお話なんですが。

エマ自身もとってもキュートな方ですが、だいたい私は水色のものに非常に弱いのです。


さて、1953年に全米初のオール・ペーパーバックの書店として創業したシティライツ。

現在はペーパーバックとハードカバーの両方を扱いつつ、詩、小説、外国小説、政治、歴史、哲学、スピリチュアルとジャンルを広げています。

詩人のローレンス・ファリンゲティと ピーター・D・マーティンによって設立された出自からして、メインは2Fのポエムであるが。(フロアは1Fの方が広い)

あんまし時間が無いのと、数年前の記事で2Fの事は書いた気がするので、今回は大省略。



当然ながら、シティライツも坂の途中に建ってます。

従って、向かって右側の入り口から店内に入ると、レジのある左側に向かって少し下りの段差が有ります。


ちなみにシスコの治安はめっさ悪化しており、外を出歩く時は車を使ってくれと今回も厳命されました。

特にチャイナタウンの辺りは、ダメ、絶対、と。


はい、正にここがチャイナタウンです。

一人で歩いて来ました。


シティライツの向かいの道でも、かなり露出度の高い(ここは表現に気を付けて書いてますが、実際問題アレが出てました)ホームレスが道の真ん中で寝てました。

でも、やっぱり街は歩かないとつまらない。

大丈夫、ちょこちょこダッシュあるから。


さて、束の間の休息はおしまい。

急いで帰りましょう。

打合せのあと、食事。


晩御飯はタンジネス・クラブ(アメリカ・イチョウガニ)。

ガーリックバターとブラックペッパー風味にほどよくローストされ・・・。

世の東西を問わず、カニを食べる時、人は無言になります。

静粛の中、

パキッ、

バキバキ、

むしゃむしゃ・・・、

ゴックン、

カニを割って食べる音と、ワインを飲み干す音だけが小さく響くのでした。


夜も更けて。

向かいにヒルトン系のホテル、Parc 55 が見えます。

明日も早くから仕事。

昨日までのメモは昼に機内でまとめた。

ワインで酔っているが、明日の打合せの予習をしてから寝よう。


次回もまた。

サンフランシスコに来たら、短い時間でもシティライツに寄りたいなと。

その時、自分も元気でいたいし、店も元気であってほしいなと。

ベッドに潜り込みながら思うのでした。


※ちなみに、ブログ表紙の写真はシティライツの外観ではないので念のため。

信号待ちが長かったので暇つぶしに撮った写真です。
 
(誤解を与えるかも、と今気づいたのだった)


<おしまい>


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