『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

上高地より愛をこめて 2023 その3

2023-10-09 | Life(日常):書いとかないと、忘れちゃう

書いた本人も、まさか3本にも分けて上高地の事を書くとは思っていなかった。

これは上高地の素晴らしさのせいもあるが、一重に小生が「文章の終わらせ方が分からない」からである。


文章だけじゃない。

深夜のアイロンがけ。

これも終わりが分からなくなって延々やってしまう。

何もこんな深夜に、明日着ない服までアイロンをかけなくたっていいだろう。


読書だって、止め時が分からず延々読んでしまう。

(だって私が寝ている間に、マーロウが事件を解決してしまうかもしれない)


一人飲みのときのお酒。

ダラダラと続く友情。

なんならこのブログだって、終わらせ方が分からずにもう何年も経っている。



しかし、何事にも終わりはある。

そんなわけで、この素晴らしい土地に関する文章もそろそろ締めにかかろう。


山賊焼きのことを書くのを忘れていた。

(見た目が山賊みたいなベロンの事は書いたが・・・)

山賊焼きはニンニクやショウガを使ったタレに鶏肉を漬けこみ、カラッと揚げる信州名物である。

カレーにこれをトッピングした山賊焼きカレーも捨てがたい。


この10年くらいかな。

私は何処へ行ってもお土産を買い過ぎてしまう癖がついたのだが。

上高地に限っては毎回お土産はおさえ目。

わざわざ山まで運び込まれたものを、大量にしょい込んで下山するのも無粋な気がして・・・。

東京に帰ったら、この マルマン の上高地版スケッチブックに何を描こうかしら。

(絵を描くのが好きなのです)



さて。

長々書いた文章。

最後に、なぜ自分はこうも上高地が好きかを書いて締めくくりたいと思う。

思う。

・・・のだけれど、なかなか言葉が出てこない。

何か一つスパっと理由を挙げて答えるような事ではないのかもしれない。


少々唐突だが。

ここにヘミングウェイが「キューバが如何に好きか」を綴った小文がある。

『大きな青い河』という文章で、1922年にトロント・デイリー・スター誌に掲載されたものだ。

キューバでの釣りがテーマなんだけど、書き出しでキューバの魅力全般について語る部分がとても奮っていて大好き。


何が面白いかと言うと、キューバの魅力を「こういう事は教えてやる必要はない」という趣旨で挙げ連ねるのだ。

イントロのみ、ちょっと以下に引いてみたい。


朔風社の『ヘミングウェイ釣文学全集』下巻で読めます。


++『大きな青い河』++

何故キューバにすんでいるのかと人に訊かれれば、

君はキューバが好きだからと答える。


夏の真盛りでも毎朝涼しく爽やかな、

ハバナを見下ろす丘陵地での早朝について語るのはあまりに煩わしいのだ。


そこに住む理由の一つは、

自分の闘鶏を育て、

農園で技を仕込み、好敵手がいればすぐその場で闘わすことができるうえに、

これらのことをしても全く法に触れないからだ、

などと話してやる必要もない。


そんなことを訊く人はどうせ闘鶏など好きでないかもしれない。


一年中農園に居る一風変わった可愛らしい鳥たちのことも、

遥々とやって来る渡り鳥のことも、

朝早く水泳プールに水を飲みにくる鶉(うずら)のことも、

プールの端にある草葺の四阿(あずまや)を棲処にして餌を漁っている種々の蜥蜴(とかげ)たちのことも、

自分の家に至るまでの長い緩斜面に生えている十八種のマンゴーのことも、

そういう人に話はしない。

++++


うーん、分かる。

なんだか、分かっちゃいますね。

そこでの暮らしは満ち足りていて、魅力に溢れているけど、本気の興味もない質問者にそれらを全部伝える気力が湧かないという、この感覚。

(文章はこの後、キューバでのマーリン(カジキ)との闘いの話に移っていく)


・・・と、文豪の100年前の作品からの唐突な引用でもって、上高地の魅力について語るのを「大省略」。



でも、さすがに少しわかった事がある。


延々続く鬱蒼とした小路を抜けると、森がひらけ、遠方に穂高連峰が現れる。


どうも、この土地の「閉じ」と「開き」の繋がった連続に自分は惹かれているようだと気づいた。

そんな今回の旅だった。


<おまけ>

足元の流れ。

水面に映る木々の緑。

その脇に、ひれを揺らして流れにとどまる魚影をみとめて。


おしまい。



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