『不連続の世界』
恩田陸(日:1964-)
2008年・幻冬舎
2013年・幻冬舎文庫
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「俺たち、立派なミッドライフ・クライシスに突入してるってことだ。
「えっ?」
「こんなことやってんのも、中年の悪あがきさ。
夜行列車で怪談やって、さぬきうどん。
人生の後半に差し掛かったことに動揺してるんだ」
「そうかな」
「そうさ。
俺だって、結婚に失敗して、家庭を築くことに失敗した。
本人の感覚としてはまだ人生が始まっていないつもりなのに、世間的には立派な中年だからな。
時々空恐ろしいような気分になる」
『夜明けのガスパール』
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長くブログをやってると、その間に生活や趣味も変わる。
恩田陸もすっかりごぶさた。
この本、『不連続の世界』が発行された2008年は、ちょうどこのブログを始めたころで。
当時「読もかな?」と思っていたことをふと思い出した。
相変わらず、
①サクッと読めて
②どこかに必ず「お?」と思うような一節があり
③細かい整合には筆者があまりこだわらず
④読んだ方も読後に全ストーリーをサラッと忘れられる
という恩田作品で素晴らしい。
先週読んだのに、もうこの本のことを何も覚えていない。
いや、いい意味で。
抜粋したミッドライフ・クライシスのやり取りは、ストーリーの核心とは関係ないんだけど。
ちょっと感ずるものがあった。
中年男性4人が夜行列車に揺られ、酒を飲みながら語らっているシーンなんだけど。
直前に、こんなやり取りがある。
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「またビール買ったのか」
「チェイサーさ」
同じ返事をして、肩をすくめる。
「何考えてたんだ」
黒田は多聞の隣で窓に寄りかかった。
「さあね。ぼんやりしてた。
こんなふうに、列車にはこばれていくうちに、いつのまにか人生の終点についてるのかなって」
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どんなに毎日の生活を自分で切り開いているつもりでいても、
人生には「列車にはこばれていく」ような側面はあると思う。
「列車」は「時間」に置き換えてもいい。
願わくは、終点までの旅が楽しいものであることを。
ところで。
文体こそ全く違えど、恩田陸にはどこかチャンドラーめいたところがある。
ストーリーと関係のないエピソードが、あまりにも多すぎるのだ。
例えば、今回抜粋した『夜明けのガスパール』に出てくる、男性の胃にできた腫瘍から女の髪の毛がドッサリ出てくる話。(魚ギョ!)
普通、そっちでホラー短編を一つ作るよねぇ。
アイデア出し惜しみ無し。
太っ腹で素敵。
■恩田陸
・『光の帝国 常野物語』 (1997年・集英社)
・『図書室の海』 (2002年・新潮社)
・『蛇行する川のほとり』 (2004年・中央公論新社)
・『ネクロポリス』 (2005年・朝日新聞社)
・『中庭の出来事』 (2006年・新潮社)
・『いのちのパレード』 (2007年・実業之日本社)
・『きのうの世界』 (2008年・講談社)
<熱帯雨林>
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