学校から帰ってきた娘が落書帳に向かっている。
手元をのぞき込むと、『へのへのもへじ』を書いていた。
小1らしい正しい落書である。いつものようにさっと手もとをかくそうとするが、
大きな『へのへのもへじ』だったので まる見えである。
たいていは見て見ぬフリをするが、物が古典的正統な落書だったからなのか
また 輪郭にあたる『じ』が違っていたからなのか
ナゼか 口を出してしまった。
「おしい!マーちゃん」 「この じ の所、もう少し コウシタライイゾ」と
言ってしまった。
この子は 少しだけへそ曲がりで チョットばかり頑固で
もうチョット意地っ張りだから、当然の反応として、
★これで良いのである。 ★私はいつも こう描いている!
★ウソだ!おとうさんの言っていることは嘘である!という様な事を反論してきた。
私も、一応 この子の血のつながった親である。へそも曲がっていれば、
意固地でもある。それに真っ当な事を言って 嘘つき呼ばわりされた
ものだから 瞬間的に逆上して
★こうした方が、顔に見えるだろう! ★昔からこう描くように決まってる!
★嘘じゃない!これが本当だ!などと 子供同士の様な言い争いになって
しまったのである。
そして二人の争いがピークに達しようとする まさにその時、
五年生の お兄ちゃんが帰ってきた。
「おぉ!兄ちゃん。丁度良かった。」 「チョットこっちに来てくれ」
新しい紙の前に呼び寄せて 「兄ちゃん、お前★へのへのもへじ★知っとるやろぅ」
「知っとるよ」
娘を見てニヤリとする父親。
どうせ素直に自分の負けを認めるはずは無いが、少なくとも嘘つきの汚名は
返上できる筈だ!フフフ、どんな言い訳をするのか楽しみだ。
彼女のほうも 今日もダマサレナイから ウソ!ウソ!嘘つき!と
片眉を上げにらみ返して来る。
訳も判らず ランドセルを背負ったままペンを持たされ 当惑気味の兄ちゃん。
二人の無言の圧力が 彼の手元に注がれる。 ガンバレ兄ちゃん、正義のために!
ペンのキャップをはずし、おもむろに、一字、一字、丁寧に描いてゆく 『へもへももへじ』
ん?
へ、も、へ、も、も、へ、じ??
ん?ん??
私は、娘を見た。
そこには 私と同じように 眼を見開きパチパチまばたきをし ゆっくり,
しかしカクカクと私の眼を見ながら首が傾いでゆく娘の顔があった・・・
父 「おいおい、マジ?」「何だこれ、マジかよォ」
兄ちゃん 「え!なに???」
父 「これ、本気で描いたの?」
娘 「信じられん!」
兄ちゃん 「何で、なんで?」と 二人の顔を 診くらべる。
再び、顔を見合わせる●父娘● 「だって。ねー、マーちゃん」 「ねー、おとうさん」
―こうして再び平和おとずれた―
愚痴
それにしても なぜ、へのへのと呪文を唱えつつ へもへもと書くことが出来るのだろうか?
わが子ながら、天然すぎてコワイ。 ◎もう小五ですからねぇ・・・
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