リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

風の人、土の人。病院の風土。

2006年11月03日 | Weblog
 活躍されている先輩医師。とてもグローバルにダイナミックなキャリア形成や生き方をしている。休みの取り方や勉強の仕方、外へのアピールの仕方などとてもかなわないが、まねをできる部分はこっそりまねしたいと注目している。

 「20年間夏休みをとったこともない」ことや「36時間連続勤務常態化」を自慢(
というか自嘲か?)するような風土をあらためないことにはどうしようもないという話になった。

 だから来春から研修医や若手医師の多い総合診療科だけでも、主治医制からグループ制、夏休み2週間(うち1週間は他の病院見学や研修、勉強にあてる。)当直の翌日はDutyから解放し午前で上がれるようにしようという話がすすんでいるようだ。

 医療の世界も変化しているので、その場にとどまるということはおくれていることでしかない。多様性を失い、進化することができなかった種は絶滅するしかない。かつての恐竜のように。

 かつては全国に名をとどろかせたこともあるこの病院も、まもなく過去の栄光は失われ、人が集まらない普通の田舎の病院になるだろう。

 優秀な人材を確保し、育てるためには能力給、年俸性にせざるを得ない。そうしないと優秀な人から逃げ出してしまう。

 組織内での働き方が「全員が一緒に仕事を取り組む」というスタイルから「仕事の分担と責任の範囲を明確に定める」というスタイルに変化してきている。各人の能力が最大限発揮できるように業務内容や分担をはっきりとうちだしてく必要がある。

 職種や科も重要だが、個人個人に目をむけることはできないのだろうか?と思う。7:1看護を実現するために外来から看護師を動かしたり、という人をコマとしか見ていないような強引な人事異動は目があまる。
 
「人事とはそういうものだ」といえばそうなのだろうが、あまり強引なことをやっていると組織自体が瓦解してしまうだろう。職員は病院が信じられなくなってきているし病院も職員が信じられなくなっている。

 組織の中では見よう見まねでMBOなども導入されているようだが将来のビジョンや全体的なマネジメントが見えず、全体の中での自分の果たす役割というのがわからないのであまり効果をあげていないように思われる。

 病院の再構築(リストラクション)を本気ですすめるならば、組織の再編成、院内コンビニや保育の仕組み、育児休暇等の整備も急務だ。

 せっかく育った初期後期研修医も技術を身につけ終了するころになると、残念ながらみんながいかにこの病院を去るかという話になる。近い年次の人を育てるという連鎖が切れてしまうと、先が苦しくなるだろう。これは非常に危機的な状況だと思う。

 世界を見据えた壮大なビジョンを持っている人もいるのだが、それが意思決定に反映されず、現場レベルで共有されていない。ただただ忙しくなる業務に忙殺され、手段の目的化が著しく現場は混乱している。
 
 このような状況の中、患者に誠実かつ自分に正直であることが困難になってきており、不全感と疲労の中で、ひとり、またひとりと立ち去っていく。

 地域の病院には、地域の産業、雇用創成という役割があり、それをはたさなくてはならないし、医療福祉の情報以外の部分はネットワークで運べるものではないのでそれぞれの地域で育てていくしかない。病院は地域の最後のセーフティネットである。
 
 その土地で生きるしかないひとと、自由に飛び回る人の2種類がいる。あるひとはそれを風の人と土の人といった。お互いに違う人種だがそれぞれがそれぞれを認め合い活かすことで風土がうまれた。

地域をかえる3つのものは「よそ者」「若者」「バカ者」であると聞いた。新たな種をはこぶ風の人を活かすことのできない土地や組織は寂れていくしかないのだろうか。

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