アルツハイマー型認知症に対する薬剤であるアリセプトという薬をだしているエーザイが日本テクトというメーカーと作った「DT-Navi」という商品のデモがあった。
専用のタッチパネル端末を使うことで検査に慣れていない検査者でもHDS-RやADAS-JCog、BEHAVE-ADという認知症に関わるスケールを手軽にとるということができるという。
ちなみにADAS(Alzheimer's Disease Assessment Scale )というのは、アルツハイマー型認知症の中核症状に焦点をしぼった心理検査であり、被験者にもよるが一連の検査をするのに約40分はかかるめんどくさい検査である。
認知症の薬の治験(臨床試験)では必ず施行するもので、当院でも治験の際にはおこなっていた。
心理検査として診療報酬が450点(4500円)を算定できる。
しかし、このDT-Naviを導入するにに初期費用の本体価格を198000円、月々のシステム保守管理費が7500円に加え、一回あたり900円の利用料がかかるという。(プレスリリースを見ると本体価格はもともと1,300,000円だったようだ。さすがに値下げした?)
しかしこんなものを売りつけた上に維持管理費としてお金をとって売ろうとする根性に呆れてしまった。
そもそもADASは実際の臨床では必須ではないし、たとえADASを取るにしても結局検査者は必要であり、ほとんど時間の短縮にもならない。
専用端末もiPad2などのスマートで薄いタブレット端末が出ている時代なのに、いかにももっさりと大きい。
タッチパネルの反応も悪く古いATM機器のようで10年前の製品という感じだ。
また3Gなどのデーター通信のための機能も内蔵しておらずインターネットの接続も必要だという。
どこに専用である必要があるのだろうか?iPhoneアプリで十分だ。
個人情報を切り離した形でクラウドに保存するというが、それが病院の電子カルテなどのシステムと連携できるわけでもなく、クラウドにしたメリットが運営側の課金システムとデータ収集以外に全く感じられない。
ファイルメーカーなどをつかってiPhoneやiPadのアプリとして開発すればもう少しましなものが自分でも開発できそうだ。
これがWAIS、ロールシャッハテスト、MMPI、HTP、SCT、WCST、TMT、WMR、BATS・・・などなど各種神経心理検査の検査、集計の補助ツールとして使えるようなものならまだ可能性はあるかとも思うのだが・・・・。
このDT-Naviの目玉機能として将来の認知症機能の特典予測をして認知症の「いま」と「これから」を可視化し、治療の目安を提示し、患者さん、ご家族、医師が同じデータを見ながら治療方針を検討することができるという。
そして、ご丁寧にも治療法選択の目安も表示してくれるのだそうだ。
あな、おそろしや。
これでは薬を使わないとこんなに認知症が進みますよ・・と脅迫するためのツールとしか思えない。
いまのところ認知症は治癒が望める疾患ではないので、診断がついたあとは本人や家族の心理的援助や生活障害に関する相談が診療の中心となる。
定期的に自分のできなくなったことを確認させられる屈辱的な検査をされ、認知症が進む一方のこんな予想図を見せられるというのは非常に侵襲的である。少なくとも自分は嫌だ。病院に受診した日は精神不安で落ち着かなくなるということがおこりそうだ。
これなら当事者や家族当事者のグループなどに顔をだすほうがよほど助けになると思う。
認知症は全国で200万人以上、65歳以上で13人に1人の疾患である。
認知症薬の市場は莫大である。
1999年11月にアリセプト(5mg錠で427.5円)が発売されて、今や売上は国内で年間1000億円以上の巨大市場に成長した。そして今年になってメマリーやレミニール、イクセロンパッチなどの新しい認知症に対する薬剤も市販され、アリセプトは特許が切れジェネリックがアリセプトの2/3程度(それでも5mgで284円など)の価格で多くのメーカーからゾロゾロ登場している。
これらの薬も上手に使えば認知機能が改善し、意欲がでたり、抑うつが改善したり、なんとか一人暮らしや排泄が自立できている時間を伸ばすことができるだろうし、特にレビー小体型認知症の症状の改善には著効することもある(適応外であるが、むしろレビー小体型認知症に対してこそありがたい薬である)。
また認知症をもつ人や家族にとっては心の支えや希望となっているところもあるだろう。
しかし効果があるレスポンダーはせいぜい約半分程度であり、効果があっても認知症の進行を止めることはできず症状の進行を半年から1年遅らす程度の薬である。
間違いなくエッセンシャルドラッグである統合失調症に対する抗精神病薬(セレネースやリスパダール、クロザリル・・)や、うつ病に対する抗うつ薬(トリプタノール、ジェイゾロフト・・)、双極性障害に対する気分安定薬(リーマスやデパケン)などとは意味合いが異なる。これらは無ければ困る。
認知症に関してはBPSDに対してしばしば用いられるバルプロ酸や抑肝散の方がよほどありがたい。
診療報酬が包括払いになる老人保健施設などでは高価なアリセプトはあっさり切られてしまうこともある。
製薬会社のアリセプトや他の認知症の新薬(いづれも高価)のプロモーションも、早くから多くの量を途切れることなく使わないといけないというような脅迫マーケティングが目につく。
まるで「だんだんだだん、抜けていく、だんだんだだん、薄くなる。30代の抜け毛に薄毛 お医者さんに相談だ♪・・・」というAGAのCMだ。
売らんがな主義だけで品性のかけらもない。
DT-Naviは本年2月に発売開始され、初年度300台の販売が目標だったところで、いままでに売れたのは20台という。20台でも売れたのが不思議だ。
専用のタッチパネル端末を使うことで検査に慣れていない検査者でもHDS-RやADAS-JCog、BEHAVE-ADという認知症に関わるスケールを手軽にとるということができるという。
ちなみにADAS(Alzheimer's Disease Assessment Scale )というのは、アルツハイマー型認知症の中核症状に焦点をしぼった心理検査であり、被験者にもよるが一連の検査をするのに約40分はかかるめんどくさい検査である。
認知症の薬の治験(臨床試験)では必ず施行するもので、当院でも治験の際にはおこなっていた。
心理検査として診療報酬が450点(4500円)を算定できる。
しかし、このDT-Naviを導入するにに初期費用の本体価格を198000円、月々のシステム保守管理費が7500円に加え、一回あたり900円の利用料がかかるという。(プレスリリースを見ると本体価格はもともと1,300,000円だったようだ。さすがに値下げした?)
しかしこんなものを売りつけた上に維持管理費としてお金をとって売ろうとする根性に呆れてしまった。
そもそもADASは実際の臨床では必須ではないし、たとえADASを取るにしても結局検査者は必要であり、ほとんど時間の短縮にもならない。
専用端末もiPad2などのスマートで薄いタブレット端末が出ている時代なのに、いかにももっさりと大きい。
タッチパネルの反応も悪く古いATM機器のようで10年前の製品という感じだ。
また3Gなどのデーター通信のための機能も内蔵しておらずインターネットの接続も必要だという。
どこに専用である必要があるのだろうか?iPhoneアプリで十分だ。
個人情報を切り離した形でクラウドに保存するというが、それが病院の電子カルテなどのシステムと連携できるわけでもなく、クラウドにしたメリットが運営側の課金システムとデータ収集以外に全く感じられない。
ファイルメーカーなどをつかってiPhoneやiPadのアプリとして開発すればもう少しましなものが自分でも開発できそうだ。
これがWAIS、ロールシャッハテスト、MMPI、HTP、SCT、WCST、TMT、WMR、BATS・・・などなど各種神経心理検査の検査、集計の補助ツールとして使えるようなものならまだ可能性はあるかとも思うのだが・・・・。
このDT-Naviの目玉機能として将来の認知症機能の特典予測をして認知症の「いま」と「これから」を可視化し、治療の目安を提示し、患者さん、ご家族、医師が同じデータを見ながら治療方針を検討することができるという。
そして、ご丁寧にも治療法選択の目安も表示してくれるのだそうだ。
あな、おそろしや。
これでは薬を使わないとこんなに認知症が進みますよ・・と脅迫するためのツールとしか思えない。
いまのところ認知症は治癒が望める疾患ではないので、診断がついたあとは本人や家族の心理的援助や生活障害に関する相談が診療の中心となる。
定期的に自分のできなくなったことを確認させられる屈辱的な検査をされ、認知症が進む一方のこんな予想図を見せられるというのは非常に侵襲的である。少なくとも自分は嫌だ。病院に受診した日は精神不安で落ち着かなくなるということがおこりそうだ。
これなら当事者や家族当事者のグループなどに顔をだすほうがよほど助けになると思う。
認知症は全国で200万人以上、65歳以上で13人に1人の疾患である。
認知症薬の市場は莫大である。
1999年11月にアリセプト(5mg錠で427.5円)が発売されて、今や売上は国内で年間1000億円以上の巨大市場に成長した。そして今年になってメマリーやレミニール、イクセロンパッチなどの新しい認知症に対する薬剤も市販され、アリセプトは特許が切れジェネリックがアリセプトの2/3程度(それでも5mgで284円など)の価格で多くのメーカーからゾロゾロ登場している。
これらの薬も上手に使えば認知機能が改善し、意欲がでたり、抑うつが改善したり、なんとか一人暮らしや排泄が自立できている時間を伸ばすことができるだろうし、特にレビー小体型認知症の症状の改善には著効することもある(適応外であるが、むしろレビー小体型認知症に対してこそありがたい薬である)。
また認知症をもつ人や家族にとっては心の支えや希望となっているところもあるだろう。
しかし効果があるレスポンダーはせいぜい約半分程度であり、効果があっても認知症の進行を止めることはできず症状の進行を半年から1年遅らす程度の薬である。
間違いなくエッセンシャルドラッグである統合失調症に対する抗精神病薬(セレネースやリスパダール、クロザリル・・)や、うつ病に対する抗うつ薬(トリプタノール、ジェイゾロフト・・)、双極性障害に対する気分安定薬(リーマスやデパケン)などとは意味合いが異なる。これらは無ければ困る。
認知症に関してはBPSDに対してしばしば用いられるバルプロ酸や抑肝散の方がよほどありがたい。
診療報酬が包括払いになる老人保健施設などでは高価なアリセプトはあっさり切られてしまうこともある。
製薬会社のアリセプトや他の認知症の新薬(いづれも高価)のプロモーションも、早くから多くの量を途切れることなく使わないといけないというような脅迫マーケティングが目につく。
まるで「だんだんだだん、抜けていく、だんだんだだん、薄くなる。30代の抜け毛に薄毛 お医者さんに相談だ♪・・・」というAGAのCMだ。
売らんがな主義だけで品性のかけらもない。
DT-Naviは本年2月に発売開始され、初年度300台の販売が目標だったところで、いままでに売れたのは20台という。20台でも売れたのが不思議だ。
後、先生のブログをリンクしても良いですか?
リンクは自由にどうぞ。ありがとうございます。
維持費がかかるとは・・・まあ、どのように説明してくれるか。結局、検査をする人間が必要なんですね、やっぱり。臨床心理士が来たときはシメシメと思いましたが、赴任した心療内科の医師が退職するのと一緒にいなくなりました。DEMOの時間は無駄になりそうだなあ・・・大変有益な情報をいただきありがとうございました。
「DT-Navi」、近隣の公立病院では導入しています。
こういうの買うのは、公立病院ぐらいでしょうなあ。「パソコン1台程度の初期費用」という感覚かな。
心理検査用具ってのも一般に高いもんですし。小学校1年用の「さんすうセット」みたいなWISCが16万円もする。