通勤の駅までの道のり。
郵便局の横に自転車が置かれていて、そのハンドル部のチャイルドシートに、
まだ2歳以下くらいではないかと思われる幼い子どもが乗せられたままになっていた。
母親の姿はない。
自転車は壁に寄せられたりしているわけでもなく、地面にはゆるく傾斜があり、
いかにも危なっかしかった。
「危ないなあ…危ない、危ない」と思わず声が出た。
通り過ぎて数秒後、ダーン!という音と、子どもの割れんばかりの泣き声が。
やっぱり。自転車は倒れたのだ。
建物の中からすぐさま母親が飛び出してくるかと思ったが、その気配がない。
仕方がないので引き返して郵便局の扉を開け、
「お母さんいないの?倒れたよ!」と声をかけた。自然と尖った言い方になった。
その声が聞こえたのかどうかわからぬが、
母親が、局内からではなく、脇のATMコーナーから出てきた。
「えー!ちょっとー!大丈夫ー?」
子どもはヘルメットをかぶっていた。
走行中の転倒は想定してちゃんとヘルメットはかぶせていても、
「停めておく自転車が倒れるかも」という想像力は働かなかったか。
見るからに「危ないなあ」という嫌な予感がそのまま的中したから、気分が悪かった。
母親をどやしつけたくもなったけど、それはいかにも出過ぎた真似だろう。
黙ってその場を後にした。
…考えてみればそもそも、母親への怒りが思わず先に立って順番が逆になってしまったが、
母親を呼びに行くよりもまず、子どもを助けるべきだった。
子どもに罪はあろうはずもないのだから。
いや、もっと言えば、「嫌な予感」をあれだけ強烈に感じたのだから、
まずはしっかりハンドルを押さえて転倒を防ぎ、その場で母親を大声で呼ぶということもできた。
傍から見るといかにも危険な放置、やってはいけない放置に見えたけど、
忙しい母親稼業の合間、「お金を下ろすだけ」のちょっとした時間なら大丈夫、
と魔が差したのかも知れない。
誰にでも起こりうることだ。自戒もせねばなるまい。
郵便局の横に自転車が置かれていて、そのハンドル部のチャイルドシートに、
まだ2歳以下くらいではないかと思われる幼い子どもが乗せられたままになっていた。
母親の姿はない。
自転車は壁に寄せられたりしているわけでもなく、地面にはゆるく傾斜があり、
いかにも危なっかしかった。
「危ないなあ…危ない、危ない」と思わず声が出た。
通り過ぎて数秒後、ダーン!という音と、子どもの割れんばかりの泣き声が。
やっぱり。自転車は倒れたのだ。
建物の中からすぐさま母親が飛び出してくるかと思ったが、その気配がない。
仕方がないので引き返して郵便局の扉を開け、
「お母さんいないの?倒れたよ!」と声をかけた。自然と尖った言い方になった。
その声が聞こえたのかどうかわからぬが、
母親が、局内からではなく、脇のATMコーナーから出てきた。
「えー!ちょっとー!大丈夫ー?」
子どもはヘルメットをかぶっていた。
走行中の転倒は想定してちゃんとヘルメットはかぶせていても、
「停めておく自転車が倒れるかも」という想像力は働かなかったか。
見るからに「危ないなあ」という嫌な予感がそのまま的中したから、気分が悪かった。
母親をどやしつけたくもなったけど、それはいかにも出過ぎた真似だろう。
黙ってその場を後にした。
…考えてみればそもそも、母親への怒りが思わず先に立って順番が逆になってしまったが、
母親を呼びに行くよりもまず、子どもを助けるべきだった。
子どもに罪はあろうはずもないのだから。
いや、もっと言えば、「嫌な予感」をあれだけ強烈に感じたのだから、
まずはしっかりハンドルを押さえて転倒を防ぎ、その場で母親を大声で呼ぶということもできた。
傍から見るといかにも危険な放置、やってはいけない放置に見えたけど、
忙しい母親稼業の合間、「お金を下ろすだけ」のちょっとした時間なら大丈夫、
と魔が差したのかも知れない。
誰にでも起こりうることだ。自戒もせねばなるまい。