情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

共謀罪,民主党案全文掲載~これでテロ対策できるのに,網を広げるのはなぜ?!

2006-04-26 23:52:18 | 共謀罪
民主党が,27日にも国会へ提出しようとしている共謀罪法案は,次のとおり。

■■引用開始■■

第六条の二
次の各号に掲げる罪に当たる行為第六条の二
次の各号に掲げる罪に当たる行為【(国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約第三条2(a)から(d)までのいずれかの場合に係るものに限る。)】(注1)で、【組織的犯罪集団(原案は単に「団体」)】の活動【(組織的犯罪集団(団体のうち,死刑若しくは無期若しくは長期五年を超える懲役若しくは禁固の刑が定められている罪又は別表第一第二号から第五号までに掲げる罪を実行することを主たる目的又は活動とする団体をいう。次項において同じ。)の意思決定に基づく行為であって,その効果又はこれによる利益が当該組織的犯罪集団に帰属するものをいう。第七条の二において同じ。)】(注2)として,当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、【その共謀をした者のいずれかがその共謀に係る犯罪の予備をした場合において】(注3),当該各号に定める刑に処する。ただし、【死刑又は無期の懲役若しくは禁固の刑が定められている罪については】,実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。

一 死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪 五年以下の懲役又は禁錮

二 長期【五年を超え(原案は「四年以上」】十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪 二年以下の懲役又は禁錮

2 前項各号に掲げる罪に当たる行為【(国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約第三条2(a)から(d)までのいずれかの場合に係るものに限る。)】(注1)で、【組織的犯罪集団(注2)に不正権益(組織的犯罪集団の威力に基づく一定の地域又は分野における支配力であって,当該組織的犯罪集団の構成員による犯罪その他の不正な行為により当該組織的犯罪集団又はその構成員が継続的に利益を得ることを容易にすべきものをいう。以下この項において同じ。)を得させ,又は組織的犯罪集団の不正権益を維持し,若しくは拡大する目的(原文は「第三条第二項に規定する」)】目的で行われるものの遂行を共謀した者も、前項と同様とする。

【3 前二項の適用に当たっては,思想,信教,集会,結社,表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し,及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を,不当に制限するようなことがあってはならず,かつ,会社,労働組合その他の団体の正当な活動を制限するようなことがあってはならない。】

■■引用終了■■

上記のうち,【】の9カ所がもともとの案から修正(付加)された部分だ。

ちなみに,
注1:条約上でいうところの「性質上国際的な犯罪」にあたる場合に限って,処罰の対象とする。

国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(ここ←)第三条2(a)から(d)とは,

(a)二以上の国において行われる場合

(b)一の国において行われるものであるが、その準備、計画、指示又は統制の実質的な部分が他の国において行われる場合

(c)一の国において行われるものであるが、二以上の国において犯罪活動を行う組織的な犯罪集団が関与する場合

(d)一の国において行われるものであるが、他の国に実質的な影響を及ぼす場合

である。

注2:共謀罪については,条約でいうところの「組織的な犯罪集団が関与する」場合に限って処罰の対象とする。

注3:共謀罪の成立については,条約で認められているところのいわゆる「合意の内容を推進するための行為」を要件とする。


上で引用した民主党案と与党があわてて出した修正案(ここ←)と比較すると違いがよく分かる。


①共謀罪の対象となる団体の性格

与党修正案:長期四年以上の懲役若しくは禁固の刑が定められている罪を実行することを共同の目的とする団体

民主党案:長期五年を超える懲役若しくは禁固の刑が定められている罪を実行することを主たる目的又は活動とする団体

※民主党案は,主たる目的という表現で,団体の性格を犯罪集団として位置づけている。また,重大犯罪を目的とするものに限定しようとしている。

②対象となる行為

与党修正案:長期四年以上の懲役又は禁錮の刑が定められている罪に当たる行為

民主党案:長期五年を超える懲役又は禁錮の刑が定められている罪行為で,かつ,国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約第三条2(a)から(d)までのいずれかの場合に係るもの

※民主党は,共謀段階で罰すべき,重大でかつ国際的な犯罪に限定している。これでもテロ行為や暴力団の重大な違法行為などはカバーできる。


③必要な行為

与党修正案:犯罪の実行に資する行為

民主党案:犯罪の予備行為

※民主党案は,より実行行為に近い行為,より明確な行為に限定している。


④自首した場合の免除規定

与党修正案:あらゆる共謀罪に適用される

民主党案:死刑又は無期の懲役若しくは禁固の刑が定められている罪に限定される。

※民主党案は,自首規定によるスパイの暗躍,人々が疑心暗鬼化することを防ぐことができる。



どうでしょうか,民主党案はずいぶん限定されていますよね。これでも,法務省が例示しているテロ対策,暴力団対策は十分可能です。

そのほかに法務省が必要な事例としてあげているものに,悪徳商法のような組織的な詐欺事犯というのがありますが,それらについて共謀段階で取り締まる必要があるでしょうか?悪徳商法については,現にあちこちで実行行為が行われているのですから,現在の刑法でも取り締まることは出来るはずです。したがって,わざわざ共謀罪で処罰する必要はないのです。

こうして,民主党案と与党案を比較すると,いかに与党案が組織的犯罪集団以外の団体を対象にすべく作られているかが分かると思います。



※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。

共謀罪で民主党が対案決定~ここまで絞れるのに強行採決するのか?!

2006-04-26 19:32:57 | 共謀罪
民主党が,共謀罪の対案を,26日,決定した。この対案は,共謀の対象となる犯罪を長期4年以上から5年を超えるものにする(六法をみてください。これによって共謀段階で処罰する必要のない犯罪が多数,共謀罪からはずされます),団体の性格を組織犯罪集団に限定するなどというものです。

ここまで絞っても,十分,テロ対策,国際犯罪集団など共謀段階で取り締まらなければならないとして法務省が挙げる犯罪は十分に取り締まることができる。

それなのに,28日強行採決を認めていいのか!!

民主党案に注目!
(いま,打合せの合間なので,全文アップは後ほど…)



※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。

アクセンチュア社の方法~なんて中立的なタイトルなんだろう

2006-04-26 00:36:58 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
どこどこ日記(ここ←)で紹介されたアクセンチュアの入管システムへの食い込み方は,どこどこ日記で触れられているように,低入札価格について調査(ここ←)されている。ところが,いったん,入札したら,どうなるかというと…

例えば,「検察総合情報管理システムのシステムテスト,導入等作業 一式」については,

「契約業者は,本システムの開発を行った業者であり,他社が作業を行った場合には,平成15,16年度に開発したアプリケーションプログラムに支障が生じることになるため」ということで,競争なしの随意契約となっている。

契約額は,3億8399万9700円(ここ←)。

入管法の10万円入札も,いつか化ける日が来るのだろうか…。


※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。