情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

弁護士に岡っ引きになれというのか! パート3:ゲートキーパー法案上程迫る

2007-01-08 01:02:13 | ゲートキーパー(一億総密告社会)制度
政府は,このブログでも「弁護士に岡っ引きになれというのか!」というタイトルや「犯罪収益防止法に関する読売新聞社説への反論~小さく生んで大きく育てる… 」というタイトルなどで書いた「ゲートキーパー制度」(犯罪収益流通防止法案)を,今月25日開会される通常国会で成立させようと狙っている。

この法案は,テロ資金や犯罪収益が国内外に送金されるのを防ぐため、金融機関や各士業に疑わしい取引を警察(国家公安委員会)に密告すること(現状では日弁連が間に入るという法案を考えているようだ)を義務づけるものだが,まだまだ,広く知られていない。まずは,こちらのパンフレットをみてほしい。


この法案の問題点は,「自分は悪いことをしていないから,平気だ…」では済まないことだ。弁護士は,依頼者であるあなたが悪いことをしていなくても,あなたの取引先が支払う代金が違法な行為によるものかもしれないと感じたら,あなたとあなたの取引先が行った取引について,通報しなければならない。なぜなら,この法案は,犯罪収益の疑いのある金の動きを通報しなければならないこととされているからだ(現法案では、不動産売買,口座管理、出資行為などに限定されてはいるが…)。そして,通報を受けた警察庁によってあなたの銀行口座が凍結されてしまうかもしれない。そうなったら,決済が近い場合には,あなたが倒産の憂き目に遭うかも知れないのです。上記パンフレットに書いてあることは決して誇張したものではないということです。

たとえば,ある弁護士があるビルオーナーが死亡した事案の相続の相談を受けたとしましょう。そして,遺産分割の協議がまとまるまでの間,とりあえず,相続人の合意を得て,なくなった方の口座の管理をしたとします。そして,その口座にどうも違法な風俗営業をしているように思われるテナントからの賃料収入があったとします。この弁護士は,この賃料収入を報告しなければならないのです。
      ↓
すると,口座凍結!!
たとえば,その口座からビルの敷地の地代が支払われている場合,地代が支払われなくなり,借地契約解除,ビルを撤去して明け渡すような請求をされてしまうはめに陥るかも知れません。そうなると,せっかくの資産が消え去ります。

もちろん,風俗営業に貸すことが「悪い」ので自業自得という見方もあるでしょう。しかし,その罰がビルを失うことになってもいいのでしょうか?

少なくとも,弁護士であれば,たとえば,風俗営業に貸すことが犯罪収益収受の問題を生じるならば,「この賃借人には出て行ってもらいましょう」と指導するべきだと思いませんか?少なくとも,黙って警察庁に報告されるなんて予想もしないのではないでしょうか。

ところが,犯罪収益流通防止法案は,すでに生じたことについては通報義務が課せられるため、疑いがあることを知った以上、報告しないわけにはいきません。そのうえ、依頼者に通報したことを告げてはならないという規定が付せられる予定です。

ある日,突然,口座が凍結され,通報した弁護士はその原因を知っていても,そのことを口には出せない。口には出せないまま,凍結されたことについて,依頼者から相談にのることになる…これってあまりに悲惨な喜劇ですよね。


また,そもそも違法な風俗営業だと思ったが,実は違法ではなかったということもあるでしょう。たとえば,サービスをする人が独自の判断で違法行為に及んだとしましょう。それを根拠に,実際は,合法な営業の経営者の行為が違法なものとして対処されることは十分に考えられるでしょう。


問題が大きいこの法案について,皆さんも一度考えてみて下さい。弁護士が依頼者を売る社会にしてよいのでしょうか?


(写真は,共謀罪でも「楽しい」イラストで有名となった京都弁護士会のHPから)





★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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