情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

靖国Q1.国のために死んだ人を祀って何が悪い。どこの国でもやっていることだ。

2007-01-17 04:42:34 | 靖国問題Q&A
Q.国のために死んだ人を祀って何が悪い。どこの国でもやっていることだ。


A.死者を祀ること自体を否定しているわけではありません。ただ、靖国神社は戦争で亡くなった人々すべてを祀っているのでなく、軍関係者らだけを祀った世界的に見ても類を見ない施設であり、ましてや先の大戦の責任者であったいわゆるA級戦犯をも祀っているのですから、国の代表者が参拝する場所としてふさわしくないのです。


(1)①靖国神社は、戦争で亡くなった人々すべてを祀っているのではありません。祀られているのは、軍人軍属ら軍隊関係者(天皇の軍人)及び軍に「協力」した─させられた─人々のみで、原爆や空襲の被害者らは祀っていません(遊就館の展示には、零戦、人間魚雷の実物や特攻出撃隊員らの写真はあっても、原爆、空襲被害らの遺物はもちろんのこと、写真すら1枚もありません)。靖国神社が世界的に見ても数を見ない施設であるというのは上記のような事実に加え、さらに、②死者や遺族の意向に関係なく勝手に「護国の英霊」として「○○みこと命」と神にして祀っている、③零戦や人間魚雷を展示し、「支那事変、総攻撃」と題するビデオテレビでは、戦意高揚を狙った戦時中のニュース映画をそのまま軍歌とともに──≪天に代りて不義を討つ≫等々、1945年8月15日以前と変りないテロップ付きで──流している戦争博物館、遊就館を併設している、等々の事実があるからです。この遊就館展示について井上寿一学習院大学教授は「すさまじいまでの戦争正当化の情念が渦巻いている。日本はまるで戦争に勝ったかのような展示の数々」(『アジア主義を問いなおす』ちくま新書)と批判していますが、その通りです。まるで戦前にタイムスリップしたかのようです。
戦前、靖国神社は陸・海軍省の管轄となっていました。つまり「宗教的軍事施設」でもあったのです。ですから、「国のために死んだ人を祀って何が悪い」という言い方は、靖国神社の性格について正しく述べてはいません。
 小泉首相の靖国神社参拝を違憲と断じた、2004年4月7日の福岡地裁(亀川清長裁判長)判決も、「靖国神社は戦没者のうち軍人軍属、準軍属等のみを合祀の対象とし、空襲による一般市民らは対象としていない。内閣総理大臣として、戦没者の追悼を行う場所として靖国神社は必ずしも適切ではない」と述べています。

(2)先の大戦で亡くなった軍人軍属、準軍属の人々は、「国のために死んだ」という言い方は正確なものでしょうか。
 確かに彼らは、「日本」を守るために戦いました。しかし、彼らが守ろうとしたのは国家というよりもむしろ、親兄弟妹の家族、そして共同体であったと思います。人は国のために死ぬことはできなくても、家族や友のためにならば死ぬことが出来るかもしれません。自己犠牲的献身愛です。ところが、本来国家とは別次元のものである自己犠牲的献身愛を、自己を維持するために貪欲に取り込んでしまうのが国家というシステムなのです。
 ところで亡くなった彼らは何から何を守ろうとしたのでしょうか。彼らの「守り」が成功し、日本が戦争に敗けなかったとしましょう。私達にとって、その方がよかったのでしょうか。「大日本帝国の実在よりも戦後民主主義の虚妄に賭ける」と述べたのは、政治学者故丸山眞男でした。治安維持法、憲兵支配、息詰まるような戦前の軍国主義と不充分ながらも戦後の民主主義、あなたはどちらに与みしますか。
 それは私達が8月15日を、屈辱的な敗戦の日と捉えるのか、それとも天皇制軍国主義からの解放を意味する喜びの日と捉えるのかの問題でもあります。
 戦前、『東洋経済新報』主幹として「小日本主義」を主張し、中国・朝鮮半島など近隣アジアへの領土的進出を厳しく戒める論陣を張りつづけた石橋湛山は、8月25日号社論において、「敗戦は日本国民の永遠に記念すべき新日本の門出」であり、「徒に悲憤慷慨を費やす場合でない」と述べています。石橋湛山は靖国神社の廃止も提言しています。
 作家高見順も9月30日の日記にこう書いています。

    「昨日の新聞が発禁になったが、マッカーサー司令部がその発禁に対して解除命令を出した。そうして新聞並びに言論の自由に対する新措置の司令を下した。
これでもう何でも書けるのである!これでもう自由に出版できるのである!
生れて初めての自由!
自国の政府により当然国民に与えられるべきであった自由が与えられずに、自国を占領した他国の軍隊によって初めて自由が与えられるとは、──かえりみて羞恥の感なきを得ない。日本を愛する者として、日本のために恥かしい。戦に負け、占領軍が入ってきたので、自由が束縛されたというのなら分るが、逆に自由を保障されたのである。なんという恥かしいことだろう。自国の政府が自国民の自由を、──ほとんどあらゆる自由を剥奪していて、そうして占領軍の通達があるまで、その剥奪を解こうとしなかったとは、なんという恥かしいことだろう。」(高見順「敗戦日記」中公文庫)

 もっとも、同日記9月3日には、「東洋経済新報が没収になった。これでいくらか先日の『恥かしさ』が帳消しの感あり。アメリカが我々に与えてくれた『言論の自由』は、アメリカに対しては通用しないということもわかった。」と、「占領軍」の本質を知らされた旨の記述もありますが、今、そのことには触れません。
 そう、戦争に敗けたことが問題ではなく、戦争に敗けなければ変わることのできなかった日本の有り様こそが問題であったのです。
 私も真底から先の大戦で日本が敗れたことを歓迎します。私は敗戦の年、1945年4月5日この世に生を受けました。私が生れる5日前父が出征しました。軍の糧秣を扱う精麦会社の熟練工であった父は出征が遅かったのです。幸い無事帰還しましたが、当時の状況からして、出征に際してはもとより生還を期しておらず、私の生れたことを知った父は私宛に「遺書」を書いたようです。小学校中学年の頃、タンスの引出しの奥にしまってあった粗末なワラ半紙に鉛筆書きされたこの「遺書」を見つけ盗み読みしたことがあります。ほどなく「何を見ているか!」とやや気色ばんだ父に取上げられてしまいましたので詳しい内容は覚えてませんが、「雅敏よ、父が帰らなくても母を助け、日本男児として立派に……」といった類のことが書いてありました。父が気色ばんで「遺書」を私から取上げたのは、きっと気恥ずかしかったのでしょう。
 ずっと後に自我に目覚めた頃、私はこの出来事を思い出し、生れたばかりのわが子に対し、父にあのような「遺書」を書かせた世の中を再び招来させてはいけないと思うようになりました。
 このように考えて来ると、先の大戦で亡くなった軍人軍属、準軍属の人々は「国のために死んだ」というよりも、むしろ「国によって殺された」と考えた方が正確ではないでしょうか。
 読売新聞主筆渡辺恒雄氏も、前述した保阪正康氏との対談の中で、「玉砕なんて、大本営の命令でしょう。支援隊を送れないから、『玉砕せよ』というわけですからね。これは、残虐な殺人行為ですよ。それに、お国のために戦った英雄というけど相当数は餓死ですよね。特に南方戦線はそう。実にいいかげんな作戦によって、玉砕にいたらずに餓死した兵が山ほどいるんですからね。それを、『お国のため、天皇陛下のために万歳と言って死んでいった』という歴史観は、まったくおかしい。これを根本的に粉砕する必要があります。」と述べています。
 ニューギニア、フィリピンなど南海の島々であるいは、無謀なインパール作戦により、ビルマ、インドの密林の中で多くの日本軍兵士が餓死──死亡した兵士の6割が餓死であったとする説もある。この実態について自身も軍隊体験を有する藤原彰一橋大教授著「餓死した英霊たち」(青木書店)に詳しい。──したこと、かろうじて生き残った人も、連合国軍の戦犯(BC級)裁判──拙速、報復的なものもあった──によって刑場の露と消えた人も少なくないこと、1945年8月9日中国東北部(旧満州)でソ連軍が侵攻して来たとき、日本軍は早々と後退し、多くの日本の民間人を放置し、見殺しにした事実を忘れてはなりません。彼らはまさに日本国によって殺されたのです。
 ニューギニアの第十八軍司令官安達二十三中将は、敗戦後の残務整理が一段落した1947(昭和22)年9月8日、以下のような遺書を残しラバウルで自決しました。
 
 「私儀 昭和十七年十一月第十八軍司令官の重職を拝し──此作戦三歳の間十万に及ぶ青春有為なる陛下の赤子を喪ひ、而して其大部分は栄養失調に基因する戦病死なることに想到する時、御上に対し奉り何と御詫びの言葉も無之候。──打続く作戦に疲憊の極に達せる将兵に対し更に人として堪え得る限度を遥に超越せる克難敢闘を要求致候。之に対し黙々之を遂行し力竭きて花吹雪の如く散り行く若き将兵を眺むる時君国の為とは申しながら其断腸の思は唯神のみぞ知ると存候。当時小生の心中堅く誓ひし処は必ず之等若き将兵と運命を共にし南海の土となるべく縦令凱陣の場合と雖も論らじとのこと有之候。
  一昨年晩夏終戦の大詔を拝し──聖旨を徹底して謬らず、且は残存戦犯関係将兵の先途を見届くることの重要なるを思ひ、恥を忍び今日に及び候。然るに今や諸般の残務も漸く一段落となり小官の職責の大部を終了せるやに存ぜらるるにつき此時機にかねての志を実行致すことに決意仕候。即ち小官の自決の如き御上に対し奉るお詫びの一端とならずと思ふ次第にて唯々純一無雑に陣歿、殉国、並に光部隊残留部下将兵に対する信と愛とに殉ぜんとするにならず候。……」小島光造「回転特攻」・光人社文庫)

 「ニューギニア戦線では、累計十四万の大軍が、マラリアと栄養失調で大半陣没し、終戦時集結し得たものは一万三千人に過ぎず、その後も斃れるものが続き、戦犯者も出て、内地に復員した者は一万人をわずかに越えたに過ぎない。まことに惨憺たるもので……」(杉浦義教「ラバウル戦犯弁護人」・光人社文庫)

 小泉首相が鹿児島県、知覧の特攻記念館に行って、特攻として戦死した人々の写真、遺書等を前にして涙を流したという新聞記事を読んだことがあります。
 しかし、逆ではないでしょうか。このようにむざむざと若者を殺してしまったことについて、為政者として当時の国策の過ちを怒り、また死者達にお詫びを述べなければならなかったのではないでしょうか。仮に靖国神社に参拝した憊としてもそれは同じです。何よりもまず死者達に政策の過ちにより、あたら大切な命を失わせてしまったことについてお詫びを言うべきでしょう。


■■以上、内田雅敏弁護士執筆■■






★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。

やっぱり共謀罪は寝たふり?!~国会開会間近、気合いを入れ直しましょう!

2007-01-16 02:56:18 | 共謀罪
 教育基本法改悪案が多くの方の反対活動にもかかわらず、可決された。そのため、共謀罪の与党担当者は相当焦っているはずだ。教育基本法のような重要法案でさえ、改悪法案を成立させたのに、共謀罪担当者は何をやっているのか、もう大臣の目はないな、というような会話が料亭でなされることを…。
 ということで、今国会では共謀罪は審議しないというような情報も流れているが、踊らされないようにしないといけない。これまで何度も寝たふりをされてきたのだから…。
 早速、以下のような反対運動が予定されているので、積極的に参加されたし。                   

●1月25日(木)8時30分~国会前駅ビラまき 
12~昼休み集会(13時終了)

●1月26日(金)18時30分~ さらば!共謀罪1・26集会
@東京しごとセンター(飯田橋)

主催:「破防法・組対法に反対する共同行動」(日本基督教団社会委員会気付)
   www.hanchian.org








★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。
   

靖国問題Q&A-「特攻記念館」で涙を流すだけでよいのでしょうか-№1【内田雅敏弁護士著】

2007-01-16 00:59:33 | 靖国問題Q&A
憲法問題、戦後補償問題などに取り組んできた内田雅敏弁護士が靖国問題と向き合った「靖国問題Q&A」を書き上げた。内田弁護士の許可を得たので、今後、連続して紹介したいと思う。著者・出典を明らかにしていただけるのであれば、転載歓迎します。今回は、前書き部分を紹介します。


■■引用開始■■

はじめに -「特攻記念館」で涙を流すだけでよいのでしょうか-

いつの時代にも若者が時代の大義に殉ずる姿は美しい物語です。でも実情を知れば涙ではなく怒りが沸いてきます。
知覧の「特攻記念館」、靖国神社の「遊就館」に先の大戦末期特攻出撃した若者達の写真、遺書等が展示され、見学した人々が涙すると云います。だが両館には「統率の邪道」(大西瀧治郎海軍中将・航空特攻の創設者、敗戦時、軍令部次長として降伏に頑強に反対する。8月16日割腹自決)とも云える特攻という無謀な作戦を遂行し、あたら若い命を無残に散らした軍指導者らの責任を問う展示は一切ありません。
戦争末期、軍幹部らは撃ち落されることが分かっていながら本土防衛のための時間稼ぎ、国体護持の名のために「温存」という名目で、海軍兵学校、陸軍士官学校出の職業軍人には特攻をさせず、もっぱら学徒・少年兵らを次々と特攻出撃させました(特攻死した少尉以上の士官769名中、658名(85%)が飛行予備学生・生徒であったといいます。財団法人白鴎遺族会)。それも速成で伎倆も充分でなく、しかも満足に飛べないような整備不良の飛行機で出撃させ、敵艦に近づく前にほとんどが撃墜されました。戦争末期の特攻基地では、整備員たちが「こんな子供をこんなボロ飛行機で!」と泣いたといいます(小沢郁郎「つらい真実─虚構の特攻隊神話」同成社)。
「完全ナル飛行機ニテ出撃致シタイ」(後藤光春・69頁)とはどういうことでしょう。特攻機のほとんどはおんぼろで250キロの爆弾を積むと、やっと離陸できる仕末だったとか。なかには木製でジュラルミン張りの機もあったり、ノモハン事件(昭和14年)のとき使用した旧式のおんぼろもあったとか。
私は昭和21年6月8日、知覧基地跡の真ん中あたりに積み重ねてある残骸の中に、素人眼にもわかる、木製でジュラルミン張りの機を見ました。そのとき私は怒りをおぼえるとともに、勇士の心が思いやられ、涙が出てしようがありませんでした。戦争末期には、もう完全な飛行機をつくる力は、日本にはなかったのです。
それでも勇士は、与えられた機をこよなく愛しました。不幸にも徳之島の沖で散華した藤野道人曹長を陸揚げしたとき、曹長の腕と足はしっかり機に結んであったと、潜水夫は証言しています。勇士の多くはきっと愛機もろともにと、体を機に結び付けて征ったのでしょう。おんぼろの機に……(村永薫編「知覧特別攻撃隊」<おわりに>)

かつて戦没学生について書かれた『学徒出陣』を読んだとき、文字どおり「消耗品」扱いをする軍幹部に怒った学徒兵が、特攻出撃の前夜、酒に酔って兵学校出身者の宿舎の窓ガラスにビール瓶を投げつけ「アナポリ出て来やがれ……沖縄で戦っているのは予備学生と予科練だけだぞ!」と大声で叫ぶ記述に驚かされた記憶があります(「アナポリ」とは米国の海軍兵学校のあるアナポリスつまり兵学校出身者のこと)。  
大岡昇平著『レイテ戦記』(中央公論社)は、海戦とか航空戦を勇壮に描くのではなく、個としての兵士一人ひとりの生と死を克明に記す作業を通じて戦争の愚劣さを訴えた戦争文学の名作ですが、同書中で氏は「特攻」について、「勝利が考えられない状況で面子の意識に動かされ、若者に無益な死を強いたところに神風特攻の最も醜悪な部分がある」と書いています。
前述した特攻隊生みの親、大西瀧次郎海軍中将も1945年11月には「こんなにムダでは体当りは中止するべきでは」との疑問に、「こんな機材や搭乗員(の技量)では敵の餌食になるばかりだ。部下に死所を得させたい」「特攻隊は国が敗れるときに発する民族の精華」「白虎隊だよ」と言ったという(前同「つらい真実─虚構の特攻隊神話」)。
ところが、その大岡昇平氏が、他方では「しかしこれらの障害にも拘らず、出撃数フィリピン4000以上、沖縄1900以上の中で、命中フィリピンで111、沖縄で133、ほかにほぼ同数の至近突入があったことは、われわれの誇りでなければならない。想像を絶する精神的苦痛と動揺を乗り越えて目的を達した人間が、われわれの中にいたのである。これは当時の指導者の愚劣と腐敗とはなんの関係もないことである。今日では全く消滅してしまった強い意志が、あの荒廃の中から生まれる余地があったことが、われわれの希望でなければならない」と書いてしまっています。
敗残兵として生き残ってしまい、死んだ戦友達に対する後ろめたさ故からか、天皇の兵士として軍隊に狩り出された体験を基に「文化勲章を辞退する」という気概を示した大岡昇平氏もまた「特攻」の呪縛から抜け出せないのです。

大岡昇平氏と同じく『ゲゲゲの鬼太郎』など妖怪漫画作家の水木しげる氏も、ニューギニアの戦場で爆撃により左腕を失い餓死の境界を彷徨うという苦労をし、そのことを題材とした作品も書いています。水木しげる氏の弟子を自認する私の学生時代以来の畏友、漫画評論家の呉智英氏は、同氏から以下のような言葉を引き出しています。
「水木しげるのラバウル通いが始まった頃、私にこんな話をした。『以前は自分は、戦地だったところへ行きたがる者の心境が理解できなかったですよ。食うものも満足になく、餓死した戦友も多くいる。当人も九死に一生で助かっている。辛く苦しい思い出しかない。そんな戦地に、戦後20年も30年もたってなぜわざわざ行くのか』
水木しげるは、かつてはそういう人たちの気持ちが理解できなかった、と語る。
『しかし、自分はラバウルに行って初めてわかったんです。自分はあの戦争で生き残った。日本へ還ってこられた。でも、戦友たちは食糧も薬もなく、ここで死んでいった。そして、自分だけ、今では何でも食べられて生きている。そう思うとですなぁ……』
戦争体験者は、誰でも自責の念を語る。シベリア抑留体験のある詩人石原吉郎は、それをあえて逆転させ「死者におれたちがとむらわれるときだ」(『礼節』)と詩った。今、水木しげるは戦後初めてラバウルを再訪した日のことを私に語っている。死んでいった戦友たち、生きのびた自分。『戦友たちは、うまいものも食えずに若くして死んでいったんですよ。その戦地に立って、ああ、自分はこうして生きていると思うとですなぁ』
水木しげるは確信を込めて言った。『そう思うとですなぁ、愉快になるんですよ』
私は遠慮なく笑い転げた。目から涙がほとばしった。笑いは止まらないままであった。『ええ。ラバウルに行ってみて、初めてわかりました。』
これほど強い生命賛歌を私は知らない。生きていることほど愉快なことがこの世にあろうか。歴史は死者で満ちている。しかし、自分は生きているのだ。なんと愉快なことだろう。山陰出身者特有の古風な訛で、水木しげるは『ゆくゎい』と言った」(呉智英『犬儒派だもの』双葉社)。

  今、戦後61年、
   「国のために死ぬことを宿命づけられた特攻隊の若者たちは、敵艦にむかって何を思い、なんといって、散っていったのだろうか。………………
    今日の豊かな日本は、彼らがささげた尊い命のうえに成り立っている。だが、戦後生まれのわたしたちは、彼らにどうむきあってきただろうか。国家のためにすすんで身を投じた人たちにたいし、尊崇の念をあらわしてきただろうか。
    たしかに自分のいのちは大切なものである。しかし、ときにはそれをなげうっても守るべき価値が存在するのだ、ということを考えたことがあるだろうか。……」(『美しい国へ』安倍晋三著・文春新書)
などと述べる戦後生まれの新首相が現れました。

  私的な世界で親が子を守るために大切な命を投げ出すようなことはあるかも知れません。しかし、公的な世界で政治家が国民に向って言うべき言葉ではありません。
  それが61年前、戦後の再出発に際しての確認であったはずです。戦後の平和と繁栄は若者達の命が無駄に失わさせられたのを乗り越えてなし得たものであり、その死ゆえにではありません。繁栄の功績を死者に譲ることは死者への追悼であるよりは、無駄な死を強いた者の責任回避に通ずるのではないでしょうか。
「人類が歴史から学んだことは、人類は歴史から何も学ばなかったということだ」と云うことにならないためにも以下のような指摘には耳を傾けたいと思います。

   「21歳の松浦喜一少尉は、大きな爆弾を抱えた戦闘機で、鹿児島から沖縄をめざしていた。アメリカの艦船に体当たりするためだ。1945年6月19日のことだった。アメリカのレーダーを避けるため、豪雨の中を海面すれすれに飛んだ。何も考えていなかった。大和魂や忠君愛国という言葉は存在しなかった。身内の愛する人々のことは少し考えの中に現れた。………
    3機のうち、沖縄の目前で1機が墜落する。隊長は機首を転じ、引き返す。これでは任務を果せないと判断したのだろう。松浦さんは隊長に従った。…
    戦後、松浦さんは東京に戻り、麻布十番で家業のカステラ店を継いだ。特攻隊は志願したのですか。
『学生出身で未熟な飛行機乗りとしては、もうこの戦法しか残ってないと思った。しかし、数多くの若者が志願したことと、軍上層部が特攻作戦を採用したことは全く別の話です。戦争を始めるべきではなかったし、絶対に特攻作戦などを計画してはいけなかった』
特攻で亡くなった人たちを神格化する風潮がある。その危うさを語り続けることが生き残った者の務めだ、と松浦さんは考えている。」
(2006年8月7日、朝日新聞・天声人語)

 「特攻」を、武士道、日本精神の神髄だなどと賛美する人々がいますが、「特攻」こそ人の命を『鴻毛ヨリモ軽シ』(軍人勅諭)とする日本の軍隊の特性から生まれてきたものであることを、しっかりと認識しておく必要があります。
  靖国神社併設「遊就館」に1945年8月15日、日本の敗戦当日、九州、大分の海軍飛行場から第五航空艦隊司令長官海軍中将宇垣纏が部下22名とともに「特攻出撃」する際の写真が展示してあります。
すでに前日の14日、ポツダム宣言の受諾によって日本の敗戦が決定しており、司令長官に対しては停戦命令が出されており、15日正午には天皇による「玉音」放送が予定されていました。
ところが宇垣中将はこのことを秘し、この日、夕刻5時、自決のために艦上爆撃機「彗星」11機(搭乗員22名)を率い、「神州の不滅を信じ、気の毒なれど余の供を命ず。参れ」と訓示を締めくくり「出撃」し、16名(3機は不時着)の若者を死への道連れにしたのです(内藤初穂『桜花』・中公文庫)。
  生きていれば戦後日本再建の任を担ったであろう若者達の命を、日本の敗戦決定後においてなお、無駄死にさせたのです。
宇垣中将の「特攻出撃」の隊長を務めた中津留大尉の父親は、戦後次のように語ったと云われてます。
    「私にとっては、たった一人きりの息子でしたからなあ。
     軍の方でもその点を考えてくれるじゃろうち思うちょりましたが。
     やっぱあ非情なもんですな、そこまでは考えてくれんじゃったですなあ。
     とうとう特攻に連れて行ってしもうてですなあ。
     それも戦争が終わった放送の後でっしょうが。
     宇垣さんは部下を私兵化して連れて行ったわけですわ。
     私はそのことで、ずぅっと宇垣さんを怨み続けてきましたわ。
     戦後しばらくは、その事を考えると気が狂うごとありましたもんな。」
最愛の1人息子を失った父親の気持は察して余りあります。
宇垣中将の行為は、海軍刑法第31条「指揮官、休戦又ハ講和ノ告知ヲ受ケタル後、故ナク戦闘ヲ為シタルトキハ死刑ニ処ス」に該当する「私兵特攻」であり、重大な違反行為です。指導者として絶対に許されない行為です。「宇垣特攻」を知らされた小沢海軍総隊司令長官は『玉音放送で大命を承知しながら、私情で部下を道づれにするとは以てのほか、自決するなら一人でやれ』と口をきわめて難詰したといいます(前同)。しかし、敗戦のドサクサの中で彼は裁かれていません。
宇垣の部屋には「抱夢征空」の遺書が置かれていましたが、その署名は「海軍大将宇垣纏」とあったとのことです(前同)。海軍中将宇垣纏は、早々と「戦死」による大将への進級を自らの手でなしたのでしょうか(実際にはこの進級はなされず中将のまま据置かれた。なお中津留大尉らについても特攻による2階級特進でなく、通常の戦死による1階級の進級に留め置かれた)。
このような退廃的な軍指導者が靖国神社に英霊として祀られ、その写真が展示されているところに靖国神社の本質を垣間見ることができます。

2005年8月13日の紙面から、1年間かけて「戦争責任の所在を明らかにするキャンペーン」を展開してきた読売新聞主筆の渡辺恒雄氏は、ノンフィクション作家の保阪正康氏との対談「読売新聞『検証戦争責任』を終えて」の中で、以下のように述べています。

 渡辺 「軍人勅諭」や「戦陣訓」で説かれていることは、下の者は上の者に絶対に抵抗してはいけない、上の者は下の者をいくらぶん殴ってもいいということに尽きます。そういう精神風土が日本軍全体にあり、みんな徹底的にそういう暴力的なしごきを受ける。兵というのは「1銭5厘」、どこで殺そうか死のうが構わないという人命軽視の哲学-哲学なんて立派なものではないけど-から、特攻とか玉砕という思想が出てくるんですね。
 保阪 今回の特集の項目の中にも、「人命・人権の軽視」というのがありましたね。満州事変から日米開戦までの縦の軸と、議会、世論形成といった横の軸をおいて戦争の実相を描いているように思いました。その横軸の項目は、渡辺さんの発想ですか。
 渡辺 ええ。僕らも中学時代からさんざん、肉弾攻撃というか、最後は突撃で決めるんだと教え込まれ、そういう訓練をさせられたけど、あれは日露戦争で乃木大将がやったことですね。203高地とか、兵がどんどん殺されるのがわかっているのに、忠義だ、国家のためだといって肉弾突撃をさせる。そのような乃木思想が神格化されて「軍人勅諭」や「戦陣訓」となり、人間を物資、兵器として考えるようになった結果、人間魚雷・回天や人間爆弾・桜花という特攻兵器が発明され、絶望的に使われたわけですね。
   日本軍の残虐性を象徴的に示しているのは、特攻だと思います。みんな志願して特攻に望んだと言われていますが、上官に命令されたんですよ。上官の命令は天皇の命令であり、志願しないとぶん殴られるから出撃する。だけど怖くて途中で帰ってきちゃう人もいた。3度帰ってきて、ひどい目にあったという特攻兵だっているんです。人間魚雷・回天にいたっては出撃すると外に出られませんでしたからね。
 保阪 回天という特攻兵器は、見ただけで涙が出ますよね。本当にひどい。この特攻兵器の搭乗員として訓練中に亡くなった学徒兵(東大生)は、機器が故障し、海中で1時間ほど閉じこめられたままで亡くなっています。私は、この学徒兵がその間何を考えていたのかと考えるのですが、自らの生まれた時代の残酷さに強い怒りを持ったと思うんです。
 渡辺 ねえ。あんな残虐なことを20世紀に、天皇の名においてやったんですから。こういうことをはっきりさせなきゃいかんですよ。
  (『論座』2006年11月号)

憲法に関しては、いろいろ問題発言もある渡辺主筆ですが、戦争責任・靖国問題については、ブレが見られません。それは彼が、日本の敗戦時に将校ではなく陸軍2等兵であった体験に裏打ちされているものだからと思います。
特攻記念館で、短き命を散らされた若者たちに涙するのは、自然な気持だと思います。
しかし同時に、彼らの無念さに思いを馳せるべきです。そして、このような愚行を強いた政府・軍の指導者達に怒り、その責任を追及すべきです。
《特攻隊員達の犠牲の上に、戦後の平和と繁栄が築かれた》などと無責任なことを言わせてはいけません。彼らの死が、戦後の平和の実現に不可欠であったなどとどうして言えましょうか。

■■引用終了■■

…戦争によって犬死にさせられたことの怒りを忘れてはならない。








★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。

怒れ!全国1000万人パート労働者よ~安倍パート改善策は絵に描いた餅

2007-01-14 11:40:56 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
朝日新聞によると【パート労働者の待遇改善を目的に、厚生労働省が通常国会に提出する予定のパート労働法の改正案要綱が12日、明らかになった。正社員との賃金などでの差別待遇を禁止するのは、雇用契約期間に定めがないパートと明記。仕事内容のほか、採用や転勤など人事管理も正社員と全く同じとの条件もつけている。このようなパート労働者は極めて少ないとみられ、安倍首相はパート法改正を「再チャレンジ」促進策の柱の一つに掲げるが、政策効果も限定的となる可能性がある】という。


パートのうち、雇用期間が限定されておらず、仕事内容、採用、転勤が正社員と同じ条件の人って現実にはほとんどいないのは明らか。それでもパート待遇改善策だと胸を張る安倍って馬鹿なのか、確信犯なのか…。

いずれにせよ、ホワイトカラーエグゼンプションを導入しないと「パートの処遇改善や最低賃金底上げの法改正案も出せなくなる」というセット論が政府側の説明だった(ここ←参照)。しかし、現実には、パートの改善は骨抜き状態なのだから、セット論は破綻したというほかない。

こんな姑息な政府にいつまで自らの生活を委ねるのか?安倍辞任を大きな声で叫ぼう!







★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。

公開討論会「憲法国民投票法案と『メディア』を考える」~カタログハウスで

2007-01-13 20:40:06 | 憲法改正国民投票法案そのほか
何度か書いたように、憲法改正国民投票法案は、与党と民主党の間でほぼ妥協案がまとまり、次期国会で共同提案されようとしている。メディアについてもほぼ固まったが、①テレビCMの放送に規制をかけるか否か、②かけるとした場合、その期間はどうするか(全面禁止、2週間前から禁止、1週間前から禁止)という点がまだ未確定だ。

そういう意味では、今回紹介する討論会は、与党・民主党の決定に影響を与えうるものになるかもしれない。ぜひ、足を運んで、議論を見守り、議論に参加してほしい。


日時:2007年1月21日(日)午後1時~5時 
※午後12時40分に開場しますのでお早めにお越し下さい。

場所:カタログハウス(セミナーホール)
東京都渋谷区代々木2-12-2
JR新宿駅南口より徒歩8分
都営新宿線、大江戸線新宿駅より徒歩5分

参加費:  前売り券:1000円
(当日券:一般1500円/学生1000円)
資料代込み
前売り券購入希望者は本会事務局に申し込んでください
(E-mail:ref@clock.ocn.ne.jp/FAX 06-6751-7345)
椅子席は130、来場者がそれを超すと立ち見となります。
取材目的で来られる方を含め、どなたに対しても例外なく参加費を徴収します。

主催:1.21公開討論会実行委員会
(田島泰彦上智大教授ら7人で構成)

詳細は、http://www.ref-info.net/information.html#20061226[国民投票/住民投票]情報室のウェブサイトをご覧下さい。





★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。


弁護士に岡っ引きになれというのか! パート5:電話秘書業者らにも通報義務…

2007-01-13 00:54:46 | ゲートキーパー(一億総密告社会)制度
25日開会される国会に上程されるゲートキーパー法案(犯罪収益流通防止法案)の義務対象事業として「郵便受取代行業」と「電話受付(電話秘書)代行業」が追加されそうな勢いだ(こちら←参照)。つまり、電話受付代行業利用している小企業にかかってきた電話の中に例えば、ヤクザを名乗るものがいたり、巨額の取引に関する伝言などがあった場合、電話受付代行業者は、違法な取引であるかもしれないと警察に通報する義務を負うのだ。あるいは、郵便受取代行業を利用している小企業に、海外の銀行から手紙がたくさん来た場合にも…。

それって本当に変じゃない。政府側が税金の使い道とか、公文書とかきちんと公開もしないでおいて、市民の動きは徹底的に環視しようとする…。本当にそんなことを許してよいのか?

金融機関、不動産業者、貴金属業者・宝石商、弁護士・公認会計士・税理士、信託受託者などなど、お金が動くあらゆる場面で監視されてしまう…。自分は悪いことをしていないからかまわない…。本当にそうでしょうか?全て環視されるということは、実際は悪くはないけれども誤解される動きも監視されうるということです。その場合、捜査側が本当は悪くないことを知っていても、政府に刃向かう「勇士」をはめてしまうこともできるわけです…。







★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。

NHK・ETV番組改編事件判決、今月29日午後2時、東京高裁101号法定で

2007-01-12 06:36:40 | NHK番組改編事件
今の安倍政権を潰すチャンスだったとも言われるNHK・ETV番組改編事件の判決が今月29日、下される。この事件では、番組を直接制作した長井デスクが涙の告発をし、証言台では長井デスクに続き、永田チーフプロデューサーまでも、政治家(安倍、中川)の圧力を訴えた。普通の国であれば、放送局に対するそこまでの問題行為が明らかになったら、辞任するしかないと思うが、日本は普通の国ではないため、のうのうと生き延び、首相、政調会長にまで上り詰めた。「美しい国」、はぁ、聞いてあきれる醜さだ(安倍、中川が圧力を加えたことについては、ここ←参照ください)。

NHKの受信料を総務大臣が2割値下げだとか抜かしているが(ここ←参照)、そういうことを許したのは、番組会見事件の時に、きちんと、メディアに対する政治圧力の問題点を追及しなかったからだ。

司法がこの事件で、政治家の圧力を認めるか、NHKの改編が不当だったことを認めるか、ぜひ、注目してほしい。

判決後は午後3時から司法記者クラブでの会見、午後4時からは弁護士会館でのクラブ員以外を対象とした会見が行われる。さらに、夕方池袋で報告集会が予定されている。

見て、聞いて、伝えてほしい!





★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。


鳩山が国民投票法案の共同提出を受け入れ?!憲法改正問題で

2007-01-11 06:53:50 | 憲法改正国民投票法案そのほか
毎日新聞によると、【民主党の鳩山由紀夫幹事長は10日、自民党の中山太郎衆院憲法調査特別委員長と東京都内の個人事務所で会い、憲法改正手続きを定める国民投票法案について、25日に開会する通常国会に与党と共同修正案を提出する方向で党内調整に入ることを伝えた。安倍晋三首相は通常国会で同法案を成立させる方針を明言しており、民主党が共同修正に合意すれば成立へ向け大きく前進する。
 鳩山氏は中山氏から同法案成立への協力を要請され、「参院選のことを考えれば成立は早い方がいい」と明言。参院選が近づいて与野党の対決ムードが高まれば修正協議を進めにくくなるとの判断からで、5月3日の憲法記念日までに成立させるのが望ましいとの考えを示した】という。

かなり、危険だ。民主党に対し、共同修正をしたら、参院選挙では民主党には絶対に入れないという意思を明確に伝えましょう。

幸い、【同法案には共産、社民両党が強く反対しており、7月の参院選へ向け野党共闘を重視する民主党の小沢一郎代表が修正協議にブレーキをかける可能性もある】(上記毎日)という。そこで、小沢を支持する旨、民主党に伝えて小沢主導による党運営が可能となるようにするというのはいかがでしょうか。







★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。



-笑ってばかりで,怒ることを忘れた日本人よ-橋本勝の政治漫画再生計画第53回

2007-01-10 23:47:39 | 橋本勝の政治漫画再生計画
【橋本勝さんのコメント】
 年末,年始,テレビを見ることが多かったのだが,そこで気になったのがお笑い番組の多さ。それこそ朝から晩まで,お笑いタレントが出まくって,笑いをとっていた。日本人はこんなにも笑うことが好きだったとは……笑いは健康にいいとはいえ何か不健康なものさえ感じてしまった。私も漫画家のはしくれである。笑いの持つ風刺性を信じたい。しかし,笑いは現実逃避という面も持つ。
 今,日本の現実はとても深刻なものがある。格差社会の進行で,少数の大金持ち以外の国民の大部分は,貧乏人という国になっている。さらに憲法を,9条を変え,日本を戦争できる国にしようとしている。そんな現実に,鈍感な日本人よ。とんでもない事態におちいった時では遅すぎる。もう笑ってなんかいられない。怒れ,日本人!!

【ヤメ蚊】
 NHKニュース「伊吹文部科学大臣と松岡農林水産大臣が、それぞれ代表を務める資金管理団体が、家賃のかからない議員会館に事務所を置きながら、平成17年の政治資金収支報告書で、事務所費として3000万円から4000万円を支出したと記載していることについて、伊吹大臣と松岡大臣は『問題はない』という認識を示しました。」~怒れ,市民!







★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。

 

憲法改正国民投票法案、次期国会での成立を阻止しよう!

2007-01-10 07:34:10 | 憲法改正国民投票法案そのほか
毎日新聞によると、【自民党は9日、07年の運動方針案を決めた。重点政策に憲法改正手続きを定める国民投票法案の早期成立を盛り込み、憲法改正に向けた国民的論議を喚起することなどを明記したのが特徴。統一地方選、参院選を控えていることから安倍晋三首相が掲げる経済成長重視なども打ち出し、「安倍カラー」を前面に出す狙いをこめた】という。

確かに、与党と民主党はほぼ調整がついており(http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htmの「日本国憲法に関する調査特別委員会」の平成18年12月14日の議事録に妥協内容が記載してる=後記)、国会での賛成多数は揺るがない。しかし、市民は、調整案についてどう考えているだろうか。

個人的には、最大の問題点は、投票率の規定がないことだと思う。3割しか投票しなかったら、16%の賛成で改憲されてしまう。改憲という手続きにおいては、棄権した人は反対とみるべきではないだろうか。

また、周知期間が最短60日で短い。

さらに、公務員らの運動に萎縮効果が生じる余地がある。

このような問題を抱えたままで国民投票法案の「成立を許すことは、将来の改憲案についても阻止できないこととなってしまう。

例え、民主党までもが妥協していたとしても、市民が反対の意思を表明し、さらなる修正をしない限り、選挙で非与党、非民主に入れることを伝えよう!絶対にあきらめない!


◆与党・民主党妥協案◆

①国民投票の投票権:18歳以上

②投票の方式:投票用紙には賛成の文字及び反対の文字を印刷したものを使用し、賛成をするときは賛成の文字を囲んでマルの記号を付し、反対の場合には反対の文字を囲んでマルの記号を付す。■民主党は棄権欄を設けるべきだとする

③公務員の政治活動の禁止規定の適用除外:公務員が国会が憲法改正を発議した日から国民投票の期日までの間に行う国民投票運動については、国家公務員法、地方公務員法等の政治活動の禁止等に関する規定は適用

④国民投票運動の禁止される特定公務員の種類:選管の職員のみ(裁判官、検察官、公安委員会の委員並びに警察官を除外)

⑤公務員等・教育者の地位利用による国民投票運動の制限:「公務員等及び教育者は、その地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行いうるような影響力(教育者にあっては、学校の児童、生徒及び学生に対する影響力)又は便益を利用して、国民投票運動をすることができないものとすること。」+違反した場合の罰則は設けない

⑥広告放送の制限、有料の意見広告:国民投票の期日前14日に当たる日から期日までは禁止をする。■民主党は、単に十四日、十四日にした上で配慮規定を置く、あるいは全面的に禁止をするという三つの考え方から選択

⑦政党等による放送及び新聞広告:賛否平等

⑧組織的多数人買収及び利害誘導罪:十分に要件を限定した形で対応

⑨過半数の意義:国民投票において、憲法改正案に対する賛成の投票の数が投票総数(憲法改正案に対する賛成の投票の数及び反対の投票の数を合計した数をいう。)の2分の1を超えた場合

⑩施行期日:「三年を経過した日から施行する」

⑪予備的国民投票というあり方について、憲法審査会において議論する







★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。

すずめって、あの茶色い鳥でしょう…

2007-01-10 01:45:08 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
今日、地下鉄で大学生らしい3人組が話していた会話がここだけ突然、耳に入った。「えっ、すずめって、どういう鳥か確認しないといけない対象になっているのか?」

でも、東京にもカラスに混じって頑張って生きていますよね。どうして、こんな会話をしなければならないようになったのだろうか。周りにいる生物が何なのか、まったく、気にしないで育ってきたのだろうか?

う~ん…。ある意味、教育基本法改悪案があんなにあっさり成立したときと同クラスの衝撃かも。





★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。

弁護士に岡っ引きとなれと言うのか!パート4:共謀罪とゲートキーパー法の素敵な関係

2007-01-09 01:37:48 | ゲートキーパー(一億総密告社会)制度
政府が次期通常国会での成立をもくろんでいる犯罪収益流通防止法案(ゲートキーパー法案)は、実は、共謀罪法案と素敵な関係にあるのです。というのは、共謀罪法案は、共謀罪の対象となる犯罪を長期4年以上の懲役・禁固刑が定められているものとすることとされており、その数は619にも上るというのはもはや共謀罪反対派の皆さんの常識となっていることと思います。

しかし、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(←クリック)の規定する「犯罪収益」が、共謀罪関連法案によって、共謀罪同様に「長期4年以上の懲役・禁固刑が定められている犯罪」とされてしまうことはあまり知られていないかもしれません。

これまでは、「犯罪収益」は、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律2条2項にあるとおり、別表(68項に分かれて規定されている)に規定された犯罪などに関するものに限定されていた。限定されているとはいえ、その数は200以上であり、それ自体過剰だが、少なくとも現状では300以下とされている。ところが、共謀罪関連法案が成立したら、こちらも619の犯罪が前提となる。

つまり、弁護士は、もし、ゲートキーパー法が通ったとしたら、現状では、300以下の犯罪に関する収益の移動があったと疑わしく思われる取引があった場合のみ、通報する義務を負いうるが、共謀罪法案が通ったら、619もの犯罪に関する収益の移動があったと疑わしく思われる取引があったら、通報する義務を負いうることになるわけだ。

例えば、所得税や消費税の免脱も対象犯罪となってくる。すると、依頼者が、店構えの割に羽振りがいい取引先と取引をした場合、その取引についても報告する義務を負う可能性があるのです。

ゲートキーパー法案のみならず、改めて共謀罪法案の廃案をも訴えたい。








★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。

弁護士に岡っ引きになれというのか! パート3:ゲートキーパー法案上程迫る

2007-01-08 01:02:13 | ゲートキーパー(一億総密告社会)制度
政府は,このブログでも「弁護士に岡っ引きになれというのか!」というタイトルや「犯罪収益防止法に関する読売新聞社説への反論~小さく生んで大きく育てる… 」というタイトルなどで書いた「ゲートキーパー制度」(犯罪収益流通防止法案)を,今月25日開会される通常国会で成立させようと狙っている。

この法案は,テロ資金や犯罪収益が国内外に送金されるのを防ぐため、金融機関や各士業に疑わしい取引を警察(国家公安委員会)に密告すること(現状では日弁連が間に入るという法案を考えているようだ)を義務づけるものだが,まだまだ,広く知られていない。まずは,こちらのパンフレットをみてほしい。


この法案の問題点は,「自分は悪いことをしていないから,平気だ…」では済まないことだ。弁護士は,依頼者であるあなたが悪いことをしていなくても,あなたの取引先が支払う代金が違法な行為によるものかもしれないと感じたら,あなたとあなたの取引先が行った取引について,通報しなければならない。なぜなら,この法案は,犯罪収益の疑いのある金の動きを通報しなければならないこととされているからだ(現法案では、不動産売買,口座管理、出資行為などに限定されてはいるが…)。そして,通報を受けた警察庁によってあなたの銀行口座が凍結されてしまうかもしれない。そうなったら,決済が近い場合には,あなたが倒産の憂き目に遭うかも知れないのです。上記パンフレットに書いてあることは決して誇張したものではないということです。

たとえば,ある弁護士があるビルオーナーが死亡した事案の相続の相談を受けたとしましょう。そして,遺産分割の協議がまとまるまでの間,とりあえず,相続人の合意を得て,なくなった方の口座の管理をしたとします。そして,その口座にどうも違法な風俗営業をしているように思われるテナントからの賃料収入があったとします。この弁護士は,この賃料収入を報告しなければならないのです。
      ↓
すると,口座凍結!!
たとえば,その口座からビルの敷地の地代が支払われている場合,地代が支払われなくなり,借地契約解除,ビルを撤去して明け渡すような請求をされてしまうはめに陥るかも知れません。そうなると,せっかくの資産が消え去ります。

もちろん,風俗営業に貸すことが「悪い」ので自業自得という見方もあるでしょう。しかし,その罰がビルを失うことになってもいいのでしょうか?

少なくとも,弁護士であれば,たとえば,風俗営業に貸すことが犯罪収益収受の問題を生じるならば,「この賃借人には出て行ってもらいましょう」と指導するべきだと思いませんか?少なくとも,黙って警察庁に報告されるなんて予想もしないのではないでしょうか。

ところが,犯罪収益流通防止法案は,すでに生じたことについては通報義務が課せられるため、疑いがあることを知った以上、報告しないわけにはいきません。そのうえ、依頼者に通報したことを告げてはならないという規定が付せられる予定です。

ある日,突然,口座が凍結され,通報した弁護士はその原因を知っていても,そのことを口には出せない。口には出せないまま,凍結されたことについて,依頼者から相談にのることになる…これってあまりに悲惨な喜劇ですよね。


また,そもそも違法な風俗営業だと思ったが,実は違法ではなかったということもあるでしょう。たとえば,サービスをする人が独自の判断で違法行為に及んだとしましょう。それを根拠に,実際は,合法な営業の経営者の行為が違法なものとして対処されることは十分に考えられるでしょう。


問題が大きいこの法案について,皆さんも一度考えてみて下さい。弁護士が依頼者を売る社会にしてよいのでしょうか?


(写真は,共謀罪でも「楽しい」イラストで有名となった京都弁護士会のHPから)





★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。

安倍年頭記者会見:憲法改正国民投票法案通常国会提出+社会保険庁(労働組合)潰し宣言

2007-01-05 02:22:32 | 憲法改正国民投票法案そのほか
昨年末,教育基本法「改正」案がいとも簡単に成立した理由は何故か?ある政治家は,「教職員組合が裸にされたからだ」と解説する。つまり,国鉄,電電公社,郵政の民営化などを通じて,労働組合が弱体化し,教育基本法改悪阻止に力を十分注ぐことができず,教育のあり方に直接利害関係があると見られてしまう教職員組合が支援が少ない状態で反対運動を行わざるを得なかったからだというのだ。これは正しいと思う。当事者だけが盛り上がっていると見られるとやはり弱い。教育基本法改悪について,十分周知されなかったことも,労組弱体化が大きな原因だろう。つまり,はっきり言えば,最初から勝負が決まっていたということ…。これは,辛いけれども直視しなければならない事実だと思う。不利な中で、最後まで心ある市民は反対運動を繰り広げたが、数万単位が連日集まるような活動はできなかった。労働組合が弱体化したせいで,何が起きたのか,何が起きようとしているのか。政治問題だけではない。労働条件そのものだって,ホワイトカラーエグゼンプションの導入などは,労組がしっかりしていたら,ここまで議論が進むこと自体,あり得ないことだったろう。

1月4日,安倍は,年頭会見(全文はこちら←クリック)で,教育改革に次いで,
「社会保障制度について申し上げます。国民から信頼される社会保障制度を構築してまいります。社会保険庁は、残念ながら国民の信頼を失っています。お約束どおり、社会保険庁を廃止、解体、6分割をし、徹底した効率化、合理化を図り、国民の皆様から信頼される組織に変えてまいります。それに必要な法案を、この国会に提出をし、成立を期していきたいと、このように考えております」
と,社会保険庁解体を重要課題として挙げた。社会保険庁解体とは,すなわち,社会保険庁労組の解体を意味する。こうして,対立政党の票田を破壊し,かつ,市民のために活動する集団をさらに弱体化する。

確かに,組合にも問題がないわけではない。しかし,それは,無駄なダム建設や無駄な自衛隊,いいや,有害なダムや有害な自衛隊で儲けている連中の「問題」とはレベルが違う。無駄な,いや,有害なダム建設をやめれば,組合が抱える問題による税金の出費をはるかに上回る歳出カットができる。

安倍は,同じ記者会見で,憲法「改正」について,次のとおり述べている。

「今年は、憲法が施行されてから60年であります。新しい時代にふさわしい憲法をつくっていくという意思を、今こそ明確にしていかなければならないと思います。自由民主党の草案は既にできているわけでありまして、与党・各党との協議を進めていってもらいたいと考えております。
 まずは手続法案であります。日本国憲法の改正手続に関する法律案について、与党内、また与野党で議論を深め、今年の通常国会に提出できることを期待したい。与野党でそのために議論が深まっていくことを期待したいと思います。
 また、先ほど申し上げましたように、今年は憲法が施行されて60年であります。憲法を、是非私の内閣として改正を目指していきたいということは、当然参議院の選挙においても訴えてまいりたいと考えております」

有害な,まぁ,少なくとも無駄な憲法「改正」を行うために,税金をいくら出費するつもりなのか?そういう無駄遣いをすることの方が組合の問題よりもよほど深刻なはずだ。

前にも書いたが,われわれ市民は,「のうのうと生きること」を考えていけばいい。企業がいくら儲けるかなんてことは基本的には関係ない。勤めている会社が世界最大規模の企業になることよりも,自分の給料を上げてくれたり,会社が不正行為をしていないかチェックしたりする組織が,会社内にあるかどうかの方がよっぽど大切なはずだ。組合の中で突出した者の行為に目を奪われることなく,闘える労働組合を支援することを当然とする意識を共有したい。

…しかし,教育現場で労働組合の意義についてどのような説明がなされているのだろうか…。その現状を踏まえ,労働組合を再生するにはどうしたらよいのだろうか…。

憲法改悪が国民投票にかけられるとき,最初から勝負がついている状況にさせないために何をするべきなのだろうか…。

(写真は,官邸HPから。しかし,桐の紋,なんでここで使うんでしょうかね)








★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。

政府が核保有を焦るのは何故か?~答えは一つ

2007-01-03 03:12:41 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
産経新聞が年末伝えたところによると、【「日本が小型核弾頭を試作するまでには少なくとも3~5年かかる」とする政府の内部文書が24日明らかになった。】という。この【政府内部文書はことし9月20日付で作成された。10月9日の北朝鮮核実験に先立ってひそかに政府機関の専門家が調査し、まとめた。小型核弾頭試作までに3年以上の期間、2000億~3000億円の予算と技術者数百人の動員が必要という。】ものだ。

この記事が核開発に対する世論の反応をみる観測記事であることは間違いないが、残念ながら、この記事に対する反応は至って小さいようだ。しかし、数年前なら大問題となるかもしれないアドバルーンを上げてまで政府が核軍備を進めようとするのはなぜか?政府はなぜこんなに核保有を焦るのか?もちろん、政府の方針には、明らかに財界の意向が反映されているはずだ。では、その意向とは何か?

米国の中東戦略に日本が習おうとしていること、早晩崩壊するであろう北朝鮮の核兵器を過大視してそれに対抗するというムードを醸し出していること…ここから導かれる答えは一つしかない。それは、枯渇しつつある地下資源の奪い合いに負けるな!というものだ。

財界や政府は、石油などの資源が各国間で奪い合いになるとき、核兵器を持っている国と持っていない国とでは発言力が違ってくると考えているのだろう。そして、それ自体は正しい。

しかし、いずれ枯渇する資源に頼っていても仕方ないわけで、本来、日本が選択するべきは、地下資源に頼らない国づくりであるはずだ。太陽熱・光、風力、潮力、これらを活かしたエネルギー政策を直ちに実行し、地下資源に頼らない国をつくることで、世界平和に貢献する…これが日本の選択するべき道であり、それは実は、至極簡単に実現することだと思う。全ての新築物件の屋根に補助金で太陽熱・光発電器を、全ての道路、全ての国有地に税金で風力発電装置を…。そのためには、景観は度外視する。

美しさのために、命を奪われるのはたくさんだ。

中国・韓国との領土問題にしても、その背景には地下資源の問題がある。地下資源なんて別にあてにはしてないよ、そんなもんなくたって何とかやっていくよっていう国になれば、例えば、日本の抱える領土問題は大した問題ではなくなる。そして、いずれは、国境のない世界だって実現できるはずだ。

電力会社などのエネルギー関連会社、それを利用した車などの製品をつくっているメーカーの意向を無視できない現政府には脱地下資源社会を言い出すことは無理かもしれないが、いったん、そちらに振り子が振られれば、案外、簡単にそちらに向かって進むことができるのかもしれない。

いま、教育の問題、憲法の問題、環境の問題などに取り組んでいる方々は、政府の狙いの根っこに何があるのかを考えてほしい。当面の敵をたたくことも大切だが、その根っこについてみんなで考え、知らせあわないと、時間切れになってしまう。モアイ像が残るイースター島で起きた悲劇(ここ参照←クリック)を避けるための時間はそんなには残されていない。

…このブログを読まれる方はそんなことは言われなくても分かってるよっていう方が多いとは思うのですが、新年早々、考えれば考えるほど、焦ってしまうのです…。




写真はこちら(←クリック)から








★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。