サンドウィッチマンのコントに奇妙な刑事が出てくる。取り調べは二の次で、容疑者にうまいカツ丼を食べてもらいたいと自ら調理に精をだす▼昭和の刑事ドラマを逆手に取ったコントなのだろう。実際は知らないが、あの時代の刑事ドラマにはカツ丼で容疑者の心をときほぐし、供述を引きだすという場面がよくあった▼もっとも「供述の任意性」という点ではこのカツ丼も問題だろう。供述はあくまで本人の意思によって行われなければならず、カツ丼で誘導したと疑われかねない▼事実なら使ったのはカツ丼ではなく「示唆」か。二〇一九年参院選をめぐる大規模買収事件のその後である。東京地検特捜部の検事が河井克行元法相から現金を受け取った元広島市議に対し、不起訴を示唆しつつ、現金が買収目的だったと認めさせるかのようなやりとりが録音データに残っていた▼「議員を続けてほしいと思っている」。検事の言葉は不起訴と明言せずとも聞く者に不起訴を期待させたはずだ。カツ丼代わりに不起訴をほのめかし、元法相立件に役立つ供述を誘導していたのなら事件の真相解明にはほど遠い「裏取引」だろう▼金を受け取った地方議員らはいったんは全員不起訴になっている。その後、検察審査会が一部を起訴相当としたが、元法相立件を優先する裏取引で「お目こぼし」してよかった相手だったとも思えない。
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