キリル・ベロルコフ-ヴィクトリア・カルチェンコ| クレムリンカップ2021 | ルンバ| 決勝| プロフェッショナルラテンWDC
Pianista Kirill Belorukov with Viktoria Kharchenko on AirDance Christmas Ball 2020
夏の涼しさは東京の名物であったらしい。物理学者の寺田寅彦が随筆に書いている。<夏の夕べの涼風は実に帝都随一の名物であると思われるのに、それを自慢する江戸っ子は少ないようである>と▼今同じ自慢をする方は、どれほどいるだろう。寺田がたたえている帝都の涼しさは、熱をためるコンクリートやアスファルトに大都市が覆われる前のものだ。熱帯夜なる言葉も今ほどの気候変動への恐怖もない、八十年以上前である▼こちらの自慢めいた言葉はなんだろう。報道で今ごろ知ったことを白状しつつであるが、東京五輪招致の際の立候補ファイルは、この時期の東京を「温暖」な気候とうたっている。英語を見ると、マイルドとあった。「穏やかな気候」か。涼風が吹いていそうだ▼今大会で高温多湿にやられる選手が続出している。穏やかならざる事態だ。テニス女子のスペイン、バドサ選手はメダルを狙っていたが、熱中症とみられる症状でシングルス準々決勝を棄権した。競技をする暑さではないという声が出ている▼招致に成功しても、うまい対策は見つかっていないようだ。つけを払わされるのが選手では気の毒である▼この時期の開催は巨額の放映権料を払う米放送局の意向という。収入は大切だが、選手の健康や競技の質以上ではない。猛暑が名物とやゆされることになりかねない大会は今後も気がかりだ。
「夢」「永遠」「未来」「成長」−。習字の課題に似ているが、違う。近くの図書館の蔵書から、「何々へのパスポート」という題の本を探すと、たくさんあった。「合格」や「国際人」「幸せな老後」も▼中には「犯罪」や「戦場」などというのもあって、一概には言えないが、「パスポート」という言葉が、好ましい状況を実現する手だての例えとして、広く使われてきたのが分かる。旅券と訳す本来のパスポートのほうは、通過と港などを意味するフランス語が由来らしい。船の出入港の許可が、人の渡航にも使われるようになったようだ▼新しい「パスポート」を待望している人は多いだろう。申請の受け付けが始まった新型コロナウイルスのワクチン接種の証明は「ワクチンパスポート」と呼ばれる。「隔離の免除」をはじめ「ビジネス」「留学」などへの手だてとして、対象国が増えれば、重要な証明になりそうだ▼好ましそうに思える一方で、渡航先に限らず、国内での運用を求める声もある。活用の仕方次第で、経済への効果がありそうな分、接種しない選択をする人や健康上の理由で接種できない人たちに大きな不利益が生じないか、心配になる▼接種は任意である。接種できない人の身にもなって慎重に考える必要があるはずだ▼「国際人への」であっても「冷遇への」であってはならない新パスポートであろう。
子どもの読書感想文の書き方を教えてほしいと頼まれた。どなたにも覚えがあろう。夏休みの読書感想文は難題である。そのせいで読書が嫌いになったと言い張る大人も何人か知っている▼子どもが本嫌いになるのは忍びない。原稿用紙の九割方をあらすじの要約で埋め、最後に「おもしろかった」と書いていた身には荷が重いが、簡単な書き方を考えてみる▼最初から原稿用紙に書かない方が良いだろう。まずはメモ用紙を四枚、用意。一枚目には「どんなお話か」、二枚目は「一番好きな場面とそのわけ」、三枚目は「一番嫌いな場面とそのわけ」、四枚目は「主人公のかっこいいところとそのわけ」を書いてみる▼難しいのは、「どんなお話か」、つまりはあらすじで、できるだけ簡略に書く。エジソンの伝記なら「少年が苦労をして発明王になる話」程度で構わない。二枚目以降も細かく書く必要はない。ただし、思ったまま正直に。先生にほめられたいと悩むから書くのがつらくなる▼四枚のメモを基にもう少しだけ詳しくしながら、全体を下書きしてみる。部品を作り、後で組み立てるやり方なら手順がはっきりしている分、少しは書きやすいだろう▼先生の評価は保証できないが、物語のテーマソングを作詞し、書き添えるという手もあるか。おもしろそうだし、なによりも、子どもが喜んで書いてくれそうな気がする。