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今日の筆洗

2024年11月08日 | Weblog
恐怖とは人が危険や常ならぬ状況に感じる情動である。死の恐怖、戦争の恐怖。人にとって恐怖は不快で遠ざけておきたいはずのものである▼恐怖漫画の巨匠、楳図かずおさんが亡くなった。88歳。不快なはずの恐怖。それを描く楳図さんの筆には引き込まれるのはなぜだろう▼こんな記憶がある世代は多いのではないか。小学生のころ、楳図さんの『へび少女』や『うろこの顔』を教室に最初に持ち込むのは女子の方でこれがやがてクラス中で「回覧」されていく▼持ち込んだ女子は怖くて独りでは読めないからみんながいる学校で読みたかったのかもしれぬ。楳図さんの描いたページは暗く、重く、奇妙な臭いや湿気まで含んでいるようで、独りで読んでいると後ろから誰かに見られているような気がしたものだ▼なぜ人は恐怖漫画やホラー映画にひかれるのか。恐怖を疑似体験し、生きていることを実感するためという説があるそうだが、楳図作品の場合はこう説明できるだろう。もちろん、怖いが、その不快さをはるかに上回る物語の展開の面白さがあったと▼楳図作品で一番怖い登場人物は誰か。『漂流教室』の「関谷」という人物は上位に入るだろう。タイムスリップした学校で子どもを支配する身勝手な大人である。化け物でも怪物でもなく、思わぬ状況に置かれた人間こそが一番怖い。これも楳図さんに教わったこと。

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