「友とするに悪(わろ)き者、七つ、あり」。吉田兼好の『徒然草』第百十七段。友にすべきではない七種類の人間を挙げている。いわく、高貴な人、若い人、酒飲み、勇ましい人、うそつき、欲深い人▼不思議なのは「病無く身強き人」つまり健康な人もリストに入っていること。想像はできる。元気な方というのは病や不調を抱える人の気持ちが分かりにくい。痛みを愚痴りたいのに不摂生を非難し、自分の健康を自慢するような友人ではかなわない▼トランプ米大統領が新型コロナウイルスに感染した。大統領選挙の投票日まで約一カ月。再選を目指す大統領にとっては大きな痛手である▼七十四歳という年齢と太り気味の体格で重症化のリスクもあると聞く。早期に復帰すればコロナに打ち勝った頑強な大統領として支持率が上がるという分析もあるが、選挙戦の最終盤で遊説もままならぬとあってはなかなか厳しい状況である▼一つ確かなのは、大統領が「病無く身強き人」ではなくなったことか。「友とするに悪き者」にいくつか該当する言動がないとも言えぬ大統領だが、この件でコロナの恐ろしさに加え、人の痛みや不運を理解できる人へと変われば、「友にしたい」という支持もまた期待できるかもしれぬ▼不作法な振る舞いで評判を落としたテレビ討論会が最後の見せ場では悔やんでも悔やみ切れまい。早期回復を祈る。
【ノーカット】米大統領選テレビ討論会(2020年9月30日)
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