ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

それでは「怪しい講座」、本編です?!

2007-03-11 19:26:41 | 着物・古布

ヒト様には「針を持ちましょう」なーんて言ってるくせに、
自分じゃ結構「人まかせ」…ネットショップで買いました。
「うそつきじゅばん」です、しかも上だけー。

とりあえず今日からは「怪しい講座・手抜き、ごまかし、うそ、だましのお話」
ありゃーなんか「振込め詐欺」のレクチャーみたいな名前になっちまいました。
決してそーではありませんのでっ!
ここでいう「うそ」とか「だまし」というのは、
「モノを大切にするため」「ラクに着物を着るため」
更には「着物を楽しむため」のテクニック…というお話です。

先にあげた「うそつきじゅばん」、着物を着ていらっしゃる方には、
いまさら説明も要らないところですが、ご存知ないかたのために…。
これは上下に分かれたじゅばんで、袖と腰から下だけが「色柄のある生地」で
胴体、つまり身頃の上部分と腰の周りだけ別布のさらしなどをつけるというもの。
「二部式じゅばん」とも呼ばれています。
今「じゅばん」というと、長じゅばんが主流ですね。絹には絹の、
木綿やウールなどにはモスやポリなどのものを合わせるのが普通…です。
なんとなく「二部式」つまり「うそつき」は普段用、というランクです。
確かに「現代」の着物常識では、当たり前のように「着物と長じゅばん」と
そういう組み合わせで考えられ、着付け教室でも、着付けの本でも、
また呉服屋さんで着物をセットで買おうとしても、
「長じゅばん」で絹には絹、それは絹物にはとーぜん…なのです。
間違いではないんですよ、それでいいのです。
ただ、そうでなければならない、ということはない、と私は思っています。

そもそも長じゅばんというものは、江戸時代も後期になって、
色里の女性、つまり遊女たちが着始めたもの。
「オシゴト上」都合のいい形状であり、見栄えもよかったからです。
ですから流行り始めた当初、一般の女性、つまり「素人の女性」達は、
「あれは玄人の着るもの、(卑しいシゴトの)プロが着るもの」として、
それを着ないことで、一線引いていたという部分もあったそうです。
芸者遊女はタビをはかない、というのも、そういう「一線」のひとつです。
しかし「便利なもの」は、広がるのですね、結局時が経って、
長じゅばんは受け入れられ、一般の人も当たり前のように
着るようになったわけです。では、それまでは?
それまでは、みーんな「二部式じゅばん」だったんですね。
今の「うそつき」ではなく、襦袢をそのまま上下に分けたもの、です。
ただし、昨日も書きましたが、当時の暮らしの中では絹も木綿も
たいへん「高価」なものでした。ですから、今の「うそつき」のように
袖と腰下だけで、真ん中別布というのも当たり前にあったわけです。
むしろ、庶民ではそういうほうが多かったんじゃないでしょうか。
今のように「うそつき用」に布を買うのではなく、
今そこにあるもので作ったら「うそつき」になった…というわけです。
長じゅばんも同じです。

昨日も書きましたが、今の着物事情は、戦後一度廃れてしまったために、
こうなんです、と「基本だけ」をズラズラと持ち出しているんですね。
今の着物を着ているみなさん、とにかく「キチン」と着ていらっしゃいます。
そう教えられるからです。また、今はそれが主流です。
でも、ついこの前までは、普段着物なんてもっとぐずぐずに着てました。
今それをやって外を歩いたら「何てだらしのない」といわれてしまいます。
これはしかたのないことです。普段着物を着る人が少ないのですから、
普段着物も全部まとめて「今流着方」で、きれいに着ているわけです。
私はそれが悪いとは思いません。時代の流れに乗る、ということも、
それはずっと行われてきたことなのですから。
ただ、昔は「ずっとつながっていた中で変化した」のですが、
今は「一度途切れたので元を知らないまま変化した」わけです。
だから「そうでなければならない」と思い込み、苦しいのなんのと悩むんですね。
もっと気楽にかえられるところは、そうしていっても別にかまわない、
これが私の現代の着物を楽しむ方法です。

「うそつきじゅばん」もそのひとつです。
上に「うそつきは今は普段用のランク」、と書きました。
この場合の普段用というのは「普段着物の中の、更に木綿やウール」の意味です。
でもそれは「着物には長じゅばん、絹には絹」という、基本中の基本、
それだけを「こういうものなのですよ」としているからです。
昔の人の知恵と工夫、それをこういうところで使えばいいわけです。
正式な長じゅばんを縫うのは、それなりにたいへんですが、
肌じゅばんから一歩進んだ「うそつきの半じゅばん」なら、
ちょっとおけいこすれば縫えます。
本来、絹と木綿は素材が違いますからあわせないものですし、
使う針も糸も違います。でも和裁の本には、絹と木綿で載っています。
すべりのよい合繊を…とか、そんなことも書いてあります。
つまり、最初から新しいじゅばん地をわざわざ細切れにするのではなく、
「あるもの」でいい、わけですから、その辺のことはいいんじゃない?
でしょうか。ハデできられなくなった小紋なども利用したっていいと思います。
昔のじゅばんなどを見ても、絹と木綿のコラボなんて珍しくありません。
中には麻も入っていたり、つむぎと小紋があったり、何でもアリです。
着ないからとタンスにしまいっぱなしより、形を変えて使うことのほうが、
ずっと着物のためでもあり、自分のためでもあると思います。

この半じゅばんと裾よけの作り方、載せましょうね。
今日はちょっと長くなるので…お待ちください。

繰り回しのじゅばん、つまりいろいろ合わせたもの、
以前載せた写真ですが、出してみましょう。


             


胴体の部分の更に後ろは、絹、木綿、更にモスリンもです。


        


こちらはじゅばんではなく「襲の着物」の「中着」、
じゅばんの上に着るものですが、同じ柄の着物を重ねて着るため、
薄くして着易く、重さを軽減するのと節約のためもあったのでしょう、
表地を抜けるところは全部抜いています。
この中着になると、袖も重ねてきるのにかさばらないよう
袖口と袂の「振り」と衿だけ、上に着る着物と同布を使っています。
この袖の作り方、「うそつき」で、更に布がないときに使えるテですよね。


                  

あとは…いろいろな工夫、私は10年前と体重が10キロ違うんです。
こんなハズじゃなかったのに…泣いてる場合じゃないっ!
そこで、うそつきの上もちょいと手を加えています。
トップの写真のモノはまだ新しくてやっていないのですが、
まず、脇の「馬乗り」つまり「スリット」ですが、そこを広げます。
この「馬乗り」は、着た時スカートのスリットのように体の真横にはきません。
衿を抜くからです。そうすると、あまり広いスリットは、その先が
ビラビラとジャマになります。それで、ラウンドカットしてしまいます。
元々着物は何から何まで、広げれば四角形、というのが大事なポイントです。
あの丸っこい元禄袖の丸みさえ、カーブに切ってはいません。
すべて「解けば元に戻り」「再利用に便利」なためです。
でも、さらしの半じゅばんは着倒しても、先々はせいぜい窓磨き布程度です。
だったら「丸カット」もアリでしょう。
また、下半分については、さらし部分にタイトスカートのように
タックを入れています。これで腰へのなじみがいいんです。
やせているころは、腰まわりにじゅばんがモタつこうと、
おはしょりが厚かろうと、かえって補正になったのですが、
いまや自前の補正肉が…。それで、なるべく薄くすっきりと…の工夫です。
こんなこと、気がついていらっしゃる方はとうになさっていると思いますが…。

うそつきも中着も、言ってみれば「外から見えるところが
きちんとそれらしく見えればよい」というものです。
それは「ごまかし」ではありますけれど、
悪意のある「うそ」やヒトを不快にする「ごまかし」ではありません。
着物や布を大切に、そして楽しく美しく着るためのすばらしい知恵です。
私の親の時代の人間は、外に行くときはきちんとしなさい、といいました。
それが絹であろうと木綿であろうと、まずは「清潔」であること、
そして穴があったらつぎをあてる…穴が開いたままのほうが恥ずかしいのです。
こざっぱりと、見栄えよく、それは、それを眼にする他人様に対しても
不快にさせない心遣いです。きちんと洗い、糊を効かせたりシワをとったり。
そういう思いから美しい「端縫い」も生まれたわけです。
こちらも以前にも出しました端縫いです。


          


足りないもの同士を合わせて、更に美しく、あるいは便利に、
これが実は着物を楽しむ醍醐味のひとつでもあると、私は思うのです。
着物まで縫えなくても、肌じゅばんから、半じゅばんくらいまで、
作ってみませんか?

長くなりましたので、今日はこれまで。
「怪しい講座」は更に続きます。




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6 コメント

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Unknown (とんぼ)
2007-03-13 17:36:08
穴熊の女房様
お母様、お若くてなくなられたんですねぇ。
私の母も、もののない時代の人ですから、
つないでつないで…なんてのは当たり前でした。
そういうものを眼にして育ったというのは、
今にして思えばしあわせなことだと思っています。
お役に立つことがあればうれしいです。
今後ともよろしくお願いします。
返信する
うそつき (穴熊の女房)
2007-03-13 03:58:28
とんぼさん 目から鱗です。
あの襦袢 うそつき襦袢ですか
実家の母は和裁をしていました。
私が27歳の時 母は47で他界しました。
その頃は 普段に着物着ていましたがいつも うそつき襦袢でした。
今は 自分で 習わぬなんとかで 縫っています。
本物の 長じゅばんは 正装のときくらいですね。
やっぱり 学校で勉強はしなくてはいけませんね。
実際の知識はあるとしても総体的な 理屈がわかりません。
いつも トンボさんのブログで「なるほど」「ふーん」「そうか」と言いつつ 勉強しています。
楽しみに見ています。
返信する
Unknown (とんぼ)
2007-03-12 18:16:39
陽花様
決められたことの中でも自由を見つける、
なんか楽しいですね。
昔のヒトのセンス、なかなかのものです。

恵様
ははは、「尻叩き講座」ってのはいいですね。
ムチ持たなくちゃ!なんかジャンルが違う?
衿幅と、もうひとつは「くり」の加減でしょうね。
衿元って面倒なんですね。がんばってください。
しっかり、いや恐る恐るですが~「おいどさま」を
たたかしぇていただきましゅので、えいっ「ぴちっ」

蜆子様
お話は聞いたことありますが、現物は見ていません。
喜んでご紹介させていただきますが、
画像がないので、詳しく書くことはなかなか
難しいですから、蜆子様、ぜひご自身のブログで
ご紹介ください。
返信する
うそつき (蜆子)
2007-03-12 09:51:13
ネットで購入の半襦袢、
あの袖の中に、もうひとつ、レースの袖これが木綿です、をつけています。絹の袖だけははずして、胴体は洗濯機行きです。
夏バージョンは、袖が麻です。
これものすごい便利
とんぼさんの講座実施にさいし、もう一つ付け加えていただければと思いまして。
返信する
いよいよ ()
2007-03-12 00:56:55
尻叩き講座の始まりですね。
物を大事にする。清潔に着る。相手に不快感を与えない。
二部式襦袢を買った私。
衿幅が広いらしく着物を合わせると襦袢の衿が飛び出します。
これを直すのは衿幅を狭めれば良い。
それは判っているのですけれどね・・・
返信する
Unknown (陽花)
2007-03-11 22:16:51
昔の着物や長襦袢の端縫いなど見せて頂く度に
本当に昔の人はこまめで小さい布さえ無駄にしないで
使っていたんだと感心します。
袖口や振り、裾など見えるところには考えて使ってあるあたりは本当に参考になります。
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