昔着物は、紅絹裏のものも多いので、こういうものがだんだん溜まってきてまして…。
ただ、今これをお使いになられるのは「お人形さんの着物」とか「ちりめん細工」とか、
そういう方が多いので「胴裏」としては、ほとんど売れません。
ご入用のかたはいつでもメールでお知らせください。やまっほどありますので。
<追記 この記事アップのあと紅絹をご希望の方に、胴裏として使用可能なものは、
何点かお譲りいたしましたので、現在着分の胴裏としてよいものは、ちと難しい状況です。
胴と袖は別…などの工夫でなら対応できるかと思いますが、ご入用の方は、まずご一報ください>
同じ紅絹でも、もちろんピンキリですし、色もたくさん並べて見ると、微妙に違います。
デジカメは赤の微妙な違いを出すのが難しいのですが、こちらは「元の羽二重」の質の違いです。
わかりますでしょうか、左が上質、右はまぁ普及品と言いますか、ランクの下のものです。
違いがわかりにくいので少し色を薄くしました。実物は両方とももう少し真っ赤です。
並べると同じ位の赤さなのですが、右は織り糸の太さにムラがあるので、ちょっとつやが消え、
色も違って見えます。一枚だけ見ていれば「ただの真っ赤」なんですけどね。
紅絹は「もみ」と読みますが、コレは紅花をもんで色をつけたからといわれています。
紅花は、染料としてたいへん人気のあったもので、黄色の色素99パーセント、赤色の色素1パーセント。
だから紅花の花は見た目黄色ですね。
花を摘んで水に浸し、よくもんで「黄色」の色素を全部出してしまいます。
出した黄色は「黄色の染料になります。
赤の色素だけ残った花びらを集めて丸めて餅のような形にして、天日に干します。
そのままでも染料として使えますが、より濃い色上質な染料にするためには、そのまま発酵させます。
これが「紅花餅」「紅餅」「花餅」などと呼ばれるもので、これを売り買いしました。
染料として使うときは紅花の赤は水に溶けませんので、一度アルカリに浸けて色を出します。
昔は「灰汁」を使いました。つまり身近なアルカリ性。
そして色が十分に出たら「酸性」で中和するため、昔は「梅酢」をつかったそうです。
今は科学的な研究で、薬品や温度計などの使用で安定した状態のものができやすいわけですが、
酸もアルカリもわからなかったり、ほかに何もなかった昔は、
すべてのことが職人の経験とカンで行われたわけですね。
PH(ペーハー)なんて知識もないなかでこれを使うとこうなる…というのを見つけたのはすごいことですよね。
それでも同じ状態の色に染めるのは、大変だったと思います。
紅花染めの紅絹というと真っ赤なものが連想されますが、もちろん薄いピンクもありますし、
同じ紅花からとった黄色も、元は紅花ですから「紅花染」です。
今の紅絹は化学染料の染が多いです。本物は「本紅(ほんこ)」とよばれたものでした。
紅花の歴史は古く、その栽培は平安時代にはすでに広まっていたようですが、
いわゆる「技術」としては、すこしずつ向上していったものと思います。
また紅花は漢方薬としても使われました。古くからの草木染の一種ではありましたが、
だんだん北国での栽培がさかんになり、江戸時代には山形のものが最上といわれました。
さて、胴裏に赤いものを使わなくなったのは…たぶん戦後ではないかと思います。
表地に淡い色が着られるようになったから…という説もありますし、それも理由のひとつだとは思いますが、
こういうことの理由はひとつに限りません。いろんなものがからみあって、少しずつかわっていったのだと思います。
そのひとつには「着物のハデとジミ」の感覚です。江戸は後期はジミばやり、京都はみやびではありましたが、
いずれにしても、じゅばんには色の濃いものが多く使われました。
今より「モノは高い」「洗濯の方法が限られる」「汚れやすい」…そういう事情もありました。
どこへ行っても地面は土ですから、土ぼこりや雨がふれば泥はね、夏は暑くて汗をかき、普段は髪油で汚れやすい…。
今のように洗濯も洗髪も容易ではありませんでしたし、汚れたら洗うのも手間、縫い直すのも手間です。
できるだけ汚れの目立たない、濃い目の色が使われることが多かったわけです。
特にじゅばんは、より素肌に近いですから汚れやすいわけですし。
表地のほうも、洗濯の利く木綿よりも厄介な絹は、当然白や薄い色は日常的には着づらいものだったと思います。
江戸時代は、長じゅばんが流行り始めたころから「緋色」が当たり前、でした。
白を着るのは、ある意味、逆にゼータクだったんですね。
またこの「緋色」という色は、袖の振りからちらりと見えるのが、とても美しいものでした。
だから袖や胴裏が赤でも、ちっともおかしくなかったわけです。
またお互い赤ければ、色が移ってもわかりませんしね。
今、懐かしさあるいは美しさから、胴裏を赤にする方もいらっしゃいますが、袖裏胴裏はほとんどみえないはずなのに、
なぜか色の薄いじゅばんを着ると、なんか違和感を感じます。胴裏に赤を使うなら、じゅばんも濃い色にしてください。
年をとるほど、じゅばんは赤いものを着るほうが、引き締まるし、いいものです。
どうどうと真っ赤に大柄なんてのも着られるのもうれしいものですよ。
藍染めなどを発見した、昔の人は本当に
素晴らしいと感心します。
胴裏に紅絹を使うと色移り大丈夫なのかしら
とつい思いますが、今はそういう心配は
いらないのかしら・・・
今まで偶然、色のついた襦袢を合わせていましたが、もしかしたら無意識に白は合わないと避けていたのかも。
何も資料などないんですから、すごいことですよね。
私たちは、なんでもいろんな情報があふれてる分、
あんまりものを考えなくなっているんでしょうね。
今の紅絹は化学染料ですし、もしかしたら色止め加工も
してあるのかもしれませんが、
昔の紅絹は、手でもんだだけで指先赤くなります。
古着手いろの白いものなど、脇とか胸の辺りに赤い色が
染み出てしまっているのも見かけますよ。
汗かきには着られないですねぇ。
誰にならったわけでもないのに、感覚的に無意識に、
そういうことをしているというのは、
やはり日本人の優れた感性の「DNA」だと思いますねぇ。
ほんとに「チラリン」なのに、すてきなんですよねぇ。
古い物を着ていますと、同じ古い紅絹でも黄色っぽいものと真紅っぽいものがあったりしますけど、どちらも綺麗な赤です。
「胴裏が紅絹だったら戦前の着物」という大雑把な見分け方がありますが、紅絹自体は今でも作られているのですね。
色でも柄でも「控えめ」が主流になってしまったのは、ホント勿体無いと思います。
ずっと見ていると、眼がおかしくなるくらいの真紅です。
なんかイマドキの着物は、年齢のメリハリがなくて、
みんなジミかみんな無難…さみしいですね。
ちらりと見える赤のハッとする美しさ、復活して欲しいです。
紅絹の胴裏の話だったので、思わずコメントを。
義母からもらった古いアンティークの着物でとても素敵なものがあり、自分のサイズに直してもらうため洗い張りに出しました。
もともと紅絹の胴裏だったんですが、勧められるまま白い胴裏にしてみましたところ…なんだか着物の色が沈んでしまいました。
紅絹のままがよかったんだとしみじみ思いましたが、後の祭り。
でもそれ以来紅絹裏のものは、そのまま紅絹のままにすることにしました。
そして私もやはり胴裏が紅絹のものは、赤い襦袢が合うと思います!
はじめまして。
コメントありがとうございます。
見えないところなのに、フシギな効果があるものですよね。
襦袢は、色があったほうが楽しいですね。
紅絹の胴裏で検索していてこちらに参りました。
叔母から貰った小紋で胴裏が紅絹のがあります。
表は黒に赤の花が描かれていて八掛はくすんだサーモンピンクです。
生地はとても柔らかなので始めたばかりのお茶のお稽古に着ていきたいのですが年齢的にどうなんでしょう?
はじめまして。コメントありがとうございます。
黒地に赤の花、というととてもはっきりしたイメージですが、
花の大きさや、どれくらい花が飛んでいるか…などで、
イメージはずいぶん違いますので、
はっきり○歳くらい…と言うのは難しいです。
お写真でもあれば、もう少しわかるのですが…。
八掛がくすんだサーモンピンクとのことですから、
10代20代ということはないと思いますが…。
それと「うらに紅絹がついている」ということは、
かなり古いものということで、そのころのジミハデの感覚って、
今とはちょっとズレがあります。
既婚者がこんな派手なの着てたの?というような…。
なので何ともお答えしづらいことです。
それと「紅絹」は、とても色移りしやすいものなので、
表地が黒なら、表は心配ありませんが、
脇のあたりなど、汗だけでも襦袢に色がつくことがあります。
裏紅絹はあでやかでとてもすてきなものですが、
できれば胴裏を普通のモノに仕立て直すなどを
お勧めいたします。
あまりはっきりお答えできなくてすみません。