先にお断りしておきます。今日は写真いーっぱいで長いです。
いつものことですが、すみません。
おととい羽織の着姿、というお話しで「角だし」を締めてみました。
そこでふと思ったのですが、本来の角だしは、当然大正ころまで締められていた
「引き抜き用」の帯で締めるものです。
しかし今は、そういう帯がありません。袋帯、というわけですが、
袋はどうしても「オシャレ感覚」や「礼装感覚」が強くて、
普段には使いづらい上、角だしにするには「全通」でないと、
妙なところで柄が切れたりします。
それで今はカンタンな「今風角だし」がしめられるわけですが、
「角だし」というのと「銀座結び」というのがごっちゃになっていたり、
銀座結びは「名古屋帯の角だし」と呼んだり…。
着物初心者が、きちんとした説明を受けていないと、混乱するのでは…
と、そんなふうに思いました。
整理してみますと…、
☆ 元々「角だし」は引き抜きの全通や昼夜帯で結んでいたもので、
実は帯揚げ帯締め、ついでに枕もいりません。
これについてはあとで説明します。
☆ 帯の形態や結び方がかわってきて、元々の「引き抜き帯で結ぶ角だし」は
しめられなくなり、袋帯や名古屋帯による「今様角だし」が考案され、
これが「角だし」として定着しているようです。
元々の角だしとの共通点は、お太鼓の「て」にあたる部分が、
左右に張り出す、お太鼓のてっぺんにあたるところは、帯枕が入らず
平らになる、という点です。
とまぁ、こんな具合なんですが、私は今「着付け教室」などで、
この「角だし」が、どういう説明で行われているのかしりません。
ただ、帯の長さや種類によって、この「てを横に出して角だし、の形にする」
という結び方には、ふたつの方法があります。
「て」をどの段階で、横に出るようにおさめるか…の違いで、
ひとつは「てをあとから出す」もうひとつは「てを先に乗せる」です。
書いてあるものによっては「あとから差し込むほうが『銀座』」となっています。
あとから出すほうをやってみましょう。
今回は、帯が固いので、結ばず交差させるだけにしています。
左下が「て」、右に乗っているほうが「たれ」。
「て」をしっかり右上に持ってきて前に回す、仮紐をかけるなどして固定します。
(私はいつも、前帯にはさみこみます。今回は助手の洗濯ばさみクン)
たれのほうに帯の山にあたる部分を決めて、帯揚げを通し前で結びます。
(こういう結び方は、帯枕を使いませんから帯揚げだけになりますが、
しっかり結ぶためにも短い紐で結んで、上から帯揚げを掛けたほうが
いいんじゃないかと思います)
おたいこが形よくできる位置で、帯締をして決めます。
出来上がったおたいこの中に、「て」を形よく折って通します。
整えて出来上がりです。
次に先に「て」をのせてしまうほう。
最初の「交差して「て」を右、までは同じです。
ここで「て」の形を整えて、外に出る分の長さをきめ、たれに乗せます。
下の白い線が、帯山になるところです。
中側に帯枕もしくは帯揚げを入れます。
そのまま背中に当てて帯締めを前でしっかり結びます。
タレの下部分を中に折って形を整え、帯締をします。
形を整えてできあがり。
私は、専門家ではないのでよくわかりませんが、
結果的にでき上がる形はどちらも似たようなもの…。
細かく言うならば、原理的に言って、先に乗せてしまうほうは、
固定されやすいので「て」が動きにくく、背中に対して垂直方向に起こしやすい、
あとから入れるほうは、中で動くので手の角度が自由に変えられる…、
とまぁそんな感じなわけです。
もちろん細かいこところや「て」の出し具合、角度などによって
イメージは違いますが、こういうあいまいなところが、
混乱の原因ではないかと思います。
ちょっと脱線して…
前のほうで書いた「角だしは、何もなくても締められる」の説明です。
おとといの締め方の写真の続きを撮ってみました。
まずは、おとといの途中から…
中で一結びして「左右に出る『て(羽)』ができました。
中はこうなってます。
お太鼓の山を決めます。
実はここで、ちょっとややこしくなったわけで、
もう少し細かく写真を撮りました。
輪の中に「右の羽」が見えていますね。
輪になっている部分をだらりとたらすと、コレだけ長いです。
これではおたいこの形になりませんから、余分をなんとかします。
この写真ちょっと覚えておいてください
どれだけ長いかというと、ちょっとつまんでみまして、これだけ…。
これをもし下に折りこむとすれば「帯締め」がいります。
帯締めを使わず帯枕か帯揚げを使うことにすると、
あまり分をまず上にたぐります。
帯枕、もしくは帯揚げの位置が白い線です。
あまり分を中にたたみ込んで、出来上がりです。
ではここで…もし、あまり分をたたまず、おたいこの形を整えて、
背中側のたれをそのまま下にずーっと伸ばすとどうなるかというと、
この帯の場合はこんなに長い…たれがたれ流し…いやいや。
では、この帯の長さが、下の写真のように線から下がなかったら…。
実はこれでもう締め終わりなわけです。
つまり、さきほど「赤い字」で書いた「覚えておいてください」のところ。
あれで帯の中で「左右に飛び出す分」の結びができて、
おたいこもちょうどよくて、そのほかに余る分がなければ、
実はこれでこの帯の「角だし」結びは終わりなわけです。
帯枕も帯揚げさえもいりません。
何をいいたいかと申しますと、こうしてみると元々の「角だし」というのは、
今の角だしでも銀座結びでもないのです。
どちらも帯締めを使う締め方なわけですから「角だし風」というべき…。
なんてまた固いことを言うと、よけいややこしくなりますけど、
以前「ひっかけ」という結びをご紹介しました。
あれは、「て」と胴にまわしてきた部分を「引き抜き」で結んで…
というところまでは「角だし」と同じです。
ひっかけは、そのまま「て」を左にさげたままで、残りのたれ部分を、
長さ調節して帯枕で抑える…です。
「角だし」は、さらのその「て」を右にあげて、それに絡めて
「たれ」の結び目に近い部分を結ぶわけです。
昔、着物をアタリマエに毎日着ていた時代は、ささっとカンタンに結べるほうが
便利だったわけです。帯締めが出てきたのは江戸後期ですし…。
今、洋装になれた私たちが、家の中で着るものはあっさりと着られるものです。
たとえばスポッとかぶるTシャツとかシャツなら簡素な前ボタンとかですね。
昔の着物も同じで、ささっと締められる帯結びを使っていたと思います。
それには、まず帯の長さが問題になるわけで、それぞれの体型・体格にあわせて
自分で帯の長さを決めて仕立てれば、上の寸法ピッタリの角だしも、
何も使わずに締められたわけです。
今、私たちは着物がわからないがために、売られているものを
そのまま買って「名古屋帯ならこれくらい」「袋帯ならこれくらい」
という長さにしてもらっています。
それは、普通におたいこや二重太鼓をしめるのにちょうどいい長さ、です。
それを使って「角だし」をしめる工夫をした、というのが今の角だしです。
帯結びというのは、時代とともにいろいろ変化していくものです。
今の名古屋帯での角だしは、新しい角だしです。
正直私には「角だし」と「銀座結び」の違いは、ようわかりません。
角だし、と呼ぶ結び方なら「角だし」のポイントははずさないでほしい、
とまぁ、その程度に考えていますす。
本来の角だしは、上は平ら、そして中で結ぶ「て(羽)」は、
上が体に近くななめになる。
そして、帯の結び目があるために、下はどうしても丸くふくらむ、です。
つまりお太鼓とはフォルムが逆になります。
名古屋の角だしはどうしてもペッタンコになりがちです。
隠し枕を作るといいですね。
写真ベタベタついで、もう少しお付き合いください。
まずタオルハンカチ一枚、ふつうのハンカチ一枚。
こんな感じで小さく折って丸めて…
ハンカチに包んで…
できあがり。
これをおたいこ部分の下に入れます。
こんな感じ、見た目にはわかませんが、手て押してもペタンコになりません。
さて、ほんとに長い記事になりまして、おつきあいお疲れ様でした。
で、角だしと銀座の違いは…誰か教えてくだされ~~。
[帯結び]
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是非印刷して保存版にしたいですね。
「角出し」と「銀座結び」の違いを調べた時、手を最初に載せるのが角出し、後から入れるのが銀座と説明されているのをよく見かけたように思います。
でも・・・着付け師をされていたリサイクルショップのオーナーさんに教えていただいた「銀座結び」は手を先に載せるタイプのものでした^^;
引き抜きタイプの本来の角出しは別として、この二つ(角出しと銀座)には厳密な区別はないのかもしれませんね。
体格によってもだいぶ差があると思いますが、自分の場合引き抜きタイプの角出しを結ぶには370~380cmくらいの昼夜帯が一番使いやすい気がします。これだと確かに帯締めも枕(帯揚げ)もなしで結べて楽でした。
文中の370~380cは、「390~400cmくらい」の書き間違いです。
着付け教室いりませんね。
角だし、銀座結びは習うところによって
色々みたいですね。
私も絶対これ!とはわかりませ~ん。
私も角出しと銀座結びの違いがわかりませんでした。
うーん、とんぼさんのブログは
本当に勉強になります!!
私の通っていた着付け教室では
自社開発の改良帯枕を使っての
銀座結びを教わったのですが
かえってややこしく
本で帯枕がいらないと知った時には
おどろいたものです。
帯揚げだけでなく
細い紐を使うというのは
なるほどなと思いました。
帯を固定しようと
帯揚げをあまり引っ張ってしまうと
前がきれいにならないんですよね。
あと、隠し枕もナルホド!でした。
前に教えていただいた
旅先の帯枕のお話のように、
折りたたみ傘を忍ばせるのも
いいかもしれませんね(笑)。
友人が着付け教室にかよったのですが、
やはりどうもあいまいです。
はっきりこうだ、というものは
ないのかもしれませんね。
これから着物を起用という方たちは
お気の毒ですよ、ほんとに。
私も引抜だと、同じくらい寸法ほしいです。
長いのはなんとかなりますが、
短い帯はどーにも困ります。
陽花様
あれこれ資料がみんな違うと、
ほんとに迷います。
でも、なに結びでもいいから
かっこよく結べりゃいいんですけどね。
てまりばな様
結局「よくわからない」という結論?
新しく始まったことも多い、今の着物文化、
つたえていくのもたいへんですね。
要するに着たいようにきればいいんですが、
教室で習うと「それ以外はおかしい」とか
「間違ってる」といわれてしまうことが、
ちょっと心配なんですよね。
早い話が「見た目よ、見た目!」と、
知り合いの呉服屋さんはよくいいます。
最初に書かれている「本来の角だしは、当然大正ころまで締められていた「引き抜き用」の帯で締めるものです。」の件を拝読して、おお!と思うことが・・・
一体どうやって柄を出していたんだろう?と思っていた引き抜き柄の昼夜帯があるんですけど、もしかして、あれこそが「角出し専用柄付け帯」なのでしょうか~?
実験してみなければ・・・
遅れなど、どうぞお気になさらずに。
おっしゃるとおり「引き抜き」の帯はみんな、そのままお太鼓にして締めると
柄がひっくり返ります。
専用帯、というより、みんなそうやって
しめていたってことなんですね。
引き抜きでお太鼓に結ぶと柄出しが難しい物があるんですよ。
つまり、お太鼓用ではなくて、角出し専用かなぁ?と思った次第です。
あぁそういうことでしたか。
引き抜き柄はお太鼓で締めることは
少なかったと思います。
専用というより角だしという締め方が
今のおたいこのように締められていたわけで、
何々専用、というより「それしかなかった」
ですね。それをお太鼓が始まって、
それでもナントカ締められる場合は
お太鼓に締めていたんじゃないでしょうか。
柄が小さかったりすると、けっこう
なんとかなりますけどね。
「見た目よ、見た目!」
まったくその通り。ぜひ今度見ながらやってみようっと。