ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

フェイク

2009-10-25 14:32:59 | 着物・古布
写真は、先日届いたDM、リクエストアームズというお店のものです。
大野隆司さんのネコさんグッズなど取り扱っているお店でして、
今回もその商品のお知らせでした。住所と名前はちと加工しました。
ところで…もう一度、部分で写真を出します。
気がつかれましたか?切手もスタンプも「フェイク」です。
はい、これは「メール便」で届いたものなんですよ。
なんか楽しいでしょう?


      


「フェイク」は「模造」とか「偽モノ」というイミがありますが、
この場合は「まねっこ」といった楽しいイミで言ってるつもりです。
またまた「懐古」ですが、昔「ゆうびんやさんごっこセット」なんてのが
ありましたよね。今から思えば粗末なものだったのだろうと思うんですが、
小さなハガキとか、切手らしくミシン目のついたものだとか…。
もちろん今みたいに、裏紙はがして貼れる…なんてものはありませんでした。
そうそう、関連して思いだしたのは「電車ごっこ」とか「バスごっこ」のセット。
切符と小さな「パンチ」がついてませんでした?
ちょっと新しいけど、現物の写真をみつけました。こちらです。

子供のころって、こういう「らしい」ものが楽しかったですよね。
おままごともそうだし、毎度「先生」をダレがやるかでモメながら、
学校ごっこもやりました。私のお気に入りは、ゴザを敷いて、
座布団とか、空き瓶とか、いろんなものを載せての「難破船ごっこ」…。
庭でも空き地でも「じべた」が海で雑草が波で、
道の向こうの、よそさまんちのゴミ箱が「遠くの島」だったりする…。
「島だー、がんばれー」なんて、ロビンソンクルーソーになりきりでした。
結局ちっとも島にはつかないんですけどね。
ひとつでもホンモノか本物に近いものがあると、
それで「なりきり」ができました。
昔の子供の方が、想像力は養われたんじゃないかと思っています。

さて、いまやフェイクといえばフェイク・ファーとか、合成皮革とか?
私が成人式の少し前くらいから「白いショール」がはやって、
実際の毛皮は高いですから、みんな「フェイク」、毛皮にはとてもみえない、
いまならぬいぐるみの胴体みたいなモコモコの素材。
私は親戚からお祝いにもらいました。
元々振袖にショールなんぞする気はありませんでしたけど、
それをくれた親戚には見せに行け、といわれて、お正月のうちに振袖で、
それを見せに行きましたっけ(実は玄関前まで、手に持ってた…)。

私思うんですが、着物に使われるポリって素材は、確かに「化繊」という、
新しいちゃんとしたジャンルを確立はしているけれど、
結局は着物の中では「フェイク」といいますか「もどき」なんですよね。
「絹のような風合い」とか「麻に通じる通気性」とか(なぜか暑いけど)…。
もちろん「化繊ならでは」の便利なところもあるので利用価値は大ですが、
結局着物は自然素材が一番…、これって洋服とちょっと違うとこだと思います。
洋服って、すばらしいドレスでも発色とかドレープ性とか、
素材のおもしろさなんかが優先で、全部化繊だったりしても気にしませんものね。
それがまた洋装の楽しさでもあると思います。

着物の素材でも、実はフェイクは昔からありました。
しかも自然素材で…たとえば「ガス大島」なんてのは、
写真で色柄だけ見ていたら、まるで大島に見えるんだけど…木綿です。
ガス、というのは、木綿糸の毛羽立ちをガスで焼いてしまって、
つるつるの絹糸みたいにしたものを使うからです。
つまりガス大島というのは「絹」のような感じの木綿…です。
絹糸にもガスはあるとききますが、古着屋さんなどで出てくるガスは
ほとんど木綿だと思います。第一絹なら焼く必要もありませんものねぇ。

ついでのことに、この場合の「大島」というのもいわばフェイクなのですが、
「大島」という名前は、とかく誤解を呼びやすいものです。
今私たちが「大島ほしいねぇ」なんていうのは「本場大島」と呼ばれるもの。
江戸小紋や紅型なんかもそうですが、見てすぐ「あっこれそうだ」とわかる
特徴のあるものは、マネをしやすいわけです。
ただ、この「まねっこ」は、偽物を作るということではなく、
その染や織や、柄の工夫特徴などを見習って、更にその地域での特徴を
重ねて新しいものを作る…ということなんですね。
たとえば有名な「加賀友禅」は「京友禅」から技術を学び取り、
地元特有の色使いや特徴を作り出したもので、
いまや「別物」としての立場を確立しています。
フェイクから始まって、本物まで育て上げたわけですね。
秋田八丈もそうだし、村山大島もそれです。

「大島」というと、つい奄美大島→ホンモノ→高価…という連想で、
村山大島は、なんとなくいつまでたっても「本場大島のまねっこ」
「本場大島の亜流」、ひどいときには「本場大島のにせもの」なんて…。
でも違うんですよ、村山というのは、武蔵村山市の「村山」なんですが、
本場大島が有名になったとき、その特徴的な色柄をまねて、
紬を作ったわけです。加賀友禅の最初、秋田八丈の最初などと
同じだったと思います。元々村山とその近辺ですね、
そのあたりには最初から「地元の織物」はあったわけです。
なにしろちょっと100年前までは、いまよりずっとあちこちで
多くの「その地元の織物」があったわけで、銘仙なんかも、
一箇所ではありません。地図でこのあたり…とぐるりと○で囲む地域で、
作られていたわけです。村山もそれで、近辺に「何々織」「何々絣」と
名前のつく織物があったわけで、その中で「本場大島」の色柄を参考に、
新しく織り出されたのが「村山大島」です。

以前、大島紬の証紙のお話をしましたときに、
「本場大島紬には定義があって、その定義をクリアしているものに
それぞれの証紙がつく」という説明を致しました。
その定義の中に「締め機(しめばた)」という絣の作り方があるわけです。
村山大島は「大島風」ですが「本場大島の偽物」を作ったわけではありませんから
そのまま板締めで絣を作っていますし、それを特徴としています。
最初から「その土地独自の織物」というスタンスはかえていないのですね。
ところが、私たちは「大島」という名前に強烈なインパクトがあるものですから、
「大島」とついているだけで「ホンモノ?違うよにせものだよ」と、
ついそんなことを言ってしまう…。
だとしたら加賀友禅は京友禅のにせものだし、秋田八丈は黄八丈のにせもの…
ってことになっちゃいますね。村山大島さんがかわいそうです。

村山大島は、いっとき人気がありました。私が20代のころかなぁ。
大島の色柄や絣の雰囲気を楽しめて、しかも安価だったからです。
今はあまりみませんねぇ。実は「やっぱりフェイクじゃん」と、
嫌われたわけではなくて…安価な大島風紬を外国での生産にしたからです。
だから「韓国大島」とかがでてきたわけですね。
同じ韓国大島でも「本場大島の定義」を守っていれば、
「ホンモノ大島」になります。ただし「作られた場所」が韓国なので
奄美とか鹿児島の「証紙」はつきません。
私は、大島紬というのは「証紙」という意味では、その使用が
比較的きちんとしていると思いますし、わかりやすいです。
今の時代、消費者側は着物についての知識がなくなっているし、
作る側は、元々「○○織」ってなんだ?何々染めってなんだ?というところの
大切な矜持を、なくしてしまっていると思います。
ひたすら安くできればいい、コスト削減…。

あぁまたこの前のお話に戻っちゃいましたが、
安くすることに汲々としていないで、村山大島のよさを
いえ村山だけでなく、いろんなところの、例えば小さい産地でも、
その情報を「正確に」広めれば、買うほうも「偽物」ではなく、
いいものから学んだ独自のもの、として認識できたのではないかと思います。
ついでのことにいわせていただくなら「型染め」と「インクジェット」の違いなども。

いつもいいますが、高いものがいいもの、とは限りませんし、
私たちは洋服ならその用途によって「買い分け」をしています。
すぐに成長して着られなくなる子供のTシャツに、高いものは買わないし、
お父さんの背広も、通勤用は安く押さえます。
着物も同じで、本場大島はほしいけど、高くて手が出ないから、
安価な村山で「大島の雰囲気を楽しむ」わけです。
染物は手描きがいちばんだけれど、高価だから普段モノはインクジェットでもいい、
それは私はかまわないと思います。モンダイなのは、
売り手がそこをきちんと説明しないこと、買い手が知ろうとしないことです。
ただ、お安くなってます、従来の染より割安です、と価格のことばかり言う…。
買うほうは名前に惑わされる…。
どこがどう違うから安いのか、その説明は、およそされたことがないばかりか、
そのへんの呉服屋さんの若い店員に、これはインクジェット?って聞いても、
どれだけ正確な答えがもらえるか…。
インクジェットに「京友禅」の証紙がつくにいたっては、何をかいわんやです。
私は英語のことはよくわかりませんが、私の感覚的に言って、
まねっこ…の感覚の「フェイク」より、完全に偽者の「imitation」の感じです。
ハマっ子風にいわせていただければ
「おんなじに色がついてりゃいいってもんじゃねぇべ」です。

買う側も賢くならなきゃ、というのは、昔に比べて
「ピンキリ」でものがないこと、知識が伝達されていないこと、
人心にどこか「矜持」というものが薄れていること…があると思うからです。
自分の目的にあったものを、正確にチョイスできること、が、
実は着物ライフを楽しむコツでもあるのです。
洋服じゃできてるんですから、着物もそうしたいものです。

さて、トップのリクエストアームズさんつながりのネコさんグッズショップ、
ねこまや」さんです。あ…ほしぃっ!



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6 コメント

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とてもよくわかりました。 (akkomam)
2009-10-25 17:30:59
 たしかに、>買うほうが名前に惑わされる<
 仰るとおりです。 どこで織られてもきちんと表示されて
 いれば、正しいものなのに...。

 そういう選び方を着物にしても、洋服にしてもしてきた
 ように思います。 着物を売る側にも言えることで、
 <本物>とゆう言い方に違和感を感じたことが多々あります。

 TPOにあわせて着ることを第一に、もっと気軽に
 着物を楽しめる時代はくるのでしょうか。

 この冬はチョッと試してみようかしら?
 
返信する
Unknown (陽花)
2009-10-25 21:11:16
本物は手が出ないけど、よく似たこれなら
自己満足で・・・という買い方しています。
本物じゃなきゃって方もおられるかもしれませんが、マネっ子位の方が気安く着られる
のが好きです。
本物が買えるのが一番いいのですけどね・・・
返信する
本物…。 (えみこ)
2009-10-26 10:01:52
以前にも書きこませていただいた延長で
うーん、紬でもブランド化してしまえば
当然お値段もはるわけで、ときには
格上の品よりお高い場合もある。
どんなに高くても、着ていけない場がある。
触れてしまえばそりゃいいものですから
ほしい~となります。
でも、紬…。
で、なにかのご縁で手に入れられたとして
今度は着続けるための努力がいる。
ブランドって、そんな魔力がありますよね。
着物という衣服にどの地点から見るかで
ずいぶん変わってくると思います。
昔母が黄八丈をもっていて、偽物よと言ってた
のを思い出しました。
それでも子供心にすごく気にいっていました。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-10-26 18:26:25
akkomam様
だんだん豊かになってきて、
「それ」を持っている、よりも
「それのいいのを」持っている…と、
価値観が変わったこともあるんでしょうね。
一時期、友人がブランドバッグにはまり、
私もひとつ買わされましたが、
およそ使いづらくて、人にあげてしまいました。
自分にとって「何が」「どこが」いいのか、
必要な条件なのか、ちゃんと見極めたいものです。
また「ホンモノ」っていう言い方、
なんかヘンですよね。
じゃ偽者ってどういう意味?って思います。
難しいですねぇ。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-10-26 18:28:08
陽花様
着物好きだと、そりゃ本物に憧れますが、
いずれ一枚着られたら…くらいで、
そんなに目の色かえなくても、
十分楽しめる着物は、たくさんあるんですよね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-10-26 18:30:48
えみこ様
母は京都生まれですが、
いつも「ええもんは一枚はあった方がええけど
京女は元々『着物は色柄で選ぶ』もんや」と
言ってました。
好きな色、好きな柄、それをどうよく見せるか
それが着物を着る楽しさだって。
安いのは気楽でいいですよーほんと。
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