ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

古本・ぱーと2

2006-05-11 22:51:46 | 着物・古布

これは昭和49年の本です。けっこう状態よく、きれい・・実は母の本です。
これは「上田美枝」さんというかたの本です。このかたは略歴によれば、
昭和18年にご主人と死別、残された和装小物店をつがれたそうですが、
もともとがアイデアマンだったようで、工夫仕立ての着物を、
いろいろ発表なさっておられます。和裁や着付けの世界で地位を確立なさった方は
「日本和装なんとか協会」とか「和裁研究なんとか会」というような、
和裁・和装に関するところの会長などを歴任する場合が多いのですが、
このかたはなんと「全国発明婦人協会」の副会長・・・。

この工夫仕立てというのは、和裁をもっとラクに、とか、着るのをもっとラクに、
あるいは布を大切に使う、といったことがコンセプトになっています。
この本でイチオシの着物が「衿おくみつづきのきもの」というもの。
読んだまんま、衿とおくみが続いて作られています。
たまたま昨日コメントで「妊婦の着物の記事は?」というコメントをいただき
「残念ながらない」とお答えしたのですが、ふと「どこかで見た記憶がある」と
ず~~っと考えまして・・。実はこの本の着物、私にはどうもしっくりこなくて
奥のほうに入れっぱなし、ほかの本は時々出してみていたのに、これはもう
何年も見ていませんでした。もしかして・・と思ってさがしてみたらありました。
下の図が、本を書き写したものです。「衿おくみつづき」の妊婦さん用着物。
それに右のコートを合わせれば、帯をしめなくても外に出られると言うわけです。
コートのほう、書き方省略しましたが、ちゃんと折り返しや見返しがついた
単仕立てです。右前には紐がついていますが、左の前はおなかの大きさに合わせて
ブローチなどでとめるようになっています。



昨日「妊婦用はわき縫いを広げる」といいましたが、そのやり方は
この着物と同じだと思います。下まで広げるのではなく、途中を広げるのですね。

この「衿おくみつづき」と言う着物は、この本の中でもイチオシのアイデアらしく
このほかにも「衿おくみつづき」の普通の長着がいろいろ載っています。
作り方は見たまんまです。本のコメントによれば、一度着たらラクで、
また着たくなる・・とあります。この「衿おくみつづき」の着物の特徴は、
上の「妊婦さん用」にもありますが、「腰ひも」と「胸ひも」が
2本ずつついていること。これをまず腰ひものほうを昔の子供の着物のように、
脇から通して「おはしょり」を作った状態で締めて結び、
次に胸ひもを同じように廻して締める・・という方法。
ポイントとして、おはしょり内部がもたつかないよう、身幅は体ピッタリに、
腰紐を締める位置をきっちり決めて締める・・だそうです。
確かに縫うのはラクそうなんですが、着るのはどうでしょう・・。
対丈よりはいいと思うのですが、実はこのタイプの襦袢を持っていますけれど、
ちょっと普通の着物より体を締められる気がしたんですが・・。

そのほかにも、面白いものがありました。



上の写真の着物、どこか普通の着物と違いますね。
そでの下のところに何か、別の部分が見えてます。
そでがクシャっとなっているようにも見えるのですが、
実はこれは下の図のようになっています。



これは本の絵をそのまま写したのですが、題して「前帯スタイル」。
絵を見てもわかりにくいのですが、
つまり、後ろ身頃を羽織丈のところで切ってしまうのです。
そして後ろ身頃は少し長めに別裁ちにして、ちょうど衿肩当布のように、
肩から少し前くらいにかかるところから、ウラでとめつけるのですね。
そうすると本来の後ろ身ごろが、短くなっていて、背中でヒラヒラするわけです。
広がらないように、スナップでとめると、まるで茶羽織を着ているように見える、
とあります。これだと前帯だけで、夏も涼しい・・と。ん~~~??

ほかにも今もある上下二部式の着物とか、一反をまったく切らずに折りたたんで
「お宮参り」の着物を作るとか・・・。
そのアイデアそのものは、やはり「和裁・和服」を知っていないと
考えつかない工夫だと思います。
この「衿おくみつづき」の着物は、昭和39年に「発明工夫展」で、
賞を受賞しているのですが、その後もこの着物、みたことありません。
定着しなかったのでしょうね。でも、今なら、逆に子供の着物のように、
ひもを通して着る・・なんて、便利がられるかもしれませんね。
着物というものは、歴史が長く保守的である分、何か変えるというのは、
ほんとうにタイヘンなことだとは思いますが、時代にもよりけり。
ひもつき着物、私は帯をしめない二部式よりは着物らしいとおもいます。
それにしても、やっぱり着物は奥が深い・・・。


コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 今日は古本です。 | トップ | 何の柄? »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (とんぼ)
2006-05-12 19:51:59
うまこ様

洋服生地でたつときもラクですが、普通の反物でたつときもシンプルです。衿とお組が一度につけられるわけですから、コツさえつかめば、縫うのもラクでしょうね。



蜆子様

半衿をつけるときに、逆に襟芯になるようなものをいれれば、外に出る部分はしゃきっとできるんじゃないかとしろうと判断ですが・・。それと、この妊婦着物は、この「工夫着物」の本の中にあったということで、べつに妊婦着物はこのように作るといいよということではないと思います。この本は全て「衿おくみ続きのきもの」が出ています。普通のしたての場合は、本文中に書きましたように「脇を広げる」、ということでいいんじゃないでしょうか。
返信する
衿おくみ続き (蜆子)
2006-05-12 13:10:51
うまこさんが骨董市で求められたというレースの長襦袢、骨董ではなく、嫁入りの時に夏の襦袢の一枚として持ってきました。

レースの着物がはやったんです。明石全盛でしたが、レースの着物って新鮮でした。洋服の大幅でつくる着物、たしか、とんぼさんが書いてらっしゃるような、こしのところでぐるっとまきつけた感じで仕立ててあったと思います。



くだんのレースの長襦袢、現在にいたるも持っていますが、着にくいのです。

まず、衿おくみが続きなので、生地が一般的に衿って、台襟の生地、厚手のバーンとした綿(昔、体操の白ズボンを作ったギャバです。)なのですが、やわらかな綿レース、しゃきっとしないんですね。

綿てまきつく感じですし、麻、絽の長襦袢は着ましたが、レースそのまんま

妊婦さんに都合がよかったのかしら?疑問?
返信する
衿おくみ続き (うまこ)
2006-05-12 10:40:15
骨董市でレース地の長襦袢を買ったら、

衿おくみ続きでした。

衿のの布が長~くて、利用価値が高そうです♪

おまけにおくみは見頃と続きの生地だったので

生地もゆったりあって嬉しかったです。

幅広洋服地で作る時はこの方がなにかと便利だったのかもしれませんね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2006-05-12 09:05:24
ぶりねぇ様

襦袢には、昔からありますね。

関東仕立てと呼ばれますが、男物に多いようです。

襦袢なので、その衿を太くして着物に応用した・・

というところでしょうか。要は「発想の転換」

ですよね。折り紙式のお宮参り着物、

外から見るとまったく普通です。

作り方の図をみると、まるで「パズル」・・。



陽花 様

たぶん、ですが女物は「好み」で作るようです。

でもほとんどみませんね。私は両方ありますが、

呉服屋さん(仕立てやさん)にもよるみたいですね。

何もいわないのに「関東仕立て」で作られて、

「えっ」と思ったことがあります。

賛否両論ですが、私は「対丈」の着物の感じで

着づらくてすきじゃないですね。太ったせいかな。

男の人はすそ捌きがいい、というし、

女の人は引っ張られる感じでえりがきつい、と言う、

とは、知り合いの呉服屋さんから聞いた話ですが、

着物なら、おはしょり分があるから、

ひっぱれるというのはないと思います。

縫うほうについては、経験ないのでわかりませんが、

素人目には、かんたんそうですよね。

返信する
関東風・・・? (陽花)
2006-05-12 08:23:58
とんぼ様



衿おくみ続きの着物の図を見て

どこかで見たような気がして

調べたら、着付けのとき習いました。

関東風の仕立て方で男物の長襦袢に

適してるとありました。

あいにく、関東風の長襦袢持ってない

のですが女物の長襦袢もこういう仕立て方

が主流なのかしら・・・
返信する
へーえ、頭いーい人♪ (ぶり)
2006-05-12 06:01:11
早速、調べて下さいまして、どうも有り難うございました。



おくみ付き着物って、襦袢の仕立て方と同じですよね。 2部式着物、スチュワーデスが狭い機内で着替えるのに採用されたとか。

こういった工夫、妊婦用には脇を出すとか、大きくなるまで使い回しできるお宮参り用の赤ちゃん着物とか、普段はあまり縁のない内容を、本や雑誌、呉服屋のHPとかで、特集すれば、いいのに。 あっ、売れないか。。。
返信する

コメントを投稿

着物・古布」カテゴリの最新記事