ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

綿入れの季節が来ました。

2014-12-01 19:34:55 | 着物・古布

 

目慣れたものですみません。何度も出しております。

これは半天ではなく「綿入丈長ひっぱり」です。

このところ、昼間は晴れるとエプロンだけで玄関先に出ても、寒いとは感じませんが、

朝と夕方日が落ちてからは「寒いわ」と感じるようになりました。

早朝のゴミ捨ての時は、風が冷たく感じられます。

そろそろ…と思って出してきました。これは古着で買ったもの。着倒してます。

このハデなツギハギで外に出るものですから、出勤の人たちや、朝練らしい中学生など、

驚いたように見ています。

着用の後姿、だいぶ前にアップした写真です。

 

          

 

確かにこの後ろ姿のオバサンが、ゴミ袋さげてヒョコタラ歩いていたら…めだつわ…。

 

ほとんどが「お召し」、少し「ちりめん」です。ちりめんはしぼ大きめです。

この水玉の着物、きてみたかったですー。

 

         

 

表もツギハギですが、裏はもっとすごいです。黄色の線が、ぱっとわかる継ぎ。

柄がうまくあっているところもあれば、全く違う生地のところもあり、実に細かい手仕事です。

 

         

 

この半天は、家で洗えないので、しかたなくクリーニング依頼しています。

昔はこんなものでも、ちゃんと解いて(全部ではなく、袖、身頃と…)自分のところで洗って、

伸子張りして、また綿を入れ直して…と、手間をかけていたのでしょうね。

 

着物に係わると、とにかく「手間を惜しまないこと」ということが、たくさん出てきます。

半衿を付けたりとったり、それは面倒なことですが、着物を着るには当たり前のこと。

それを回避するための方法として「半衿だけ別につけられるようにしたもの」が考えられたり、

半衿つけるのに、糸と針ではなく、別の方法でつけることが考えられたり、

究極、半衿もいりません、難しい着付けもいりません…なんていうドレスみたいなものが考え出されたり…。

それは着物ではないと思っているので、私の中では進歩でも改革でもないと思っていますが。

いろいろな新しいもの、それはそれで「便利」ではありますし、私も新しいものは使いますけれど、

着物に限らず、今の暮らしって、手間を無くすことばかり考えています。

「手間」とは「それを済ませるのにかかる時間や労力」なんてことが辞典には書いてあります。

確かにそうなのですが、母は「手間ゆうのはな、手ぇの間と書くやろ。

手ぇの間に持ってシゴトしたら、見えるもんがある、いうことなんやで」と言いました。

手の間に持って、しっかり目で見て…それは相手を知ることでもあります。

運針もやらなきゃ慣れません。最初はザクザクでも、少しずつ細かく、まっすぐに、早く、

縫えるようになっていきます。

面倒、と思うことの多い昨今は、それだけ「早い、簡単、スイッチ押すだけ」が多くなっているということです。

 

「あんた蛍光灯やなぁ」というジョークはいまや通じません。

蛍光灯だねぇというのは、頭の回転が遅い、ということです。

昔の蛍光灯は、紐を引いてしばらく待っていないと点灯しなかったからです。

チカチカっとして、それから「せーのっパッ」という感じでした。

その後グロウランプが出てきて、すぐにつくようになりましたが、このグロウランプも、

長く使うと切れて、それを交換したものです。

今やそんな必要もなく、スイッチポンで、ぱっとつきます。しかもLEDなら、蛍光管の取り換えもナシ。

便利にはなりましたが、蛍光灯をじっくり見ることも、グロウライトをストックすることもなくなりました。

手間をかけることがなくなると、それに対しての思い入れも薄まります。

年末にお父さんが脚立や踏み台に載って、蛍光灯を新しいものに替えたり、

その蛍光灯の笠をおかあさんや子供が掃除したり、そんな思い出もなくなります。

 

「手」と「手」の間が広ければ、そこにいろんなものが見えるはず。

手間がなくなるということは、手の間がなくなるということで、じっくり見たり考えたり感じたりが

無くなってしまうということです。

指先を針でチクッとやって「いたっ」なんて言いながらでも、自分でつけてみてほしいです。

絹の手触り、ポリの手触り、針が通りやすい通りにくい、着つけて見たらゆがんでる、あらら。

どうするときれいに見えるようにつけられるか、どうやったらまっすぐ縫えるか、

どうすれば早くつけられるか…手と手の間に、その答えも知恵も謎も、

みんな挟まっているのと思うのです。

 

私だって、結局手間を省けるものもたくさん使っています。

はやくできたり、きれいにできたり、安全だったり、便利だったり…。

だからこそ、どれをどう使うか、は考えます。

手間をかけるということから、遠ざかってもいいもの、遠ざからないほうがいいもの、

それをチョイスする目を、養ってほしいものと思うのです。

最低でも、半衿つけのために針と糸を持つ覚悟、は、着物を楽しく着ていくためにも、

だいじなことだと、私は思っています。

この「綿入ひっぱり」、紐の縫い目がちとほつれてきました。今夜のうちに直しましょう。


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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2014-12-01 20:15:04
綿入れは暖かいですよね。
私は家で洗えるでんちを毎年着ています。
もうよれよれなんですけど今年もやっぱり
着ています。
お気に入りはず~っと着ていたいですね。
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Unknown (としこ)
2014-12-01 20:57:51
綿入れ大好きです!お裁縫も大好き!
母が健在の時は身内の綿入れを縫うのは母の仕事でしたが、年老いて針を持たなくなり3年前に亡くなる前からは私の仕事になりました。
もう数えきれないほど縫いましたが、縫う度に楽しくてわくわくします。
古い着物をいいとこ取りした継ぎ接ぎの綿入れ、すごくいいですね!
布が捨てられない性分なので、すぐにでも真似したくなりました。
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Unknown (横浜南)
2014-12-01 23:04:21
今日のお話、本当に、本当に素敵でした。ありがとうございます。 半衿付ける度に「手の間・・・」と思い出しますね。 私、半衿付けは、好きなのですが、必ず指先にチクっと針を刺してしまいます。 やれやれ・・・です。 
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Unknown (とんぼ)
2014-12-02 20:35:31
陽花様

ダウンなどとはまた違う暖かさですね。
おでんちも重宝です。袖がない分動きやすくて。
母が来ていたのが、丈が長かったと思うのですが、
あれを探そうと思いつつ…4年ですわぁ。
大事に着たいですね。
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Unknown (とんぼ)
2014-12-02 20:42:06
としこ様

既製品の、化繊綿のものを、
むかーし着たのですが、バルーンみたいで…。
使い込んで、少しヘタってる方がぅあるので、
パズルしたいと思っています。
昔の人ってマメだなぁと思っています。
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Unknown (とんぼ)
2014-12-02 20:43:41
横浜南様

こちらこそ、ありがとうございます。
気が付けばいつも「そういえばおかぁちゃんは…」と
そんな日々です。
私もチクッどころかぶすっとやってますよぉ。
それでも針や糸を触ることって、
なんかいいんですよね。楽しみましょうね。
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綿入れ (kitty)
2014-12-03 07:56:19
とんぼ様の綿入れ着用の後姿 絵になってます!
何か懐かしく ほのぼのとして・・・
わたくしは 年をとってからは 重たいものが着られなくなってしまい 困っていたら
姑が 倉庫の2階の 古いおばあちゃまの箪笥の中から
真綿の入った銘仙のねんねこ(主人が赤ちゃんのころ よそいきに使っていたらしい)(昭和24~25年ころ)を 出してきてくれました!
風呂上がりに着てみると さすが真綿 軽くて暖かくて 気持ちの良いこと!
味をしめて 真綿を買って さらに2枚ほど 着尺や羽尺の反物に長襦袢地の裏を付けて 仕立ててもらいました!
それにしても ねんねこのサイズが 今のわたくしめに ピッタリ!とは・・・・なんとも お恥ずかしい 話です!
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Unknown (とんぼ)
2014-12-03 11:05:58
としこ様

まぁ今見ましたら、コメントがへんなところで
切れてましてすみません。
「少しヘタってる方が着易いですね。
私も古いハギレがたくさんあるので、
パズルしたいと思っています」です。
なんだか、おすところまちがえたみたいですみません。
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Unknown (とんぼ)
2014-12-03 11:09:08
kitty様

絵になってますかー、うれしいです。
裏庭で「ふきのとう」を数えているところです。

真綿って、ほんとに軽いんですよね。
私も、重たいものはちょっと…になってきて、
母もおなじようなことを言っていたと、
思い出しています。
着物って、体に優しいんですね。
「ねんねこサイズ半天」、あははと笑いましたが、
いや待てよ…です。私もかも…ですって。
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Unknown (Unknown)
2014-12-03 17:50:01
ととさま

着物を着初めて6年程になります。
いつも出勤時の車中で読ませてもらっています。
今日のお話も、ほっこりと心が和みました。
以前は面倒だった半襟付け替えも、幸せの時間と思うようになりました。

お母様の言葉も「なるほど…」ですね。
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