ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

消えた記事の書き直し…

2010-01-30 17:21:38 | 着物・古布
昨日は、お騒がせいたしまして、すみませんでした。
またしても無関係画像です。
あの「桜」、長くてカットした分、つぼみがあってもったいなかったので、
さしておいたら、ちゃんと咲いてくれました。


さて、先日の書きかけ記事、髪型のお話しもおもしろいので、
ちょっと書いてみようと思います。
先日の「中剃」のことなんですが、もう少し詳しく…。

元々江戸時代に、思いっきりいろいろ考え出された「髪型」ですが、
女性が垂髪だったものをまた結うようになったときから、
基本的なところはほとんど変わっていません。
つまり「前髪を膨らませ・鬢(顔の横の髪)を膨らませ、髱(後ろの下)を膨らませ」
そしてみんなまとめて縛って、まずは「ポニーテール」にする…。
そして「ポニーテール」から先を、また膨らませたり、曲げたり、のたくらせてみたりと、
いろいろ工夫することで、いろんな髪型ができたわけです。
この「ポニーテール」の縛った部分を「髻(もとどり)」とか「根」といいますが、
女性の場合は「根」と呼ぶことのほうが多いようです。
この「根」の部分をきっちり結ぶための和紙の紐が「元結」、
本来は「もとゆい」ですが「もっとい」の方が耳になじんでいますね。
絵にするとこんな感じです。


     


さて、このポニーテールから先をあれこれいじって髷を作るわけですが、
この「根」がしっかり決まらないと、髷がぐらついたり崩れたりしてしまうわけです。
中剃をするようになったのは、江戸もあとのほうになってから…のことだそうですが、
この理由のひとつが、髪の結い方やきれいに結い上げるためにでてきた便利グッズ、
だと、先日の本には書いてありました。

便利グッズはたとえば、本の表紙の女性の髪、もう一度部分で出しますが、
この髪型はたぶん「投げ島田」、江戸も初期のころの髪型です。
「根」を後ろの下のほうにするので、こういう場合は「根下がりに結う」といいます。
うしろに髷が下がっているので、顔が仰向けたようにみえるところから「投げ首」…で、
投げ島田、とついたそうです。


       


後ろ部分の「髱(たぼ)」、江戸では「つと」といいました。
そしてこの後ろにびょょーんと伸びて上向いた「つと」は、
セキレイのお尻のようだというので「せきれいづと」と呼ばれています。
もう少しまっすぐな感じで後ろに突き出すのは「かもめづと」、
いずれにしてもこの形、いくら油で固めても、そうは形づくれません。
そこで、この「つと」の中には、鯨の髭で作った「芯」がはいっているわけです。
うしろに30センチほども延びていた時期もあると言いますから、
振り返ったら隣の人に「つと」が当たるってば…メーワクな頭ですな。

こういう「アイデアグッズ」…と言いますか「必要は発明の母」ですね、
そういうものを使って、新しい髪型ができたり、それにあわせて簪が考えられたり…、
美しく結い上げることに「惜しみない努力」をしたわけで…。
それできれいに結うために今で言うと、多い部分の髪を「梳いて減らす」とか、
「部分的に長短をつける」とか、たっぷり結うために「かもじ」をつけるとか。
(なーんか、今とかわりまへんなぁ)
そうなってくると、「根」の部分にかもじをうまくあわせて元結で縛るわけですが、
単純なお話し、元のポニーテールに別のかもじをつけるなら、
地毛の下にかもじをくっつけてしばるより、真ん中に挟みこんだほうがいいわけです。
つまり真ん中に「穴」をあけて、その穴にかもじの元部分を差し込んで、
元結で縛るわけですね。本末転倒って気もしますが、かもじは長さもカバーしましたから。
このかもじを入れるために剃った部分が中剃、というわけです。

また、かもじを入れなくても結えるような髪が多い場合、たっぷり長い場合でも、
とにかく「根」が動かないように、いわば「土台」となるものを一緒に縛りこむ、
そういうものができました。これを「小枕」といいます。
これ、写真でみたことがあるんですが、なんというか…鍋のフタのつまみみたいな形です。
私の見たのは黒い漆塗りみたいなものでした。
和紙を固めたものとか、木製のものとか、いろいろあったようですが、
どっちにしても、これをポニーテールの中心にいれるわけですから、
やっぱり「中剃」は必要だったわけです。
日本髪を結っていると、テッペンがはげる、といいますが、
おそらくは長年これをしていたら、当然毛根もやられるでしょうから、
実際にハゲたでしょうね。あんまり粋なお話しではありませんなぁ。
とにかく、そんなわけで中剃というのも「美しくなるための技法」であったわけです。
美しくあるためには…いゃー美容院で、頭いっぱいに大きなロールをつけていたり、
お釜に入ってじっと辛抱したり…いつの時代もかわらんわけですねぇ。


さて、いろいろ髪型について書いてきましたが…、
これで終わらそうかと思ってもやめない「おしゃべりとんぼ」
さぁここからまた長くなります。
お疲れのかた…お休み下さい、お茶でも飲んで…。

元々垂髪であったものが、安土桃山あたりからまた結い始めたわけですが、
どんな髪型であれ、ほとんど変わらないことがひとつあります。
「顔の輪郭を全部出す」ことです。前髪や横の髪を下げたのはほぼ子供のときだけ。
これは「着ているものとのバランス」なんですね。

なんでもそうですが、服飾文化というのは、たとえば髪型でも、
それだけが独立して勝手に変化していったわけではありません。
その時代時代での社会情勢、生活習慣など、さまざまなものがからみあって
お互いに作用しあって変化してきたわけですね。

髪を結わなかった時代は、身幅の広い対丈の着物に細帯、袖も振りはありません。
それが身幅が細くなり、帯幅が広がり、その帯をしめるために袖付けの下に
「身八ツ口」がうまれ、そのために袖が下へのばせるようになり…。
そういう着物と髪型はお互いに作用しながらかわったわけです。
つまり、首から下と髪型は、互いにバランスを保つために変化したんですね。
今の着物では顔の輪郭を隠さない、というより着物には「顔を出すのが合う」のです。

それは単純に着物だから日本髪でなきゃ、というへりくつではなくて、
着物は首から下の分量が多くて全身を包みますから、首から上と手の先しか見えません。
わざわざ小顔に見せなくても、全体から眼に入る「顔」の分量としての印象は少ないのです。
着物の変化と共にに日本髪の大きさは、あの首から下の衣装とのバランスで変化してきたのです。
あっさりした髪型とあっさりした小ぶりの着物、
高く結い上げられた髪と、袖や長さもたっぷりで帯結びも大きくなった着物。
たとえぱ、おいらんのあの髪型で、下が普通の着物だったら首から下が貧相です。
逆にあのおいらんの衣装にベリーショートだったら、首から上が貧相です。
花嫁姿もそうですね。ちょっと昔の本から写真を借りてやってみましょう。
どちらがバランスよく見えますか?





着物を何枚も重ねて、半襟もたっぷり見せて、
さらに打掛をかけて、全部お引きずりで…そのボリュームにあわせるには、
「根」も高く大きく結う「文金高島田」が合うわけです。
バランスってそういうことなんです。

それからいっても「振袖」の髪は、その華やかさに負けないボリュームが必要です。
でもそれは、最近のてんこ盛りカーリーとかゲゲゲの鬼太郎風前隠しではないと思います。
アップにすると顔がむき出しになって、顔が大きく見える…、
最近は「小顔」がはやりだそうで、今の女性は顔の輪郭を出したがりません。
でも、前述のように、着物は首から下の分量が多くて、
出るのは顔と手首から先だけなんです。おでこを見せたくない人は多いようですから、
まぁ軽く前髪を下ろすくらいはいいでしょうけれど、
輪郭を隠すあの「のれんかき分け・ゲゲゲの鬼太郎ヘア」は、
顔が、というより首から上が、着物の大きさ華やかさにに負けて
印象がボケるだけ、なんですよ。もったいないと思いますねぇ。

日本人には「直毛」が多く、色は黒系、髪の色はメラニン色素の量によるわけですが、
元々日本は同じアジア系との混血はあっても、ヨーロッパ系の混血は
極東の島国だったこと、鎖国があったことでほとんどありませんでした。
さらには「優性遺伝」で、日本人の髪はほとんどが黒系で、
欧米人と比べて、太さがあり、本数は少ない…というのが平均的なデータです。
元々欧米には直毛より波状毛(波打つ毛)が多く、髪の色もさまざまです。
彼らは、そのなかで個々に自分の毛質と色に合う髪型を考え、
似合うリボンの色を選んだり、ウェーブのある髪のまとめ方を考えたり
ドレスの色を決めたりしてきたわけです。

着物は、どんな着物でもまずは黒髪であるだけで似合うわけです。
黒髪・直毛であることを基本に育まれてきたものだからです。
今日本人が髪を染めるようになったのは、私のような白髪染めは別として、
暮らしが洋風になり「洋装」が日常的になったからです。
洋服には、変化の無い黒いまっすぐな髪は合わせるのが難しいから、
染めたりパーマかけたりするようになったわけです。
ひっくり返して考えて、洋服で日本髪はなぜ結わないのか。洋服に合わないからです。
それを逆に考えれば「着物に合う髪型」というもののポイントは見えてきます。
洋髪は自由自在の髪型ではありますが「オールマイティ」ではないのです。

洋服なら、TPOで髪型からアクセ、靴やバッグにいたるまで、
トータルで考えるのに、着物は着ているもの一揃いだけが「和」で、
髪型やメイクは洋装、というのは、アンバランスだとおもうんですがねぇ…。

あっ長いついでに…かのマリー・アントワネットは、
奇抜で「大盛り上げヘア」を作り出した人として有名ですが(たとえばこんなの
同時にこれに合うバランスを保つため、ドレスのスカートは左右に巨大化していきました。
パニエなんてきっと今の何倍もつかったでしょうね。
当時の貴族の女性を描いた絵画を見ると、やけに左右に四角いドレスがありますが、
これも「全体のバランス」ってことなんですね。
「美の探究」には洋の東西は問わないってことですね。

いったい何のお話しをしていたんだか…。
えらく長いお話になってしまいました。
おしまいに、「顔が大きい場合は、隠したほうがいいかも」…の見本です。
かなりショックな写真ですので、ココロしてご覧下さい。
お茶飲んでらっしゃる方、ちゃんと飲み込んでから…ハイどーぞ。
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実は、これでも隠れなくて、はみ出た部分を修正で「消した」んです。
私、これから「ゲゲゲの鬼太郎ヘア」にしようかな…。

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8 コメント

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Unknown (とんぼ)
2010-02-04 21:23:13
人形屋様
思いのほか「絵」が少なかったのですが、
読んでみると、なかなか面白かったです。
やっぱり自毛で結ってみたいなぁ。
中剃はやだけどー。
返信する
ありがとうございます (人形屋)
2010-02-03 21:40:36
お久しぶりです。いつも楽しく拝見させていただいています。
興味深い本のご紹介ありがとうございました。ドールの結髪の参考になりそうなので、amazonに注文しちゃいました。楽しみです。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-01-31 18:03:14
こいけ様
たぶん、十二単はおっしゃるとおり、
長さでカバーしたんでしょうね。
ただ、十二単も、正式なときは「大垂髪」
お雛様のおすべらかしですね、
女官たちもみなあれを結いました。
かなり大きいですよ。
人間って、偉くなると大きく見せたいんですかね。
やたらと大きな冠とか、高い履物とか、
長い爪とか、付け髭とか…見た目で驚かす?
元々顔の大きい人は、えらいんだ…チガウって。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-01-31 17:58:39
くろお様
もう少し細かく言うと、かの時代「バサラ」
なんてのがいました。不安定な時代に、
自己主張してふるいものを否定したり…そういう風潮ですね。そのなかで、男が女物を着たり、
女が男髷を結ってみたり…そういうことが、
始まりだったんですね。

卒業式ですか、袴姿いいですね。
袴なら、そんなに大きく衿も抜きませんから
はいからさんみたいな束髪、かわいいですよ。
大きなリボンつけて…こりゃアタシのアコガレでした!
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-01-31 17:47:29
陽花様
日本はまだましで、フランス貴族は入浴の習慣が
なかったのですよ。マリー・。アントワネットが
お風呂に入ることを持つ懇談です。
香水は汗臭さなんかを消すためにうまれたって
いいますからね。
日本も洗えない分、びんつけ油なんかに
いいにおいをつけていたんですよね。
なんか痒くなってきますわ
そういえば、毎日でも洗える今、
アタシ毎日、ザンバラ髪ですわー。

「鬼太郎ヘア」…あはは、私の勝手命名ですよー。
返信する
バランス (こいけ)
2010-01-31 11:01:27
なるほど。現代は和装も洋装もシンプルですが、それでもロングドレスや変わり結びの振袖の時はアップに結い上げたほうがバランスがいいわけですね。
十二単とは長さでバランスをとったんでしょうか。

そういう意味ではバランス無視の最近の盛り髪は、ロココの貴婦人とか、清の西太后とか、江戸時代の花魁とか、明治・大正・昭和初期の大きな髷とか、いろいろ連想しておもしろいなあと思って見ています。
返信する
Unknown (くろお)
2010-01-31 00:41:02
なるほど…!!
以前は垂髪だったものが、なぜ髪をアップにして結うようになったのだろうと疑問だったのです。とんぼ様のブログは本当にいつも勉強になります~。
私も今卒業式の袴に合わせる髪型に悩んでいるのですが、丸い輪郭は隠したい、けど、レトロな着物に合うしっとりとした髪型にしたい…どうすればいいのー!と悶々としています(^_^;)
普段着の時のようにはいきませんし、かといっててんこ盛りカーリーもちょっと…で悩みます。
返信する
Unknown (陽花)
2010-01-30 19:32:50
昔の髪型見ている分にはいいけれど、
シャンプーもままならない髪型で日々
過ごされた昔の人は、今より美への
探究心が強かったのかしら。

この髪型がゲゲゲの鬼太郎ヘアというんですか。とんぼ様は何でもよくご存じですね。
返信する

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