もう15年ほども前になりますか、友人から娘さんの浴衣を頂きました。
浴衣としてではなく、何かに使って…と。思い切り普通のコットンプリント地。
青地に金魚の柄がかわいかったので、かごつき巾着なんかかわいいかな…なんて思って、
喜んでいただきました。そしてそのとき初めて「もともとの洋服地から作ったミシン仕立ての浴衣」を
じっくり見たわけです。おくみは「つまみおくみ」だし、衿を解いたらちゃんと衿のラインでカットされていました。
さて、いただいた浴衣はとっくにハギレになってしまいましたが、ずいぶん年数も経ってます。
もらった当初、母が「こりゃまぁ…オムツにしたら股ズレするわ」と言いましたっけ。
最近のああいうタイプの浴衣、かわっているのかいないのか、どんなものなのか、ちょっと入手しました。
あくまで「資料」ですが、ゆかたで着なくても、あとあと解いて使いたいと思いまして…。
それがトップ写真のものです。あっぱっぱならかわいいでしょ。
まず「安いもの」をメインにしましたので、色柄よりも価格、で調べました。
実はこの柄の浴衣は3色あって、後々使うにもほんとはこっちがいいなぁと思った地色があったのですが、
目的に反する?ので、とりあえずこの色にしました。まったく同じセットなのにこの色だけ1000円近く安いのは、
たぶん「売れ残りそうだから」ではないかと、勝手に考えました。
お値段2800円でお釣りがきます。そして、選んだときは「価格」ばーっかり気にしていて、
よく見なかったのですが(これでよく主婦やってると思います)、注文してからよくよく見れば…帯とゲタつき。
おくさん!3点で3000円しないのよっ、着物も帯も1000円でおつりくるのよっ、すごいわねぇぇぇぇぇ!!
もちろん5000円前後とか、9000円とか、そういうセットもありますよ。
それでもねぇ…浴衣って反物でも万札出さないと、普通レベルのものは…ですけどねぇ。
ともあれ…3点で2749円セット、検証してみました。
まず先にゲタはこちら…右近ゲタです。裏はゴム貼りです。
いやねぇ…大笑いですが、最近の風潮で「鼻緒は太くて柔らかいほうが痛くない」と、
これも思いっきり太いです。もちろん格安の化繊ですし、ひっくり返して鼻緒のカット面をみれば
中は「スポンジ」です。
そして、これは…履けませんでした。必死で履きこんでもここで限界…。
アンタの足が太いんだといわれても、甲高といわれても、
その太くて高い甲の手前までしかハイラナイし…。必死で鼻緒を伸ばしましたが、のびるわけもなく…。
これ買った人、ほんとに履けたんだろうか、きっと化繊のぎゅうぎゅうで鼻緒ズレできたろなあと。
台については、要するに間伐材などの利用でしょう、一箇所穴を埋めたあとが、塗料の上からでもわかりました。
まぁゲタは元々そういうものもありますから、履けりゃいいとなればこれで十分だと思います。
履いてて割れることはなさそうです。こちら「メイド・イン・インドネシア」。
そしてこちらが帯、いやもうわかっていても興味津々で…。
なんとまぁ大量生産になるとこうなるのだなぁと。まずは「芯」はいってません。
入ってなくともしっかり立つカタさ!見事じゃ…。
もちろんつけ帯ですし、真ん中もちゃんと結んであるはずもなく、
二枚の長方形のものを重ねて真ん中を別布でとめたもの。
縫い方は当然手間のかからないようにの方法ですから、端っこはこんな感じ。
紐も綿テープの一番安いヤツですね。
まぁ価格から行ったら、当然といえば当然です。こちらは「メイド・イン・チャイナ」。
やっと「浴衣本体」です。もちろん全てミシン仕立て、縫い代はロックミシンです。
袖はこんな感じで…
袖口はあまり目立ちませんが…
「振り」の方は、表側(右下部分)のミシンの縫い目が目立ちますね。
まぁ手縫いを着慣れたものの眼で見ると…ですが…。
前身ごろの裏側、おくみ部分。浴衣用の木綿でないことは、染めの具合で一目瞭然です。
おくみはもちろん「つまみおくみ」。
衿は外から見てもわかる「折り込みナシ」の、衿ライン斜めカットです。
掛け衿も、ごまかしでつまみかと思ったら、存外良心的で、ちゃんと本衿に掛け衿がのってました。
それと、一応衿付けは、落としミシンで、衿の表側にミシン目はありませんでした。
そしてフシギなこと…最後に畳みなおしたら…普通は浴衣でも着物でも、衿先がこんな具合に、
ちょっぴりカオを覗かせるのですが…
縫い線どおりにちゃんと畳むと、こんなに衿が引っ込んでしまう…。
実はとても着づらくて、おはしょりすると衿先がはるか上に入ってしまいます。
あまり長く出るのもおかしいですが、2~3センチは出したいんですがねぇ。
とりあえず普通に畳みましたが、こっちをあわせるとあっちが曲がる…
あっちを押さえるとこっちがゆがむ…要するにちゃんと縫い合わせてはいないのですね。
これは「メイド・イン・ミャンマー」…。なんと国際的な三点セットであることか…。
着物を知らない人たちが、マニュアルどおりに「こことここを縫い合わせる」と、流れ作業でやっているのでしょう。
衿部分はどうしてもバイヤスかかりますから、私も縫うときはやたらと待ち針をとめます。
息子の小さいころは、じんべの衿など、小さくて待ち針がジャマなので、わざわざ仕付け糸で仮縫いしました。
ぱっと見た感じはちゃんと縫えていても、きちんと畳んだり着てみたりすると、この「着物のゆがみ」は、
かなり問題になります。そんなところも「まあこの値段だしね」と、思ってしまう…。
こういうもの、私は全否定する気はありません。
ちょっといい浴衣を誂えるとするなら、反物、仕立て代、そしてそれに見合った帯となれば、
化繊というわけには行きません。このお手ごろ価格のゼロをひとつ増やしても、まだ足りないと思います。
それを考えれば、お若い方が、「浴衣を楽しみたい」と思って、ユニクロなどの安くて便利な
ファッショングッズを選ぶ感覚で、これを買うならば、何の不思議もありません。
実際「今年のTシャツ」感覚で買うなら、高いものを買っても、来年着るかどうかもわかりません。
本来浴衣はそういう着方をするものではありませんが、着物離れが激しい今、
浴衣というのはね、着倒したら寝巻きにして、それからオムツになって…なんてことは、
通じるか通じないか以前の問題です。
だから、まぁ安物でもなんでも「浴衣を楽しみたい」というキモチで、少しでも着物や和装に
近づいてくれるなら、それはそれでいいと思うのです。
ただ、いつも言うことですが、今の時代「教える人」がいません。
このお手軽浴衣をホンモノと同じと思って、そのまま一つの知識としてインプットされることには
たいへん抵抗があります。
黒地にバラだの桜だのという、季節感も古典柄の秀逸さもまったく漂わないものを、
浴衣ってこういう派手柄でいいんだ…と思われたくはありません。
何も知識の積み重ねのない世代の人に、目先のかわったものをちらつかせて売るなんて…といったら、
知人に「そうではなくて、売るほうも知らなかったりするのだよ」…なんていわれました。
そうかもしれませんね。いずれにしても、イロイロなことが変わっていくのは、とめることができません。
それでも、モノはなんでも「ピンキリなのだ」ということを、もう少し知ってもらいたいと思うわけです。
よく知った上で、こういうものを使うのは、私はひとつの方法だと思うわけです。
私の子供のころ、浴衣は肩揚げをして何年も着ましたが、育ち盛りのころは、すぐに着られなくなります。
肩揚げをとればなんとか着られる…と思っても、母は「子供は肩揚げがあるからかわいいねんで。
あんまりボロにならんうちに、着てもらおぅな」と、身近な人やイナカに譲っていました。
そうして着つくされたものは、やがて寝巻きになり、半天の裏に使われたり、オムツになったり、最後は雑巾に…。
そんな「繰り回し」が、今通用しないのですから、それはそれなりに…と、あきらめねばならないのでしょう。
ただ、いくら安くても、いらなくなったものがどうなるのか…それを考えると、またため息が出るのですが。
おしまいに、もうひとつ…こちらアマゾンさんの画像です。
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それぞれクリックして見てください。
私の息子だったら…泣き崩れますわ。お願いだから「基本を抑えて、アレンジしてください」。
セットもの・格安浴衣の実物、納得しました。3000円でお釣りが来るものは、それなりです。
まぁそんなことはわかっていたのですが、価値観というものをしっかり考えて「買い分け」「使い分ける」、
そういうことを、教えられるのも今のうち…と、それもまた実感しました。
この浴衣さん、浴衣としてきてもらえなくて悲しいかもですが、ちゃんと使うことで、許していただきましょう。
あら…帯どうするべ…ゲタは…鼻緒のすげ替えですねぇ、また用事が増えましたわ。
鼻緒、買い置き使っちゃったなぁ。
最後の男物浴衣(?)が、あまりにも衝撃的で・・・
これはひどすぎますねぇ。
小さい写真で見ていたら
着方が、バカボンみたいなだけかと思っていたのですが
クリックしてみて、PCの前で崩れ落ちてしまいました。
今は、こんなことになってるのかと、
そこまでして浴衣が着たいのかと・・・
浴衣を着ることは、
夏のイベントでの安っぽいコスプレになってしまってるのでしょうか。
も~びっくりしすぎて、夢に出てきそうです(笑)
下駄をつけるぐらいだったら、その分で普通に
着られる浴衣だけの方が親切ですよね。
男物浴衣の画像、失礼ながらこれで売れる?
のかしらと思ってしまいました。
できればこういう姿は見たくないですね。
もう少し 着方をどうにかすれば どうにかなる?
と思ったのですが
これでは どうにもならなそうですね。
体育祭や学園祭の催事用の着物もどき???
記事拝読して思い出しました。手法こそ中形や今日では工芸品扱いに昇格している注染ですが。1930年代の浴衣ってどんなのかな、というお話です。
以下、映画「マイマイ新子と千年の魔法」考証協力の印度総督府「兵器生活 http://www2.ttcn.ne.jp/~heikiseikatsu/index.html 」さんから。一部わたしの感想ですが殆ど引用。
http://www2.ttcn.ne.jp/~heikiseikatsu/seikatsu/YUKATA.htm
「馬鹿馬鹿しさでは重巡クラスの商品」戦争柄浴衣
「国防意匠登録 つはもの浴衣」
次はネタぎっしり
http://www2.ttcn.ne.jp/~heikiseikatsu/seikatsu/pro_yukata.htm
夏が来た
アラモード 労農浴衣を 着て歩け 一反只の二円
(一反二円てのは当時の浴衣としては微妙に高いですが、これはただの推測ですが、職人に正当な賃金を払えば中間マージン削って安くしてもこのくらいに、ということなのかなあ…←完全に無根拠で言ってます)(ほばーりんぐととさんの紹介された海外製浴衣はこの辺が非常に心配です。ひとさまの労働力をどういう使い方しているのか)
1930年代はじめ 5月1日付「朝日新聞」より
「夏の大衆的流行品」
「しかし余りあせっては却って前年の残品を買はされる事もある」
「従来の猟奇的な尖端的な、奇抜な柄が行く所までゆき着いて、早あかれて来た」
「昨年まで流行の中心であった六大学浴衣は下火になって」
女子中高校生を商売のネタにつかってゆく態度も今と変わらないつうか、今よりえげつないですな。つか「六大学浴衣」て何事。
あと高島屋の見事に意味不明な以下の宣伝
「『世界的なゆかたの流行』 青空がいよいよ夏の輝かしい色を加えて行くにつれて、新聞や雑誌の写真面が、メリー・ブライアン、クララ・ボウ、ダグラス・フェアバンクス等のゆかた姿で賑わされて参りました。日本趣味の豊かに横溢したスッキリした夏のキモノとしてゆかた姿が歓迎せられて、今や、ホリーウッドのスタヂオや、或いはパリーのシャンゼリゼーには、日本のゆかたが華やかに進出して参りました。」
いまの広告も大概でありますが、当時の凄まじさには適いませんね。エイプリルフールの与太記事でなくば許されない水準です。
因みに
「従来ゆかたは夕方着るものとされて居りましたが近来昼着にもお召しになるようになって」
これ1930年ちょいの記事です。
そして最後
エロ浴衣地押収さる 府県へも手配
「昨今のエログロ時代の浴衣で一儲けしようと男女の裸体模様、ダンス模様、舟遊び模様等々と七種のエログロを染め抜いた中形浴衣他千反を作り各府県へ売りだしたことを警視庁風紀係で発見十八日発送残りの三百反を押収した上各府県警察部へ押収方を依頼したが警視庁ではこの種の床他事は(二文字読めず)取締る事になった」
…とゆ感じで、風俗の先端を斜め上にカッ飛ぶのが浴衣というものらしいですね。しかしまあ、このひとたちが江戸時代の襦袢柄や羽織の裏なぞ見たら卒倒しかねんな。
ダンスや舟遊び図にまでけちをつけてまわり人様の丹精こめた労作を手配までして押収とは…。実にいろんなものが伺え興味深いです。
メンズナックル(←スナップ写真もすごいが写真につくコピーのやけくそ具合で伝説化している気の狂ったファッション誌)系つうか…
つまり、最初からそういう面白ファッションを好む層がターゲットなのではと思います。浴衣も市民権を得たものですなあ(微妙に目をそらしつつ)。
ロックテイストとかデカダンスとか現代の粋とかでしたら、ルミロック(漫画やアニメモチーフの浴衣もかっこよく仕上がってるあたりが本気度高いですね)路線があるでしょうが、ご紹介のもの凄い「浴衣」のターゲット層はそこまで和装に興味はないものと思われ、こんなものでありましょう。
…でもなあ、現代人はそんなに頻繁に浴衣着ないから、最初ちゃんとしたの買えば毎年着ても20年くらい余裕で持つのになあ…。結果的にはそのほうがよほど買い得なんですけど。これって洋服も同じですね。
衽はつまみじゃありませんし、袖口や衿下~裾は手縫いでまつって縫い目が目立たないようにはしておりますが。
私の場合、完全に洋服のチュニックやワンピースを自分で縫って自分で着る感覚です。普段着としては安く出来て洗濯がきくのが好都合なので。
木綿でも反物からなら、普段着の単衣くらいはきちんと和裁で縫いたいと、今和裁を習っているところです。
自作のなんちゃってきものもユニクロ浴衣も、竺仙の綿コーマや絞りの浴衣も着ましたが、やはりユニクロ浴衣が1番着にくく、なかなか思うような着姿になりませんでした。また洋服地は伝統的な浴衣地より「暑い」と感じたことも実感です。
後、着付けをする人から聞いたのが「あまりにひどい造り帯(縫製がというより構造が?)が売られている」ということ。
きものも帯もそれらしい形をしてはいるものの、プロでもきれいに着付けるのが難しい、まして着付けを知らない人が自分できれいに着るのはほとんど無理かと思うような品物があるそうなのですね。
もちろん買いやすい値段は重要です。私だって、「この値段なら買っちゃおうかな」とユニクロ浴衣をつい買ってしまったのですから。
でも、正直絞りや竺仙浴衣のように「なんて気持ちいいの!これは何度でも着たい」とは思いませんでした(^_^;)(ユニクロ浴衣はその後ほとんど着られず、最近洋服にリフォームしました)
買いやすい値段の浴衣でひと夏楽しむと言っても、暑くて着にくい浴衣できものそのものに懲りてしまわなければいいなぁと、おばちゃんは心配してしまいます。
7月の地元の花火大会で、帯がウエスト、つるしで身幅が大きすぎるのであろう帯下が、ギャザーがよってスカート状に広がってしまっている男性を見ました。他にも残念な浴衣男子が…
そういう姿や掲載されたような着姿をカッコいいと思うのか?不思議でなりません。男女問わず、お手本にしたいような人が減っているのは事実ですが。
ほんっとに、脱力しますよね。
崩れ落ちるのもわかります。
なんでもファッション感覚、という言葉で
かたづけられてしまうのかもですが、
コレがかっこよく見える感覚がねぇ…。
そうなんです。
何も持っていない人には、一度で揃うという便利なものなのでしょうが、
これだけいいかげんなものばっかりだと、ほんとに「良心」を疑います。
浴衣を着るってこんなもんなんだなんて、思われたくないですね。
ほんとにどうにもなりません。
私にはサイズ的に大きめなのに、前がちゃんと着られないのです。
ほんとにイベント衣装ですね。